ワイオミング級戦艦

ワイオミング級戦艦：アメリカ海軍最後の弩級戦艦

ワイオミング級戦艦は、アメリカ海軍が3番目に建造した弩級戦艦の艦級であり、2隻が建造されました。本級はアメリカ海軍で最後に就役した弩級戦艦であり、1910年代から1940年代にかけて長期間にわたり運用されました。前級であるフロリダ級戦艦の拡大・改良型として1909年の海軍整備計画で建造が決定しました。

概要

ワイオミング級の設計は、ニューポート会議での要求に基づき、艦船設計局の隆盛を反映したものとなりました。当初は35.6cm連装砲塔4基を搭載する超弩級戦艦として計画されましたが、主砲の開発状況やドックのサイズの関係から、フロリダ級と同じ30.5cm砲を搭載する弩級戦艦となりました。しかし、砲身長はフロリダ級の45口径から50口径に延長され、主砲塔数も1基増やされました。これにより、30.5cm連装砲6基12門を装備する強力な戦艦として完成しました。

船体はフロリダ級よりも大型化し、サイズは2割増しとなりました。主砲塔は全て中心線上に配置され、2基ずつ背負い式で前部・中央・後部の3箇所に配置するという、全長を抑えつつ効率的な射撃を可能にする設計が採用されました。この設計は、第一次世界大戦までのアメリカ戦艦の特徴である、中心線配置の主砲塔、低い乾舷、長い航続距離を全て備えていました。

艦形

就役後の第一次世界大戦後、ワイオミング級は居住空間の拡大のために平甲板型船体に改められました。しかし、艦首の乾舷不足により外洋航行時の凌波性が悪化し、居住性も武装強化のために再び悪化しました。艦首には浮力確保用の膨らみが設けられ、艦首甲板上にMark 7 30.5cm（50口径）連装砲塔が2基背負い式で配置されました。艦上構造物には司令塔と籠状の前部マストが設置され、その下部に航海艦橋、頂上部に露天の見張り所が設けられました。2本の煙突の後方には、艦載艇置き場と探照灯台があり、後部甲板には背負い式で4基の主砲塔が配置されていました。

副砲として12.7cm（51口径）速射砲が、上部構造物や舷側部に計21基搭載されましたが、波浪の影響で艦尾側の3基と艦首側の2基は後に撤去されました。また、1916年には航空爆撃の危険性から、Mk 10 7.62cm（50口径）高角砲が4基、後に8基に増強されました。

大戦後の海軍休日

1920年代後半には、フィラデルフィア海軍造船所にて近代化改装が行われました。前部マストの基部にあった航海艦橋は密閉型になり、戦闘艦橋が新設されました。また、新型の射撃指揮装置や測距儀が設置されました。副砲は、波浪の影響を受けていた舷側のケースメイトの一部が閉鎖され、最上甲板に移設されました。

重油専焼缶への換装によりボイラー数が減少し、煙突は1本になりました。後部マストは撤去され、水上機運用スペースとなり、カタパルトが設置されました。防御面では、魚雷防御用のバルジが追加され、甲板や主砲塔の装甲も強化されました。

軍縮条約から第二次世界大戦

ロンドン軍縮会議の結果、1931年にワイオミングは練習艦へと改装されました。主砲門数は6門に減じられ、防御装甲は撤去されました。一部のボイラーも撤去され、速力は18ノットに制限されました。

一方、アーカンソーは1942年に第二次近代化改装を受け、一線級の戦闘能力を回復しました。艦橋構造物が大型化し、三脚型の前部マストに換装されました。対艦・対空レーダーも搭載され、バルジも大型化されました。対空火器が増強され、7.62cm高角砲が10基、2.8cm機関砲が8基、エリコン2cm機関砲が26基搭載されました。後に2.8cm機関砲は撤去され、ボフォース4cm機関砲が搭載されました。

1944年にワイオミングは、練習艦としての役割に専念するため、前部マストと主砲射撃装置を撤去しました。代わりに、対空火器を多数搭載し、対空訓練用の艦艇として運用されました。

兵装

主砲

ワイオミング級の主砲は、新開発のMark 7 1912年型 30.5cm（50口径）砲です。連装砲塔に納められ、重量394.6kgの砲弾を最大仰角15度で21,850mまで届かせることができました。射撃指揮装置の未熟さから、当初は散布界が広がるなどの問題がありましたが、後に改良が加えられました。

副砲、その他武装

副砲は、前級と同じくMarks 7 1910年型 12.7cm（51口径）速射砲を搭載しました。この砲は、最大射程14,490mを誇り、14基が搭載されました。対艦用として、53.3cm魚雷発射管も2門装備していました。就役後には、対空火器として7.62cm（50口径）高角砲が追加され、後に増強されました。

機関

機関構成は、バブコック・アンド・ウィルコックス社製の石炭・重油混焼水管缶12基と、パーソンズ社製の高速タービン2基、低速タービン2基で構成され、28,000馬力を発揮しました。最大速力は21.2ノットでした。近代化改装で重油専焼缶に換装され、航続距離が向上しました。

防御

ワイオミング級の防御は、広範囲を防御する全体防御形式を採用しました。舷側装甲帯は、水線部で最厚292mm、甲板は最厚部で120mmと、防御力は決して高くはありませんでした。

艦歴

ワイオミング級は、アーカンソーが先に就役し、両艦とも第一次世界大戦では、北海での船団護衛任務に従事しました。戦間期には近代化改装が行われ、第二次世界大戦では、ワイオミングは練習艦として、アーカンソーは実戦で活躍しました。

ワイオミングは1947年に退役しスクラップとなりました。一方、アーカンソーは1946年の核実験で沈没しました。

同型艦

ワイオミング (BB-32/AG-17)
1912年9月25日就役、1947年8月1日退役
アーカンソー (BB-33)
1912年9月17日就役、1946年7月29日退役

参考図書

「世界の艦船 増刊第22集 近代戦艦史」（海人社）
「世界の艦船 増刊第83集 近代戦艦史」（海人社）
「世界の艦船 増刊第28集 アメリカ戦艦史」（海人社）
「Conway All The World's Fightingships 1906–1921」（Conway）
「Conway All The World's Fightingships 1922-1946」（Conway）
「Jane's Fighting Ships Of World War I」（Jane）

外部リンク

Wyoming Class (BB-32 and BB-33) - ウェイバックマシン
'Wyoming' BB 32 (1910)
'Arkanzas' BB 33 (1910)
Naval Historical Center - ウェイバックマシン
hazegray.org
Globalsecurity.org

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