五竜岳

五竜岳（ごりゅうだけ）

概要

五竜岳は、飛騨山脈（北アルプス）の後立山連峰に位置する標高2,814mの山です。山体は富[[山県]]黒部市と長野県大町市にまたがっており、山頂部は富[[山県]]側にあります。男性的な山容が特徴で、日本百名山の一つに数えられています。また、「竜」の字を旧字体で「五龍岳」と表記されることもあります。

五竜岳は、JR大糸線神城駅の西8.4kmに位置し、中部山岳国立公園内にあります。鹿島槍ヶ岳と並び、後立山連峰の主要な峰の一つです。両山は、日本三大キレットの一つである八峰キレットを挟んで対峙しており、それぞれ逆側から比較的容易に登ることができますが、両山を縦走するには、難所である八峰キレットを通過する必要があります。

山頂部は濃飛流紋岩型の溶結凝灰岩で、山腹は黒雲母花崗岩から形成されています。山頂部は森林限界を超える高山帯であり、多くの高山植物が自生しています。特に、南斜面は1952年に白馬岳周辺の山域と共に白馬連山高山植物帯の特別天然記念物に指定されました。また、コケ植物のナンジャモンジャゴケが、1951年に五竜岳で初めて採取されました。亜高山帯には、イワヒバリ、カヤクグリ、コマドリなどの鳥類が生息しています。

山頂の北西2.0kmには、1906年に発見された「大黒銅山跡」があります。ここで精錬された銅は、唐松岳と八方尾根を経由して運ばれていましたが、1918年に閉鎖されました。

名称の由来と武田菱

古くは越中側で餓鬼ヶ岳と呼ばれていたことが、1700年の記録に残っています。また、同時期の絵図には「後立山」という山名も見られ、近代登山界でも議論がなされました。「ごりゅう」が「五竜」に通じることから、今日の五竜岳であろうとする説が有力でしたが、後にそれが鹿島槍ヶ岳であることがほぼ確定しました。

一方、信州側では、この地域が戦国時代に武田氏の版図であったことから、菱形の雪形が武田家の紋章に通じるとして、「御菱（ごりょう）」と呼ばれ、それが「ごりゅう」に転訛したという説もあります。また、白馬山麓では「割菱ノ頭」と呼ばれていました。

1908年7月に三枝威之助が初登頂し、「五竜」という漢字を当てました。1970年には、野澤節子が「落日の岳残雪の武田菱」という句を詠んでいます。

環境

植物相

五竜岳の登山口でもある白馬五竜スキー場には、2001年に開設された白馬五竜高山植物園があります。ここでは、コマクサ、タカネナデシコ、ニッコウキスゲなど200種以上、100万株の高山植物が、初夏から秋にかけて見られます。また、ヒマラヤの青いケシやエーデルワイスなどの世界の高山植物も栽培されています。開園期間は6月下旬から9月上旬までで、冬季は豪雪地帯のため閉鎖されます。

周辺の山

五竜岳は後立山連峰の中央付近に位置し、西北西には東谷山へと尾根が延びています。北東1.0kmに位置する白岳からは、東南東に遠見尾根が延びています。遠見尾根には、西遠見山、大中遠見山、中遠見山、小遠見山のピークがあります。

源流の河川

五竜岳を源流とする河川は、日本海に流れます。具体的には、餓鬼谷・東谷（黒部川の支流で黒部湖に流れる）と、鹿島川の支流であるシラタケ沢（高瀬川の支流）があります。

登山

1908年7月、三枝威之助が白馬岳から鹿島槍ヶ岳へ縦走した際に登頂したのが、五竜岳の最初の登頂記録です。1931年3月には、京都大学の登山パーティーが唐松岳から鹿島槍ヶ岳への積雪期初登頂を行い、立教大学の堀田弥一らが宇奈月温泉から鹿島槍ヶ岳と五竜岳への越中側からの積雪期初登頂を達成しました。1973年に白馬五竜スキー場にゴンドラが敷設されたことで、遠見尾根からの入山が容易になりました。

山頂直下の北側斜面には鎖が設置されており、山頂からは360度の展望が開けます。西には黒部川を挟んで立山連峰が、南には鹿島槍ヶ岳を望むことができます。

登山ルート

主な登山ルートは以下の通りです。

白馬五竜スキー場からのルート: ゴンドラテレキャビンを利用し、「とおみ」から「アルプスだいら」へ移動後、遠見尾根を経由して白岳、五竜山荘を経て五竜岳山頂に至る最短ルートです。
八方尾根からのルート: 八方尾根スキー場のゴンドラを利用し、八方池山荘まで上がった後、八方尾根を唐松岳方面へ進み、唐松岳頂上山荘から大黒岳、白岳を経由して五竜岳山頂を目指すルートです。
後立山連峰縦走路: 白馬岳方面から扇沢方面に抜ける縦走ルートで、難所として知られる不帰嶮やG4・G5を越え、キレット小屋付近から吊尾根を通過して鹿島槍ヶ岳に至ります。そこから、爺ヶ岳、針ノ木岳へと続くメインコースや、柏原新道を通って扇沢へ下山するルートがあります。

白馬五竜スキー場からのルート

白馬五竜スキー場 - 地蔵の頭 - 遠見尾根（小遠見山 - 中遠見山 - 大遠見山 - 西遠見山 - 白岳） - 五竜山荘 - 五竜岳

八方尾根からのルート

八方尾根スキー場 - うさぎだいら - 八方池山荘 - 八方池 - 唐松岳頂上山荘 - 大黒岳 - 白岳 - 五竜山荘 - 五竜岳

後立山連峰縦走路

北側の主稜線からのルート: 白馬岳 - 杓子岳 - 鑓ヶ岳 - 天狗山荘 - 不帰嶮 - 唐松岳 - 唐松岳頂上山荘 - 大黒岳 - 白岳 - 五竜山荘 - 五竜岳
南側へ主稜線を歩くルート: 五竜岳 - キレット小屋 - 鹿島槍ヶ岳 - 冷池山荘 - 爺ヶ岳 - 種池山荘 - 岩小屋沢岳 - 新越山荘 - 鳴沢岳 - 赤沢岳 - スバリ岳 - 針ノ木岳 - 針ノ木峠（針ノ木小屋）

周辺の山小屋

稜線の鞍部などの登山道には、山小屋とキャンプ指定地があります。登山シーズン中の一部期間に有人の営業を行っており、五竜山荘は1951年に新設されました。五竜山荘は完全予約制のテント場も併設しています。また、白馬岳方面では唐松岳頂上小屋、針ノ木岳方面では冷池山荘が次のテント指定地となります。

周辺のスキー場

白馬五竜スキー場
Hakuba47ウィンタースポーツパーク

交通

JR大糸線神城駅の西8.4 km
長野自動車道安曇野ICの北北西42.7 km
松本空港の北北西57 km

脚注

関連項目

中部山岳国立公園
飛騨山脈 - 後立山連峰
日本の山一覧 (高さ順)・第57位
雪形（武田菱）

外部リンク

地図閲覧サービス（五龍岳） （国土地理院）
五竜岳の登山天気 （日本気象協会）

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