ローマ帝国支配下のギリシャ

ローマ帝国支配下のギリシャ

ローマ帝国による支配下のギリシャは、古代ローマ帝国に征服された後のギリシャの歴史を指します。この時代は、ギリシャがローマ帝国の属州として組み込まれ、政治的、文化的に大きな変化を経験しました。

アカエア属州の成立

紀元前31年、アクティウムの海戦でアントニウスを破り、帝政を開始したオクタウィアヌス（後のアウグストゥス）は、ギリシャ本土をアカエア属州として再編しました。紀元前146年にはクレタ島もキレナイカ属州の一部となり、ローマ帝国の支配下に組み込まれました。これにより、かつて独立した都市国家（ポリス）であった地域は、属州内の地方都市として存続することになりました。各ポリスは自治権を失いましたが、ローマ帝国のもとで、一定の安定と秩序が保たれることになりました。

ローマ帝国による復興

内戦によって疲弊したギリシャの復興のため、初代皇帝アウグストゥスは様々な政策を打ち出しました。穀物の分配や、各都市に貨幣の鋳造特権を与えるなど、経済の再建を促しました。また、新しい都市を建設し、ローマ市民や周辺の住民を移住させることで、都市の活性化を図りました。この政策によって、ギリシャ人の中にもローマ市民権を得る者が現れ、社会的な地位を向上させる機会を得ました。

ローマ皇帝の中には、ギリシャ文化を愛好する者も多くいました。特にネロ帝やハドリアヌス帝は、アテナイの都市整備を積極的に支援し、建造物や神殿の修復に力を注ぎました。ハドリアヌス帝は、ギリシャを何度も訪れており、彼のギリシャへの愛着は広く知られています。彼らの支援によって、ギリシャの諸都市は一種の文化観光都市として栄え、ローマ帝国の貴族や知識人が多く訪れる場所となりました。

また、この時代にはギリシャ文化がローマに大きな影響を与えました。プルタルコスは『対比列伝』を著し、ストラボンは『地理誌』を完成させるなど、多くのギリシャ人学者が活躍しました。ギリシャ文化は、ローマの芸術、文学、哲学に深く浸透し、ローマ文化の発展に重要な役割を果たしました。詩人ホラティウスの「征服されたギリシャ人は猛きローマを征服した」という言葉は、文化的な側面でギリシャがローマに与えた影響の大きさを象徴しています。

ゲルマン人による略奪

しかし、3世紀に入ると、ローマ帝国は軍人皇帝時代と呼ばれる内乱期に突入し、その支配力は徐々に弱体化しました。この状況に乗じて、ギリシャは異民族による略奪の標的となりました。253年にはテッサロニキがゴート族によって襲撃され、その後、アルゴスやアテナイなどの主要都市がヘルール族によって次々と襲撃され、甚大な被害を受けました。この略奪によって、ギリシャの都市は大きく荒廃し、ローマ帝国支配下のギリシャは衰退の道をたどることになります。

まとめ

ローマ帝国支配下のギリシャは、属州としての組み込みから、ローマの庇護下での復興、文化的な交流、そして異民族による略奪という、複雑な歴史を経験しました。この時代は、ギリシャ文化がローマ帝国に大きな影響を与えた一方で、ローマ帝国の興亡がギリシャの運命を大きく左右した時代でもありました。

参考文献

桜井万里子 編 『ギリシア史 (新版 世界各国史) 』 山川出版社、2005年
桑山由文 著「ローマ帝政期のギリシア」、金澤周作 監修、藤井崇；青谷秀紀；古谷大輔；坂本優一郎；小野沢透 編『論点・西洋史学』ミネルヴァ書房、2020年。
南川高志 著「ローマ帝国とギリシア文化」、藤縄謙三 編『ギリシア文化の遺産』南窓社、1993年。

関連項目

東ローマ帝国支配下のギリシャ
古代におけるギリシアとローマの関係
ローマ哲学
* 第二次ソフィスト

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