中御門家

中御門家：名門公家から華族へ至る歴史

中御門家は、藤原北家勧修寺流を祖とする由緒ある公家・華族の家系です。公家としての家格は名家で、華族としては伯爵家から侯爵家に昇爵しました。その歴史は鎌倉時代後期にまで遡り、数々の歴史的事件や人物と深く関わってきました。

封建時代の栄華と伝統

中御門家の始まりは、鎌倉時代後期に藤原北家勧修寺流の支流である吉田資経の四男、経継が住居を中御門と称したことによります。経継の兄の系統からは、勧修寺家と坊城家が分家しています。建治2年（1276年）には、経俊から経継に備中国の所領が与えられ、中御門家の基盤が築かれました。

中御門家は、儒学や有職故実を家職とし、朝廷の典礼や儀式を維持する役割を担いました。室町時代には、明豊、宣胤、宣秀らが学識で知られ、衰微する朝廷においても故実典礼の維持に貢献。宣胤は『宣胤卿記』を著し、宣秀と宣忠は敷奏を務めるなど、朝廷において重要な役割を果たしました。

江戸時代に入ると、宣衝（尚良）は院執権となり、その次男宣持は岡崎家を創設。宣衝の孫である資煕は議奏を務め、家系は安定した地位を維持しました。江戸時代の所領は200石で、屋敷は西院参町にありました。

幕末維新期の貢献と華族への転換

幕末維新期には、経之が義兄である岩倉具視と共に国事に奔走し、倒幕と王政復古に大きく貢献しました。維新政府においては、議定、会計事務総督、造幣局掛などを歴任するなど、重要な役割を担いました。

明治2年（1869年）の華族制度成立により、中御門家は旧公家として華族に列し、経之には王政復古への功績により賞典禄1500石が下賜されました。明治9年8月5日の金禄公債証書発行条例に基づき、家禄と賞典禄を合わせた額に相当する金禄公債が支給されました。

明治17年（1884年）、経之が隠居すると、長男の経明が家督を相続し、華族令の施行により伯爵に叙せられました。さらに、翌年には経之の維新の功績により、侯爵に昇爵しました。経之の三男である経隆も男爵に叙せられています。

後継問題と侯爵位の再授与

しかし、経明には嗣子がなく、明治31年（1898年）に彼が死去すると、娘の萬千子が家督を相続し女戸主となりました。華族令により華族の身分を失ったものの、分家の経隆の次男経恭を養子に迎え入れることで、侯爵位を再授与するための運動が活発化しました。宮内省の審査を経て、経之の功績を認められ、明治32年（1899年）に経恭に侯爵位が与えられました。昭和前期には、中御門家の邸宅は東京市麻布区三河台町にありました。

中御門家の系譜と参考文献

中御門家の歴史は、朝廷や政府における活躍、学問への貢献、そして華族としての栄光と苦難を織り成しています。その系譜と歴史を詳細に知ることで、日本の近代史の一端を垣間見ることができます。本稿では、中御門家の系図、歴代当主、そして関連文献を挙げています。これらの資料を通じて、より深く中御門家の歴史を探求することができます。

参考文献:

浅見雅男『華族誕生 名誉と体面の明治』
石川健次郎「明治前期における華族の銀行投資―第15国立銀行の場合―」
石井孝太郎『明治華族名鑑』
太田亮「中山　ナカミカド」『姓氏家系大辞典』
刑部芳則『京都に残った公家たち: 華族の近代』
落合弘樹『秩禄処分 明治維新と武士のリストラ』
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』
霞会館華族家系大成編輯委員会『昭和新修華族家系大成 別巻 華族制度資料集』『平成新修旧華族家系大成 上巻』
華族大鑑刊行会『華族大鑑』
橋本政宣『公家事典』
* 松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』

もう一度検索