ローマ内戦 (紀元前49年-紀元前45年)

ローマ内戦：カエサルの台頭と共和政の終焉

ローマ内戦は、紀元前49年から紀元前45年にかけて、共和政ローマを揺るがした激しい内戦です。この戦いは、ガイウス・ユリウス・カエサルとその支持者たち（カエサル派）と、グナエウス・ポンペイウスを中心とする元老院派との間で繰り広げられました。最終的にカエサル派が勝利し、カエサルによる独裁体制が確立され、共和政ローマの終焉へとつながる大きな転換点となりました。

内戦の背景

共和政ローマは、グラックス兄弟の改革以降、「内乱の一世紀」と呼ばれる不安定な時代を迎えていました。ガイウス・マリウスやルキウス・コルネリウス・スッラといった有力者が台頭し、ポプラレス（平民派）とオプティマテス（閥族派、元老院派）の対立が激化しました。紀元前59年には、ポンペイウス、カエサル、マルクス・リキニウス・クラッススによる第一回三頭政治が成立し、権力が集中しました。カエサルはガリア総督としてガリア戦争で名を上げましたが、クラッススの戦死やカエサルの娘ユリアの死により、三頭政治は崩壊。元老院派はカエサルの権力拡大を警戒し、ポンペイウスと連携を深めました。

元老院はカエサルに軍隊の解散を要求しましたが、カエサルはこれを拒否。紀元前49年1月、元老院はカエサルに対して「元老院最終勧告」を発令し、カエサルはついにルビコン川を渡り、ローマへの進軍を開始しました。

内戦の経過

ルビコン川の渡河とポンペイウスの逃亡

紀元前49年1月10日、カエサルは第10軍団を率いてルビコン川を渡り、ローマに進軍しました。この時、カエサルは「賽は投げられた（alea iacta est）」と言ったと伝えられています。ポンペイウスはローマを放棄し、自身の勢力基盤である東方属州へ逃れました。

ヒスパニアと北アフリカでの戦い

カエサルはポンペイウスを追撃する一方で、元老院派の拠点を制圧するため、ヒスパニアへ進軍し、イレルダの戦いで勝利しました。しかし、北アフリカでは、カエサル軍が元老院派とヌミディア王ユバ1世の連合軍に敗北し、大きな損害を受けました。

ファルサルスの戦いとポンペイウスの死

紀元前48年8月、カエサル軍とポンペイウス軍はギリシア北部のファルサルスで激突しました。数に勝るポンペイウス軍でしたが、カエサルの卓越した戦略の前に敗北。ポンペイウスはエジプトへ逃亡しましたが、プトレマイオス13世の側近によって暗殺されました。

エジプトでの滞在とポントス遠征

カエサルはポンペイウスを追ってアレクサンドリアへ向かいましたが、既にポンペイウスは殺害されていました。カエサルはエジプトでクレオパトラ7世を支援し、プトレマイオス朝の実権を握らせました。その後、ポントス王ファルナケス2世がローマ領へ侵攻したため、カエサルはポントスへ遠征し、ゼラの戦いで勝利しました。

北アフリカとヒスパニアでの残党狩り

紀元前47年、カエサルは北アフリカへ向かい、タプススの戦いで元老院派の残党を撃破しました。カトはウティカで自決し、ユバ1世も自殺しました。ポンペイウスの息子たちはヒスパニアへ逃れましたが、カエサルは紀元前45年のムンダの戦いで彼らを破り、内戦は終結しました。

内戦の終結とカエサルの暗殺

ムンダの戦いの勝利により、カエサルはローマ内戦を終結させ、ローマの支配者となりました。しかし、紀元前44年3月15日、カエサルは元老院議員によって暗殺され、再びローマは混乱の時代へと突入しました。

ローマ内戦は、共和政ローマの終焉と帝政ローマの幕開けを告げる、歴史的な出来事でした。カエサルの卓越した軍事力と政治力、そしてポンペイウスをはじめとする元老院派との対立は、ローマの歴史を大きく変えることになったのです。

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