渋川教直

渋川教直（しぶかわ のりなお）は、室町時代中期から後期にかけての武将であり、九州探題としてその名を歴史に刻みました。

応永29年（1422年）、渋川満直の三男として生まれた教直は、永享6年（1434年）に父が少弐氏の一族である横岳頼房に討たれたことを受け、若くして九州探題職を継承します。肥前国養父郡綾部に居を構え、肥前守護館を拠点としました。元服の頃、室町幕府6代将軍・足利義教より偏諱を受け、「教直」と名乗るようになったと推測されています。

嘉吉元年（1441年）、大内氏の当主・大内持世が嘉吉の乱で命を落とすと、教直は大内氏を継いだ大内教弘と共に赤松氏討伐に参戦します。翌嘉吉2年（1442年）には、教弘と協力して大宰府に拠る少弐教頼を対馬国へ駆逐することに成功しました。その後も、教直は教頼と肥前巨瀬で合戦を繰り広げるなど、幾度となく戦火を交えています。

応仁元年（1467年）に応仁の乱が勃発すると、教直は大内政弘と共に西軍に味方し、東軍についた少弐教頼と再び戦うことになります。同年6月18日には、旧肥前守護代家である今川胤秋と共に九州千葉氏の千葉教胤を攻めました。翌応仁2年（1468年）には、大内軍に味方して少弐教頼を筑前国高祖城で自刃させ、父の仇を討ちました。

少弐氏との戦いを経て、肥前の治安は安定し、教直の探題在職は歴代最長の45年にも及びました。その間、肥前守護として肥前神埼の櫛田宮の修造を行うなど、領内の文化振興にも尽力しています。また、博多の聖福寺の造営費用を得るために勘合貿易を仕立てるなど、朝鮮への遣使も頻繁に行っており、その際、朝鮮側には「九州節度使」や「九州都元帥」などの称号を用いていました。

この頃、九州探題の領地であったのは、肥前国養父郡、基肄郡、三根郡、神崎東八郷、筑前国岩戸荘内浜（姪浜）でした。肥前国の各地と姪浜は、脊振山の修験者を介して強く結びついていたとされています。

文明11年（1479年）、教直は肥前綾部館で生涯を閉じました。享年58。跡を子・万寿丸が継ぎましたが、教直の没後も文明16年（1484年）までは教直の名で朝鮮との通交が継続されていたことが記録に残っています。

渋川教直は、激動の時代に九州探題として確固たる地位を築き、領内の安定と文化の発展に貢献した人物として、その名を後世に伝えています。

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