中越関係

中越関係の歴史的背景

中越関係は、狭義には現在の中華人民共和国とベトナム社会主義共和国の二国間関係を指しますが、広義には中国の歴代王朝とベトナムの歴代政権との関係を含みます。

紀元前3世紀頃から、中国の王朝はベトナムに影響を与え始めました。ベトナムの歴史書『大越史記全書』にもその記録が残されています。ベトナムは長きにわたり、中国の王朝による支配と侵略を経験しました。特に紀元前111年から約1000年間は、中国の王朝の支配下に置かれました。この間、ベトナムの人々は独立を求めて闘い続け、938年には呉権が白藤江の戦いで南漢軍を破り、独立を勝ち取りました。また、1世紀にはハイ・バー・チュン（チュン姉妹）が後漢の圧政に対して立ち上がり、英雄として称えられています。さらに、13世紀には元軍の侵攻を陳朝ベトナム軍が白藤江の戦いで撃退し、15世紀初頭には明の支配に対し、黎利が蜂起して明軍を破り、黎朝を建国しました。文化面では、13世紀から19世紀にかけて、漢字を基にしたチュノムがエリート層を中心に広まりましたが、一般庶民には普及しませんでした。

近現代における中越関係

第二次世界大戦後、国際連合の委任に基づき、中国国民党の軍隊がフランス領インドシナに派遣され、日本の降伏を受け入れました。しかし、中国国民党はベトナム国民党を利用し、インドシナへの影響力を強めようとしました。1946年、蔣介石はフランスにインドシナ北部からの撤退と引き換えに、中国における租借権を放棄させました。

1949年10月1日、中華人民共和国が成立し、中国共産党は中華民国を台湾とその周辺島嶼のみを実効支配する地方政権に追いやりました。1950年1月15日、ベトナム民主共和国（北ベトナム）は中華人民共和国を承認し、両国の国交が樹立されました。

中国共産党は、1954年から1975年にかけて、北ベトナムが資本主義の南ベトナムとその同盟国であるアメリカと戦うのを支援しました。武器、軍事訓練、その他の物資を提供し、1964年から1969年の間には、ベトナムに30万人以上の兵士を派遣したとされています。しかし、ベトナムの共産主義者は、中国の影響力が強まることを警戒していました。

ベトナム戦争中、北ベトナムと中国は、領土問題を棚上げすることで合意しました。これらの問題には、トンキン湾の領海問題、西沙諸島（パラセル諸島）と南沙諸島（スプラトリー諸島）の領有権が含まれていました。1950年代には西沙諸島の半分を中国が、もう半分を南ベトナムが支配していましたが、1958年に北ベトナムは中国の西沙諸島の主張を受け入れました。その一方で、中国はバクロンヴィー島を北ベトナムに譲渡しました。1974年1月には、中国軍と南ベトナム軍が衝突し、中国が西沙諸島を完全に支配しました。1975年に南ベトナムが北ベトナムに吸収されると、北ベトナムは南ベトナムが管理していた南沙諸島の一部を引き継ぎました。統一ベトナムは後に西沙諸島に対する以前の放棄を取り消し、両国は諸島の支配を主張し、対立が続いています。

領土をめぐる争い

大陸国境線は2000年代に入って確定しましたが、南シナ海における南沙諸島と西沙諸島の領有権問題は依然として両国間の大きな懸念事項です。1988年には、スプラトリー海戦で中国人民解放軍がベトナム人民海軍を破り、ジョンソン南礁を占拠しました。このため、ベトナム国内では、中国に対する反感が高まっており、2007年には南沙諸島の領有権をめぐり、公然とデモが行われるほどでした。

中国が主張する九段線に基づき、南沙諸島と西沙諸島を含む南シナ海の島嶼部を「三沙市」として成立させたことに対し、ベトナム外務省は猛烈に抗議しました。ベトナムは、自国が領有する十分な歴史的証拠と法的根拠を持っていると主張し、中国の三沙市設置はベトナムの主権を侵害し、両国間の合意に違反すると非難しました。

2012年 6月21日、ベトナム国会は南シナ海の島嶼の領有権を定めた「ベトナム海洋法」を可決しました。これに対して、中国政府は抗議声明を発表し、ベトナム政府も中国の批判を拒否する声明を発表しました。

また、2012年 5月から中国で新規発行されたパスポートの査証ページには、南シナ海の「三沙市」の行政区画が印刷されており、ベトナムの主権を否定する図となっています。これに対し、ベトナム外務省は抗議し、ベトナム政府は中国の新パスポート所持者に対して入国スタンプの捺印を拒否する措置をとっています。

2014年には、中国がベトナムの排他的経済水域内で石油掘削リグを設置したとして、ベトナム国内で大規模な反中デモが発生しました。また、2016年には両国間の緊張が続いているため、国防省同士のホットラインが開設されました。

中越関係は、歴史的な背景と領土問題を抱え、複雑な様相を呈しています。両国間の信頼関係を築き、平和的な解決を目指すための努力が求められています。

もう一度検索