中島三郎助

中島三郎助の生涯と業績

中島三郎助（なかじま さぶろうすけ）は、江戸時代末期に活躍した幕臣であり、日本の近代海軍史において重要な役割を担った人物です。彼は文政4年（1821年）1月25日に相模に生まれ、美濃の出身です。父は浦賀奉行所与力の中島清司であり、家族は代々与力を務める中島家に属していました。彼は文才にも優れ、若い頃から砲術における才能を発揮し、複数の流派から免許を取得しましたが、喘息という持病も抱えていました。

初期の軍歴

天保6年（1835年）、三郎助は浦賀奉行与力見習いとしての職に就きました。その後、天保8年（1837年）のモリソン号事件での活躍によって褒美を受けるなど、徐々にその名を知られるようになりました。嘉永元年（1848年）には特に目覚ましい貢献を認められ、与力に昇進しますが、嘉永3年（1850年）に奉行所の船庫での失火に対する責任を問題視され、押込（罰の一種）となる事態に見舞われました。

黒船来航と近代化への貢献

嘉永6年（1853年）にアメリカのペリー艦隊が浦賀に来航すると、三郎助は副奉行としてアメリカ側との交渉に参加します。彼は、砲艦の構造や武器の詳細を調査し、書面に意見書を提出。新たな艦隊の設置や軍艦の建造を訴えました。この意見が後の日本初の洋式軍艦「鳳凰丸」の製造につながります。

安政2年（1855年）には長崎海軍伝習所に入所し、造船学や航海術を勉強しました。安政5年（1858年）には、築地軍艦操練所の教授に任命され、日本初の乾ドックの建設にも携わります。しかし、病を抱える彼は文久元年（1862年）に職務を辞し、与力に戻ることとなります。

蝦夷地の戦闘と最期

慶応3年（1867年）に再び働きを求められ、いよいよ戊辰戦争が勃発する1868年には、榎本武揚らと共に新政府軍に対抗します。彼は蝦夷地に渡り、箱館戦争では奉行並として指揮を執り、激しい戦闘に参加しました。戦況が不利になった際も降伏を拒否し、五稜郭に立て籠もる決意を固め、最終的には明治2年（1869年）に戦死します。

文人としての側面と交友関係

三郎助はまた、俳句を詠む文才も備えた人物でした。江戸脱出時には「乙鳥や 翌日（あす）はときは（常盤）の国の春」と詠んだとされています。また、戦死前に残した辞世の句も多く、彼の精神性を垣間見ることができます。

彼は多くの著名人と交流を持ち、吉田松陰や木戸孝允、勝海舟などと関わりがありました。特に木戸とは短い間でしたが深い友情を育み、長きにわたり彼の影響を受けました。福澤諭吉とのエピソードでは、彼が処分を撤回させるために尽力した事が知られています。

記念碑と後世への影響

三郎助の死後、彼の功績や勇気を称える碑が多数建立され、地域の記憶として受け継がれています。その行動は弟子や後進にも多大な影響を与え、日本の海軍教育や近代化に関する活動にも反映されました。

千代ヶ岱陣屋付近には、その名を冠した土地や記念碑が建立され、今も彼の業績や精神は人々の記憶に生き続けています。

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