七国山

七国山

東京都町田市のほぼ中央に位置する七国山は、標高128.5メートルを測るなだらかな山です。多摩丘陵の南西縁に広がるこの地域は、起伏に富んだ地形が特徴で、特に北、東、南の三方は深い谷戸（やと）と呼ばれる谷になっています。東側の谷には広大な薬師池公園があり、南側の谷は山崎町、野津田町、本町田の境界をなし、恩田川の上流端にあたる今井川の源流域となっています。この辺りは、かつて町田町、忠生村、鶴川村の村境であった歴史も持ちます。

名称の由来

七国山の名前は、古くから頂上付近に立てば、相模、甲斐、伊豆、駿河、信濃、上野、下野という七つの国が見えたという言い伝えに由来するとされています。この眺望が得られたことから、その名が付けられたと考えられています。

地理と里山の景観

山の頂上付近は、雑木林と畑が織りなす昔ながらの里山の風景が広がっています。しかし、主に東側や南側の斜面では、頂上近くまで住宅地が広がっており、開発と自然が隣り合っています。西側の斜面には、山の中腹にある山崎公園まで雑木林が続き、また近くには「町田ダリア園」が隣接しています。北側には「七国山緑地」や、シイタケ栽培などを行う「こころみ農園」があり、さらに北東方面には自由民権の森公園（町田ぼたん園）など、他の里山区域へと繋がっています。

豊かな植生

七国山の植生は多様です。山頂付近にはシラカシの林、ハチクとタラノキの林が見られ、植林されたスギも一部に生育しています。その周辺の標高が高い場所では、コナラ、クヌギ、エゴノキが多くを占めています。一方、低い場所では、ハリギリ、ヤマツツジ、ガマズミ、ヒサカキ、シラカシなどが自生しており、季節ごとに様々な表情を見せます。

自然環境の保全

七国山とその周辺の豊かな自然環境は、手厚く保護されています。山崎町と野津田町にまたがる区域は、東京都によって「七国山緑地保全地域」に指定されています。さらにその一帯は、東京都の鳥獣保護区にも指定されており、多くの野鳥や小動物が生息しています。また、七国山の周辺と薬師池公園の西側の緑地は、「七国山風致地区」に指定されており、良好な景観の維持が図られています。

鎌倉街道上道の面影

七国山には、かつて鎌倉と上州方面を結んでいた鎌倉街道上道の古道の一部が現在も残されています。この道は、鎌倉時代頃に利用されていたとされており、当時の面影を今に伝えています。街道沿いには、その当時掘られたとされる「鎌倉井戸」と呼ばれる古井戸が現存し、また「七国山鎌倉街道の碑」が建立され、歴史を偲ばせます。この古道は、浅い堀割状になっており、舗装されていない昔ながらの道が、雑木林の中を南北に続いています。

周辺施設

七国山周辺には、薬師池公園や福王寺薬師堂をはじめ、町田リス園、町田ダリア園、町田えびね苑、自由民権の森公園など、様々な見どころや施設が点在しています。また、藤の台団地、町田山崎団地、町田木曽住宅といった住宅地とも近接しています。

注意事項

七国山という漢字表記から、スタジオジブリ制作のアニメーション映画『となりのトトロ』に登場する七国山のモデルであると誤解されることがありますが、これは誤りです。映画に登場する七国山は、埼玉県所沢市にある八国山緑地がモデルとされています。

七国山は、歴史、自然、そして地域の人々の生活が融合した、魅力的な里山として、多くの人々に親しまれています。

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