三国峠 (群馬県・新潟県)

三国峠（みくにとうげ）

三国峠は、新潟県南魚沼郡湯沢町と群馬県利根郡みなかみ町の境に位置する標高1,244メートルの峠です。日本海側と太平洋側を隔てる中央分水嶺上にあり、古くから越後国、信濃国、上野国の国境とされていました。

概要

三国峠は、単なる県境というだけでなく、文化、習俗、言語、風習、食文化、気象など、さまざまな境界として機能しています。狭義には三国宿と永井宿の間の山越え部分を指しますが、広義には関東平野の端部から越後側の平野部の入り口までの山間地全体を指すこともあります。

上信越高原国立公園に属し、群馬県側、新潟県側の両方から登山道が整備されています。これらの道は、旧三国街道の一部であり、ぐんま県境稜線トレイル、中部北陸自然歩道、上信越自然歩道、三国路自然歩道、スノーカントリートレイルなどの指定を受けています。

戦国時代には、上杉氏と北条氏がこの峠を挟んで対峙しました。上杉謙信の関東遠征は「越山」と呼ばれ、三国峠は軍事的な要衝として重要視されました。江戸時代には、越後と江戸を結ぶ三国街道の一部として整備され、物資の輸送や大名行列の通行で賑わいましたが、冬の積雪、雪崩、夏の集中豪雨など、難所としても知られていました。

幕末の戊辰戦争では、三国峠の戦いが繰り広げられました。明治時代になると、清水峠の開削や信越線の開通により交通量が激減し、宿場町は衰退しました。しかし、昭和に入り、国道17号（三国トンネル）が開通すると、再び物流の大動脈として復活。関越自動車道（関越トンネル）の開通後は交通量が減少しましたが、危険物積載車両は現在も三国峠を経由しています。

バブル景気の頃にはスキーブームで賑わい、2022年には新三国トンネルが開通しました。

名前と歴史

三国峠の名前は、古来より越後、信濃、上野の国境と信じられていたことに由来します。また、峠から三国を一望できるという説もあります。峠上には三国権現が祀られており、坂上田村麻呂が創建したと伝えられています。上杉謙信によって仏教的な名前が改められましたが、明治時代の廃仏毀釈により神社名で呼ばれるようになりました。

三国街道史跡

三国街道の山道は、現在も猿ヶ京温泉から三国トンネルの湯沢町側までほぼそのままの形で残されており、三国路自然歩道として整備されています。猿ヶ京関所跡、下馬のまがめ、民宿通り、申沢橋、町野久吉の墓、永井宿本陣跡、三国古戦場、吉田善吉の墓、大般若塚、三坂茶屋跡、晶子清水など、数多くの史跡が点在しています。

アクセス

現在、三国トンネルを通過する定期路線バスはありません。

沼田駅、後閑駅、上毛高原駅から関越交通バス「猿ヶ京」行き
猿ヶ京バス停からみなかみ町営バス「永井宿郷土館」バス停
越後湯沢駅から南越後観光バス「浅貝・苗場プリンスホテル」行き、「西武クリスタル」バス停から徒歩約2km

歴史

中世以前：坂上田村麻呂や弘法大師の伝説が残る
1486年：道興准后、尭恵法印が三国峠を越える
戦国時代：上杉謙信が関東への足がかりとして整備
江戸時代：佐渡島への主要道路として江戸幕府が整備
1740年：越後長岡藩の藩士らが遭難
1803年：伊能忠敬が測量を終えて越える
1848年：三国権現の社殿が建て直される
1868年：戊辰戦争・三国峠の戦い
1876年：一級国道に認定
1882年：森鷗外が越える
1885年：国道としての地位を清水峠に譲る
1893年：信越本線開通により交通量激減
1920年：県道からも降格
1921年：県道に再指定
1934年：国道9号に認定
1940年：三国国道改良計画起案、工事中断
1952年：国道17号に指定、道路建設再開
1957年：三国トンネル完成
1959年：三国国道開通
1985年：関越自動車道（関越トンネル）開通
2022年：新三国トンネル開通

三国峠を題材・舞台とする作品

三国峠は、上杉謙信や後北条氏を描いた戦国時代の作品、堀部安兵衛を題材にした作品、池波正太郎の『鬼平犯科帳』、佐伯泰英の『居眠り磐音』、司馬遼太郎の『峠』など、多くの作品に登場します。また、尭恵や与謝野晶子など、多くの歌人も三国峠を題材とした歌を詠んでいます。

歌曲

湯沢スキーシャンソン
苗場音頭
あゝ三国峠
雪荒野
三国路
三国馬子唄
三宿追分
流し追分

その他

三国峠には、小林一茶の川柳や「すけべえの泣き別れ」という方言、田中角栄の演説、忌野清志郎のエピソードなど、さまざまな逸話が残っています。

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