井波城

井波城（いなみじょう）

井波城は、富山県南砺市井波に位置する日本の城で、別名、礪波城または瑞泉寺城とも呼ばれます。南砺市によって史跡に指定されており、とやま城郭カードのNo.48としても知られています。

規模

八乙女山の裾野、標高143メートルの地点に築かれた平山城です。本願寺の勢力下にあった瑞泉寺によって、城郭伽藍として建てられました。城域は東西250メートル、南北230メートルに及び、三つの曲輪を有し、中央部には枡形虎口が残っています。北側を除く三方は巨大な土塁で囲まれ、その上には要所ごとに櫓台が設けられていました。南北には幅20メートルにも及ぶ広大な堀があったことが確認されています。

歴史

明徳元年（1390年）: 本願寺5世綽如によって瑞泉寺が創建されました。
文明13年（1481年）: 礪波郡で勢力を持っていた越中国福光城主石黒光義が、医王山惣海寺と手を組み瑞泉寺らと戦いましたが敗退しました（田屋川原の戦い）。この結果、石黒氏は力を失い、代わりに瑞泉寺率いる一向一揆勢の影響力が強まりました。
文明16年（1484年）頃: 瑞泉寺3代蓮乗（本願寺8世蓮如の次男）が、周辺の武士団に対する防衛手段として寺を城塞化しました。ただし、当時蓮乗は加賀国二俣本泉寺で病床にあり、実際の指揮は後の4代蓮欽によるものと考えられています。
永禄年間（1558年 - 1569年）: 瑞泉寺6代証心が上杉謙信と争いました。
天正3年（1575年）: 謙信と和睦。この頃には三百七十寺を擁し、礪波郡南部を実質的に支配していました。井波の町も大いに栄え「町屋三千軒」と称されたと言われています。
天正5年（1577年）: 『上杉家家中名字尽』に瑞泉寺の名が見えます。
天正7年（1579年）: 瑞泉寺7代顕秀の時、織田信長配下の佐々成政に攻められて落城し、城下も焼亡しました。敗れた一揆勢は五箇山へと逃れました。成政は配下の前野勝長を配置して守らせました。この頃に大改修が施され、阿弥陀堂跡が本丸、祖師堂跡が二の丸、太鼓堂跡が三の丸になったと伝えられています。三方を囲む土塁もこの頃に作られたと言われています。
天正13年（1585年）: 富山の役で、成政は兵力を集中させる策を採ったため、勝長は戦前に井波城を出て成政の本城である越中国富山城へと退きました。勝長は富山城で戦死したとされています。成政が降伏した後には前田家の管理下に置かれましたが、この時点で既に城としての戦略的価値は失われており、間もなく廃城になったと考えられています。

現在

1955年（昭和30年）7月に市の史跡に指定されました。町の中に位置するため破壊された箇所も見られますが、保存状態は良好です。特に三方を囲む土塁は一見の価値があります。

本丸跡には井波八幡宮、二の丸跡は古城公園、三の丸跡は井波八幡宮宮司の私邸となっています。古城公園内には井波町招魂社、金城寺（高野山真言宗）があります。

また、本丸跡には瑞泉寺の名前の由来となった綽如ゆかりの臼浪水があり、当時は城の井戸水として使用されていました。この他にも樹齢500年を超えると言われる松島大杉など、見所が多いです。

井波八幡宮の南にある櫓のような建物は、後世に建てられた井波の蚕堂です。石碑や案内板も設置されています。

脚注

南砺市指定史跡
とやま城郭カードNo.48

関連項目

日本の城一覧
綿貫民輔（井波八幡宮元宮司）
* 綿貫勝介（井波八幡宮現宮司）

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