ヴィック＝シュル＝セール

はじめに

フランス中南部、オーヴェルニュ＝ローヌ＝アルプ地域圏に属するカンタル県に、ヴィック＝シュル＝セールという名の美しいコミューンがあります。オック語では「Vic en Carladés」と呼ばれ、緑豊かなセール川の谷間に位置しています。上流のポルミナックや下流のティエザックと共に、自然観光地としての魅力が認められ、「スタション・ヴェルト」の認証を受けています。

地理

ヴィック＝シュル＝セールの総面積は2937ヘクタールにおよび、そのうち585ヘクタールが豊かな森林に覆われています。2007年のデータによれば、町には1413軒の住宅があり、その構成は定住用の住居が912軒、休暇用の別荘が370軒、そして空き家が132軒でした。また、訪問者のために240室のホテルの客室が提供されていました。

かつて小さな温泉地として知られたこの町は、広大なヴォルカン・ドーヴェルニュ地域圏自然公園への玄関口にあたります。町があるのはセール川谷の底で、過去の氷河による浸食作用が、独特のモレーン地形とパ・ド・セール滝を生み出しました。ヴィックはヴェルジックの町境に位置するコワイヤン高原に隣接しています。また、プロンブ・デュ・カンタル峰へと続く古代ローマ街道「ヴィア・ケルティカ」が、パレロールの南側を通っていました。

町の旧市街は、谷の東側、標高約680メートルの場所に広がっています。建物は地元の溶岩石である安山岩で築かれ、屋根はスレート石で覆われています。

交通

ヴィック＝シュル＝セールは交通の要衝でもあります。カンタル県で特に交通量の多い道路の一つである国道122号線が、リオラン・トンネルとオーリヤックを結び、ドクトゥール・ジャン・ランベール通りとして町を通過しています。この道路の交通量は一日約6000台に上ります。また、県道54号線はキュル・ブルス高原を経てミュール・ド・バルズやカルラへと続いています。

鉄道に関しては、ヴィック駅があり、TERオーヴェルニュの路線が停車します。この路線はオーリヤックを経由してクレルモン＝フェランやトゥールーズへと繋がっており、「トゥール・デュ・カンタル」という旅行ツアーの一部にもなっています。

歴史

フランス革命が起こるまで、この町はヴィカン＝カルラデスの名で知られていました。19世紀の観光ガイドにはヴィック＝レ＝バンの名称も登場します。「ヴィック」という名は、かつての行政裁判所であるヴィゲリーが置かれた城の麓の集落、ヴィクス（Vicus）に由来します。ヴィック＝シュル＝セールという現在の名称が町に与えられたのは、フランス革命時代の国民公会の頃、自らの希望というよりも、カルラデス地方がオーリヤックからの優位性を排除した流れの中で決まったとされています。

中世、ヴィックで少年期を過ごした二人の人物が著名なトルバドゥールとなりました。オーリヤック修道院で学び、文学競技会で勝利したピエール・ド・コルと、父親が領主だった町にちなむピエール・ド・ヴィックです。

ヴィゲリーはセール領主ギヨームに属し、その拠点は1279年にはヴィック城に移されました。1266年には、カルラ子爵の認定が、地元の領主たちによって「ヴィック城の前に」「教会の中ではなく墓地で」署名されています。ヴィックの教会は、オーリヤック修道院が管轄する小修道院でした。

町はその長い歴史の中で幾度も戦禍に見舞われ、略奪や破壊を経験しました。少なくとも3回の大規模な破壊がありました。最初はその建築要素の一部が今も残る12世紀の教会で、1265年にアプションのコントゥールが率いるル・ファルグーの山の民によって破壊されました。2度目は1379年、イングランド軍のエドワード黒太子がカルラを制圧した際に、古い城を破壊・放棄し、町を略奪・放火しました。

14世紀には、カルラ子爵領には138世帯が暮らしていました。ヴィックからの十分の一税収入は相当なもので、1329年にボワセに貧者のクラリス会が設立された際には、領主イザベル・ド・カルラが多量の穀物を寄進しています。

1441年、アルマニャック伯ベルナール7世はカルラ子爵領の司法制度を改編しました。1570年には条約により総督が統治するようになり、彼は聖体の祝日の行列で名誉ある位置を占めました。同じ年、ヴィックにカルラデス地方の裁判所が設置されます。丘に面した旧道沿いには絞首台が建てられ、その場所は「ル・ロシェ・デ・パンデュ（吊るされる岩）」と呼ばれました。セール川谷を見下ろす眺めの良いこの場所は、現在も関心を集めています。

1567年以降、カルラデス地方はラングドックから侵入したカルヴァン派の集団による暴力と略奪に苦しみました。メルル隊長に率いられた彼らは、ミュール・ド・バルズを攻略して拠点とする前の1575年に、ヴィックを3度も襲撃し放火しました。裁判官たちは1583年までオーリヤックに避難していました。

1603年にカルラ城が取り壊されると、ヴィックはカルラ子爵領の唯一の中心地となります。1643年、ルイ13世はカルラ子爵領を、フランスへの協力を通じて領地を失ったモナコ公オノレ2世・グリマルディに与えました。裁判所の公式な場所はヴィックの「メゾン・デ・プランス・ド・モナコ邸」にあるとされましたが、実際の権限は王室の代官区に残されました。

19世紀に入ると、ハイドロテラピー（水治療法）が盛んになり、ヴィックの冷たい水（約12℃）、鉄分を多く含む性質、柔らかく重炭酸ナトリウムを含む水源が多くのガイドブックで称賛されました。パリ・オルレアン鉄道がここに路線を敷設し、宣伝のために二つの大規模なホテルを建設しました。しかし第一次世界大戦後、水治療法に対する療法としての評価が全体的に低下し、これらのホテルも閉鎖されていきました。

第二次世界大戦中の1941年には、児童救済機関とキリスト教友好協会が、ヴィックのトゥーラン・クリュブ会館を拠点として活動を開始しました。ここには約80人のユダヤ人の子供たちが集められ、ジャクリーヌ・ヴァンサン夫人が正式な責任者として彼らの世話をしました。1944年3月1日、ゲシュタポはオーリヤックで144人のユダヤ人を一斉検挙しましたが、ヴィックでは逮捕者が出ませんでした。皮肉なことに、この町には民兵の県本部が置かれていたにも関わらずです。

言語と文化

カンタル山塊の南麓に位置するヴィック・シュル・セール周辺で話されるカルラデシアン方言は、オック語ラングドック方言の北部地域に属しますが、オーヴェルニャ方言ともラングドック方言とも異なる独自の特色を持っています。歴史的に、カルラデス地方はカタルーニャとの密接な関係を保ってきました。9世紀にはバルセロナ伯ボレイが、後にローマ教皇となるオーリヤックのジェルベールと共にオーリヤックを訪れています。ヴィックを含むこの地方は、バルセロナ伯でありアラゴン王でもあった支配者の宗主権下にありました。こうした背景から、一部ではカルラデシアン方言の話し言葉にカタルーニャ語の影響が見られると考えられています。

フランス語がこの地に導入されたのは比較的遅くありません。実際、カルラデス地方がフランス王領となったのは、王母ルイーズ・ド・サヴォワの死去に伴う1532年のことでした。これにより、法的な判断は直接パリ高等法院の管轄となりました。このため、町にはオーリヤックの神学校やトゥールーズ大学、パリ大学で高等教育を受けた多くの聖職者が居住していました。その中からは、アカデミー会員となったルイ・ド・ボワシーや、文学誌メルキュール・ド・フランスの所有者であった哲学者ジャン・サファリのような著名な人物が輩出されています。

19世紀には、南フランスの文化復興運動であるフェリブリージュの影響を受けて、オック語のルネサンスが見られました。

音楽の分野では、ヴィックを訪れたマルグリット・ド・ヴァロワが、ブレーという活気あるペアダンスを発見し、パリの宮廷に広めたという逸話があります。また、音楽家のジョゼフ・カントルーブは、彼の有名な著作「オーヴェルニュの歌」の中で、バイレオをはじめとするこの地方の歌を多数採集しました。彼のオーケストラ編曲は、オーヴェルニュの色彩豊かな風景や雰囲気を反映していると評されています。

経済

ヴィック＝シュル＝セールの主要な産業は観光業です。「スタション・ヴェルト」や「ヴィラージュ・ド・ネージュ（雪の村）」として認定されており、夏は快適な気候が、冬は近隣のリオラン・スキーリゾートへのアクセスの良さが観光客を惹きつけています。

町には工業区域も設けられており、二つの企業が操業しています。そのうちの一社であるピラン社は、キッチンやバスルーム向けの布製品を製造しており、185人の従業員を雇用しています。

姉妹都市

ヴィック＝シュル＝セールは、ドイツのアモールバッハと姉妹都市の関係を結んでいます。

（参考文献: 1999年までのEHESS、2004年以降のINSEEの人口統計データ等）

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