三事兼帯

三事兼帯（さんじけんたい）について

三事兼帯とは、日本の官職制度において、五位蔵人、弁官、そして検非違使佐の三つの重要な官職を同時に兼任することを意味します。この制度は、通常は蔵人佐が弁官に就任することで実現されることが多いとされています。

歴史的背景

この三事兼帯の初例は、延喜5年（905年）に藤原清貫によって記録されました。蔵人頭や五位蔵人が弁官の職を兼任すること、また五位や六位の蔵人が検非違使の役に就くことはしばしば見られましたが、一人が同時に三つの官職を持つことは稀でした。特に、天皇に近侍し宮中で務める蔵人、太政官での行政業務を担う弁官、そして平安京における司法・警察・民政を実行する検非違使佐は、それぞれ非常に重要な役割を持っており、この三つを同時にこなすためには非常に高い実務能力が求められました。

11世紀の展開

『権記』の寛仁元年（1017年）に記された正月7日条には、藤原資業（後の日野家の祖）がこの三事兼帯の例として挙げられています。11世紀後半の白河院政期には、藤原為房や平時範がこの兼帯を果たし、彼らの子孫である藤原顕隆・顕頼や平実親・範家もそれに従いました。このようにして、実務官僚の系譜が勧修寺流、日野家、高棟流平氏に固定化される過程で、三事兼帯も自然とこの三つの家に限られるようになりました。例外として、信西の子である俊憲と貞憲の例もあります。

12世紀の終わり頃には、藤原経房、光長、定長の兄弟が三事兼帯を達成したことが記されており、中山忠親が『山槐記』に残した記録には、彼らの業績が「古今更無此例、誠是家之余慶也」と称賛されています。これは、三事兼帯が実務官僚の間で名誉あることとして認識されていたことを示しています。

鎌倉時代の変遷

鎌倉時代に入ると、就任年齢の低下と在職期間の短縮が進行し、19歳で就任し、在職が1ヶ月という例も見られるようになりました。これによって、三事兼帯の実態はかつての重要性から乖離し、名家の嫡流の一つの指標として形式的・象徴的な意味合いを持つようになりました。

主な三事兼帯者

三事兼帯の記録には多くの著名な官僚たちが関与しており、彼らの功績はその後の時代の官僚制度にも影響を与え続けました。そのため、三事兼帯は単なる官職の兼任にとどまらず、当時の政治や社会の重要性を物語るものでした。

参考文献

+ 宮崎康充 「三事兼帯と名家の輩」『日本歴史』626、2000年。

関連項目

• - 日本の律令制
• - 令外官

以上のように、三事兼帯は日本の歴史において特異な制度であり、いくつかの官職を同時に兼任することによって、官僚の業務効率やその権限の集中が図られていました。今後も、この制度の理解は歴史研究の重要なテーマの一つであり続けるでしょう。

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