交響曲第2番 (橋本國彦)

交響曲第2番 (橋本國彦)

概要

交響曲第2番は、作曲家・橋本國彦が1947年に新憲法施行記念祝賀会のために作曲した、2楽章から成る交響曲です。別名「祝典交響曲（ヘ長調）」とも呼ばれています。この作品は、戦後の日本における新たな出発を象徴する音楽として、重要な位置を占めています。

作曲の経緯

1946年、橋本國彦は母校である東京音楽学校（現在の東京芸術大学音楽学部）の教授を辞任しました。その後、同年発足した憲法普及会から、新憲法施行を記念する音楽の作曲を委嘱されました。普及会は、この委嘱に際し、戦後低迷していた音楽界に本格的な管弦楽曲創作の動機を与えるとともに、日本の現代音楽の水準を世界に示すという目標を持っていました。

普及会は、橋本の他に、小宮豊隆（東京音楽学校校長）、信時潔（同校作曲科講師）、長谷川良夫（同教授）と協議を行い、交響曲を橋本が、カンタータ「偉いなる朝」を長谷川が、国民歌「われらの日本」を信時が作曲することに決定しました。

自筆譜によると、この交響曲は1947年3月4日から4月16日までの短期間に、橋本が鎌倉の自邸で作曲しました。複数の草稿が存在することから、戦中から温めていた構想をこの機会にまとめたものと考えられています。草稿からは、スケッチ作成後にピアノ譜を作り、その後オーケストレーションを行うという作曲手順が確認できます。

初演と録音

1947年5月3日、東京の帝国劇場で開催された「新憲法施行記念祝賀会」において、橋本自身の指揮、東宝交響楽団（現在の東京交響楽団）によって初演されました。この模様はラジオで全国に中継されたほか、アメリカのNBCでも放送されました。しかし、その後、この作品は長く演奏されることがありませんでした。

2001年頃、名古屋フィルハーモニー交響楽団（名フィル）のコントラバス奏者である岡崎隆が、東京の日本近代音楽館で自筆譜のマイクロフィルムを発見しました。岡崎は、名フィルの指揮者たちにこの作品を紹介し、その一人である湯浅卓雄の指揮により、藝大フィルハーモニアが演奏し、CDが発売されることとなりました。このCDは、2011年2月に東京芸術大学奏楽堂で録音され、同年11月にNaxos Japanから発売されました（『日本作曲家選輯 橋本國彦：交響曲第2番／三つの和讃／感傷的諧謔』8.572869J）。このCDは世界初CD化と銘打たれ、2011年度の文化庁芸術祭に参加しました。

楽曲

橋本自身は、新憲法施行祝賀会のプログラムにおいて、「この曲は平和の喜びの歌と舞踏と行進を、ソナタ形式と変奏形式によって表現している。楽曲は各楽章に一貫した同一主題が使用されており、行進の最後の頂点において、動機による平和の鐘が打ち鳴らされ、歓喜の中に結ばれる」と解説しています。

楽器編成

この交響曲は、以下の楽器編成で演奏されます。

ピッコロ1
フルート3
オーボエ2
イングリッシュホルン1
クラリネット3
バスクラリネット1
ファゴット2
コントラファゴット1
ホルン4
トランペット3
トロンボーン3
テューバ1
ティンパニ1
打楽器（シンバル、小太鼓、大太鼓、トライアングル、チューブラベル）
ハープ
弦楽5部（6-5-4-4-3プルト）

楽曲構成

この交響曲は、以下の2つの楽章で構成されています。演奏時間は約34分です。

第1楽章

アレグロ・モデラート ヘ長調 3/4拍子
ソナタ形式
全551小節

第2楽章

アッラ・マルチア ヘ長調 4/4拍子
変奏形式
全374小節

参考資料

憲法普及会『事業概要報告書』1947年（国立公文書館所蔵）
三枝まり『日本作曲家選輯 橋本國彦：交響曲第2番／三つの和讃／感傷的諧謔』Naxos Japan、2011年。8.572869J。
憲法普及会「新憲法施行記念祝賀会プログラム」 1947年5月3日（国立国会図書館「日本国憲法の誕生」所蔵）

関連項目

交響曲第1番 (橋本國彦)：皇紀2600年奉祝曲
朝ぐもの：日本国憲法の公布・施行を記念して制定された山形県の2代目県民歌（橋本國彦作曲）
われらの日本：憲法普及会の委嘱により信時潔が作曲した「新憲法施行記念国民歌」

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