上田泰弘

上田泰弘について

上田泰弘（うえだ やすひろ）は、1916年11月14日に熊本県熊本市で生まれ、2013年12月16日に97歳で亡くなった、日本の陸軍軍人、そして航空自衛官です。彼は、第9代航空幕僚長を務めたことで知られています。

軍人としての経歴

1933年、熊本中学を四年で修了後、陸軍士官学校に入校。1937年7月に同校を卒業し、歩兵第16連隊に配属されました。日中戦争が勃発すると、小隊長として出征し、1939年9月には第16連隊第3中隊長としてノモンハン事件にも従軍しました。陸軍大学校に進学後は航空部門に転科し、1944年9月に卒業。第51航空師団の編成主任参謀となりますが、1945年に終戦を迎えます。

戦後の活動

終戦後、上田は公職追放となり、親族の会社に勤めたり、雑貨商を始めたりしましたが、うまくいきませんでした。1951年10月、警察予備隊に入隊し、総隊総監部人事部人事班に配属されました。1954年7月には航空自衛隊の発足と同時に転官。空幕人事課長を務めた後、ナイキ帰属問題の影響による人事交流で陸上自衛隊に転官し、第31普通科連隊長を務めました。その後、航空自衛隊に復帰し、第3術科学校長、第3航空団司令、空幕人事教育部長、北部航空方面隊司令官、航空幕僚副長などを歴任。1971年7月1日、第9代航空幕僚長に就任しました。

航空幕僚長としての辞任

航空幕僚長就任直後の1971年7月30日、全日空機雫石衝突事故が発生。上田は事故処理に尽力しましたが、その全容が明らかになった時点で責任を取り辞任しました。在任期間はわずか40日でした。辞任後、上田は事故犠牲者162名の遺族を一件ずつ訪問し、謝罪行脚を行ったとされています。

年譜

1937年7月：陸軍士官学校卒業（第49期）。
1937年8月：歩兵少尉に任官、歩兵第16連隊附となる。
1939年9月：歩兵第16連隊第3中隊長としてノモンハン事件に出動。
1943年12月：陸軍少佐に昇進。
1944年7月：陸軍大学校卒業（第58期）。
1945年8月：第51航空師団参謀として終戦を迎える。
1947年11月28日：公職追放仮指定を受ける。
1951年10月1日：警察予備隊に入隊（警察士長）。
1953年2月1日：2等保安正に任命。
1954年7月1日：航空自衛隊に転官（2等空佐）。
1958年8月1日：1等空佐に昇進。
1959年6月1日：航空幕僚監部人事教育部人事課補任班長に就任。
1960年8月1日：西部航空司令所防衛部長に就任。
1962年7月16日：航空幕僚監部人事教育部人事課長に就任。
1963年3月16日：1等陸佐に任命、第31普通科連隊長に就任。
1964年6月1日：1等空佐に任命、中部航空方面隊司令部付となる。
1964年7月6日：空将補に昇進。
1964年7月16日：航空自衛隊第3術科学校長に就任。
1965年7月16日：第3航空団司令兼小牧基地司令に就任。
1967年3月16日：航空幕僚監部人事教育部長に就任。
1968年7月1日：空将に昇進。
1969年2月17日：第7代 北部航空方面隊司令官に就任。
1970年7月1日：第11代航空幕僚副長に就任。
1971年7月1日：第9代航空幕僚長に就任。
1971年8月10日：辞職。
1991年4月29日：勲三等旭日中綬章を受章。
2013年12月16日：死去、正四位を叙位。

栄典

勲三等旭日中綬章 (1991年4月29日)

上田泰弘は、激動の時代を生き抜き、日本の防衛に貢献した人物です。そのキャリアは、陸軍軍人から航空自衛官へと変遷し、航空自衛隊の発展に大きく寄与しました。また、全日空機雫石衝突事故の責任を取って辞任したこと、そしてその後の遺族への謝罪行脚は、彼の誠実な人柄を示すものとして語り継がれています。

参考文献

歴代[航空幕僚長]] - ウェイバックマシン（[https://web.archive.org/web/20040910000736/http://www.mod.go.jp/asdf/rekidai/）
アルヴィン･D･クックス著『ノモンハン④ [教訓は生きなかった]』p.368

もう一度検索