ヴァルダイ丘陵

ヴァルダイ丘陵は、ヨーロッパ・ロシア北西部に広がる、南北約370km、東西約89kmに及ぶ丘陵地帯です。モスクワとサンクトペテルブルクの間を南北に走り、ノヴゴロド州、トヴェリ州、プスコフ州、スモレンスク州にまたがっています。

地形と地質

ヴァルダイ丘陵は、中央ロシア高地の北端に位置し、なだらかな地形と森林に覆われているのが特徴です。地質的には砂岩、石灰岩、粘土が多く、最終氷期にこの地域を覆っていた氷河の堆積物であるターミナルモレーン（端堆石）やデトリタスで地表が覆われています。丘陵の最高地点は、ヴイシニー・ヴォロチョーク付近で海抜346.9mですが、中部では標高90m程度にとどまります。

水系

この丘陵地帯は、ヴォルガ川、ダウガヴァ川（西ドヴィナ川）、ロヴァチ川、ムスタ川、ドニエプル川などの多くの河川の源流となっています。また、セリゲル湖、ヴォルゴ湖、ペノ湖、ブロスノ湖、ヴァルダイ湖など、大小様々な湖沼が点在しており、豊かな水資源に恵まれています。

生態系

ヴァルダイ丘陵の生態系は、主にタイガ（亜寒帯の針葉樹林）で構成され、亜寒帯性の植生を含む貧栄養型のミズゴケのボグ（湿原）も分布しています。この地域には、ヨーロッパビーバー、タイリクオオカミ、ヒグマなどの哺乳類が生息しています。生物多様性の保全のため、南西部のトヴェリ州内の一部は「中央森林生物圏保護区」、ノヴゴロド州内の一部は「ヴォルダイスキー生物圏保護区」としてユネスコの生物圏保護区に指定されています。

歴史的重要性

ヴァルダイ丘陵は、バルト海、黒海、カスピ海など、様々な方向に流れる河川の水源であり、古くからこれらの河川を利用した交通の要衝でした。特に、ヴイシニー・ヴォロチョークの町は、バルト海に注ぐツナ川とヴォルガ川支流のトヴェルツァ川の間に位置しており、かつてはスカンジナビアやバルト海とヴォルガ流域、ビザンチン帝国を結ぶ重要な交易路の一部でした。交易者たちは、舟や貨物を二つの川の間にある丘の道（連水陸路）を使って運びました。

現在の様子

現在、ノヴゴロド州は湖や歴史的な街が多く、釣りなどを楽しめるリゾート地として人気があります。セリゲル湖畔のオスタシコフや、ノヴゴロド州南部のヴァルダイの町は、修道院などの歴史的な建造物がある街として知られています。

交通

モスクワとサンクトペテルブルクを結ぶモスクワ・サンクトペテルブルク鉄道とロシア連邦道路M10は、ヴァルダイ丘陵の北部を横断する必要があり、トヴェリ州ボロゴエとノヴゴロド州ヴァルダイを通っています。

その他

[小惑星] Valdajは、第二次世界大戦でこの地で戦死した父親に捧げる意味で、発見者がこの丘陵に因んで命名しました。

関連項目

丘陵
ヴァルダイ・クラブ

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