三国志 (歴史書)

三国志

『三国志』は、中国の三国時代をテーマにした歴史書で、著者は陳寿です。この作品は後漢の動乱から、西晋による中国統一までの歴史を網羅しています。『三国志』は二十四史の一つとして重要視されており、その内容は歴史的事実だけでなく、さまざまな人物の伝記や出来事を詳述しています。

成立過程と版本

『三国志』の成立は、西晋統一の280年以降と推定されており、現在存在する版はおおよそ4種類です。

1. 百衲本（宋本）: 绍兴年間に作成された刻本で、現存する中では最も古い底本です。ただし一部に欠落があり、補足が必要です。
2. 武英殿本: 明代の北監の本を元に、陳浩らが1776年に編纂した、清朝の公式版です。
3. 金陵活字本: 明代の南監本を底本に、曽国藩が編集したバージョンで1870年に完成しました。
4. 江南書局本: 毛氏汲古閣本を元に曽国藩が作成したもので、1887年に出版されています。

ただし、三国志の善本は少なく、多くの流布本には誤りが多いことが指摘されています。特に、魏書が存在しても、呉書や蜀書が不足している場合が多いです。

また、20世紀に発見された写本の中には、虞翻陸績張温伝の残巻や、歩騭伝残巻など、歴史的に貴重な資料が含まれています。

構成と内容

この歴史書は紀伝体の形式を持ち、全体で65巻から成ります。具体的には、「魏志（魏書）」が30巻、「蜀志（蜀書）」が15巻、「呉志（呉書）」が20巻で構成されています。それぞれの志は当時の状況や人物について詳しく述べており、また陳寿の序文も存在していますが、現存していません。

『三国志』は、魏に重点を置いていることが特徴であり、魏だけに本紀があります。他の文学作品や歴史書と比較した際も、魏が正統とされる傾向が強いです。しかし、陳寿は蜀に対しても配慮しており、その記述には蜀の正統性を支持する傾向も見受けられます。

裴松之の注

陳寿が非常に簡潔な形で記した『三国志』に対して、裴松之はその注釈を加えています。元嘉6年に提出されたこの注の内容は多岐にわたり、陳寿が触れなかった事実まで収録されているため、重要な資料と見なされています。しかし、一方で信憑性에欠ける部分や逸話も多く含まれており、その史料価値には疑問が持たれています。

後世の評価

『三国志』は、司馬遷の『史記』や班固の『漢書』などと並び、優れた歴史書として評価されています。しかし、批判もあり、特に陳寿の記述が私怨に基づいているのではないかという疑念が提出されており、陳寿を巡る論争も絶えません。このような背景からも、『三国志』は単なる歴史書に留まらず、その後の歴史観や報道の在り方にも影響を与える作品となっています。

日本における三国志の位置づけ

日本では、『三国志』の本来の歴史書としての位置づけに対し、後に作られた通俗小説『三国志演義』との混同が見られます。特に吉川英治の小説が有名となったため、多くの人々は歴史書と演義を混同することが多いです。これに対抗して、歴史書を示す際には『正史』と呼ぶことが一般的になりました。

『三国志』はその複雑な背景と内容から、未だに歴史的な議論を呼び起こし続けており、多角的な視点からの研究が進められています。この歴史書は、単なる物語ではなく、中国の歴史や文化を知るための重要な文献であると言えるでしょう。

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