久我長通

久我長通（こが ながみち）：鎌倉後期～南北朝時代の公卿

久我長通は、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけて活躍した公卿です。後中院太政大臣とも称され、最終的には従一位太政大臣にまで昇りつめました。久我家10代当主であり、父は太政大臣を務めた久我通雄、母は源仲基の娘、そして子には同じく太政大臣となった久我通相がいます。

経歴

以下に、長通の経歴を『公卿補任』、『尊卑分脈』、『園太暦』、『花園天皇宸記』などの史料に基づいてまとめます。

弘安9年（1286年）：叙爵
弘安11年（1288年）：従五位上、侍従に任官
正応3年（1290年）：従四位下
正応5年（1292年）：左少将に任官
正応6年（1293年）：従四位上、左中将に転任
永仁2年（1294年）：正四位下、信濃介を兼任
永仁5年（1297年）：従三位
永仁6年（1298年）：正三位
永仁7年（1299年）：但馬権守を兼任
正安3年（1301年）：従二位
正安4年（1302年）：参議、左中将と但馬権守は元の如し。権中納言に転任
延慶元年（1308年）：正二位
延慶2年（1309年）：権大納言
正和2年（1313年）：権大納言を辞任
元亨3年（1323年）：正の大納言に還任
正中元年（1324年）：大納言を辞任
元徳元年（1329年）：権大納言に還任、左大将を兼任
元徳2年（1330年）：内大臣、左大将を辞任。従一位に昇叙
元徳3年/元弘元年（1331年）：右大臣、春宮傅を兼任
正慶元年/元弘2年（1332年）：右大臣と春宮傅を辞任
元弘3年（1333年）：右大臣に還任
建武元年（1334年）：右大臣を辞任、刑部卿に任官
建武4年/延元2年（1337年）：刑部卿を辞任
暦応3年（1340年）：太政大臣に任ぜられる
暦応4年（1341年）：奨学院別当と源氏長者になる
暦応5年（1342年）：太政大臣と奨学院別当を辞任
文和2年（1353年）：薨去（享年不明、赤痢が原因）

系譜

父：久我通雄
母：源仲基の娘
妻：園基顕の娘
子：久我通相

久我家相続問題

長通は、父である通雄から義絶されていたという指摘があります。これは、通雄が異母弟である通定を溺愛し、久我家の家督を譲ろうとしたためとされています。しかし、通雄は通定への家督相続を確定させることができずに亡くなりました。最終的には、長通が「久我長通譲状」を認め、通相に所領や洛中の邸宅を相続させることで決着しました。

村上源氏の嫡流を確立

岡野友彦氏の主張によれば、久我家が村上源氏の嫡流としての地位を確立できたのは、長通の功績によるところが大きいとされています。長通の祖父や父の時代には、村上源氏の諸家から大臣に任ぜられる者が相次ぎ、久我家が絶対的に優位な立場にあったとは言えませんでした。そのような状況下で、長通は右大臣に就任し、その後、息子である通相、そして孫の具通と、右大臣を経て太政大臣へと至る道を開いたのです。これは、村上源氏の嫡流としての地位を確立する上で非常に重要な出来事でした。

長通の努力によって、久我家は村上源氏の中で確固たる地位を築き上げ、その後の繁栄の礎を築いたと言えるでしょう。

参考文献

『公卿補任』（新訂増補国史大系）吉川弘文館
『尊卑分脈』（新訂増補国史大系）吉川弘文館
『園太暦』　続群書類従完成会
『花園天皇宸記』　続群書類従完成会
『久我家文書』　國學院大学所蔵
* 岡野友彦『中世久我家と久我家領荘園』 続群書類従完成会

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