京王8000系電車

京王8000系電車は、京王電鉄京王線で運用されている通勤形電車です。1992年（平成4年）から1999年（平成11年）にかけて244両、2009年（平成21年）に事故廃車による代替車1両の、合計245両が製造されました。ここでは、京王線上で東側を「新宿寄り」、西側を「京王八王子寄り」とします。

編成は、新宿寄り先頭車の車両番号で代表され、例えば「8701編成」のように表記されます。10両編成の分割編成は、京王八王子寄りから両編成を「8701編成＋8801編成」のように併記します。京王では京王八王子寄りを1号車としていますが、ここでは各種文献に倣い、新宿寄りを左側として編成表を表記します。

概要

京王8000系は、京王線で初めてVVVFインバータ制御を採用した車両です。府中駅・北野駅付近の高架化工事完了に伴うダイヤ改正での輸送力増強を見据え、6000系以来約20年ぶりのフルモデルチェンジ車として登場しました。1992年にはグッドデザイン賞を受賞しています。

導入の経緯

1989年（平成元年）から始まった「リフレッシング京王」運動を背景に、新型車両への期待が高まりました。府中駅付近と北野駅付近での高架化工事完了、ダイヤ改正による輸送力増強、相模原線特急計画などが重なり、車両数が増加したため、6000系以来のフルモデルチェンジに至りました。

デザインはゼロから見直され、曲面ガラスを使用した前面、京王ブルーと京王レッドの独自の2色帯、内装の色彩など、一新されました。都営地下鉄新宿線への乗り入れは考慮せず、京王線専用車とされましたが、京王新線への乗り入れを考慮した車体寸法が採用されています。

構造

外観

7000系と同様に、ステンレス車体、20m両開き4扉、窓間に戸袋窓2枚と1枚下降窓2枚、車端部に戸袋窓と1枚下降窓が配置されました。扉間の下降窓は2連のユニット窓構造となり、窓面積が拡大されました。肩部分と台枠下部に丸みを持たせることで、印象が大きく変わりました。戸袋窓は、この8000系が最後の採用となりました。

前面デザインは、客室面積を確保しつつ、20mの全長、分割編成での使用を考慮した貫通扉の設置など、様々な制約の中で決定されました。初代5000系のイメージを取り入れ、曲面妻を採用するなど、複雑な形状となっています。そのため、乗務員扉部分までの前頭部は普通鋼製とされ、アイボリーに塗装されました。側面まで回り込む3次元構成の曲面ガラスが採用され、貫通扉にはプラグ式ドアが設けられました。

車体には、京王レッドと京王ブルーの帯が巻かれ、側面幕板部にも京王レッドの帯が追加されました。腰部の帯は運転台後部で色が入れ替わるデザインです。京王で初めて車外スピーカーが設置されました。

内装

扉間には7人掛け、車端部には4人掛けの優先席「おもいやりぞーん」が配置されました。1人あたりの座席幅は440mmと、7000系より10mm拡大されています。内装色は、模型を使った色合わせで決定され、壁、扉内面、扉鴨居部は大理石模様のアイボリー系、天井は白、床はチップ模様入りのベージュ系となりました。座席はバケット型で、斜め格子柄の入ったローズレッドです。乗り心地改善のため、従来車より硬めのシートが採用されました。各編成とも、新宿寄りから2両目に車椅子スペースが設置されています。

車両の外板と内装の化粧板の間には断熱塗料が塗布されていますが、後に、この断熱塗料に石綿（アスベスト）が含まれていることが判明しました。

乗務員室

乗務員室は一体LED表示となり、コンソールはグレー系に塗装されました。速度計はデジタル併用表示でしたが、京王ATC設置に伴う改造でアナログ式に変更されました。運転台は、6000系・7000系と同様のワンハンドルマスコンです。

乗務員の支援、行先・種別表示、検修時の支援などを目的としたモニタ装置が設置され、運転台右側に行先・種別設定装置、運転台背面仕切り扉上にガイダンス表示器が設けられました。トレインナビゲーション装置（TNS）設置準備工事が施され、一部編成にはTNSが設置されました。

主要機器

主制御装置、主電動機

主制御装置には、GTOサイリスタを用いたVVVFインバータ制御が採用されました。1つの主制御装置で電動車2両1ユニット、8個の主電動機を制御します。定速制御機能がありますが、35km/h以下では連続使用1分半の制限があります。主電動機は、出力150kWのかご形三相誘導電動機が採用されました。

制動装置

制動装置は、電気指令式が採用されました。回生ブレーキを優先する制御で、回生ブレーキだけでは制動力が不足する場合、空気ブレーキが作動します。空気ばね圧力を検知する応荷重器が装備され、空気ばね圧力は空調制御にも利用されています。

台車

台車は、7000系用と同一設計の車体直結式空気ばね式台車が採用されました。1999年製造の2編成は、ボルスタレス式台車に変更されています。

集電装置

パンタグラフは、東洋電機製のものが搭載されました。

補助電源装置

補助電源装置は、静止形インバータ（SIV）が搭載されました。

空気圧縮機

空気圧縮機は、HS-20D形が搭載されました。

冷房装置

冷房装置は、屋上集中式が各車に1台搭載されました。

形式構成

8000系は、以下の形式で構成されます。各形式とも同一編成中で下2桁は同番号または同番号+50となっています。8両編成は下2桁が21（71）から付番されています。

デハ8000形: 主制御装置、パンタグラフを搭載する中間電動車
デハ8050形: 電動空気圧縮機、補助電源装置を搭載する中間電動車
サハ8500形: 電動空気圧縮機がない付随車
サハ8550形: 電動空気圧縮機付きの付随車
クハ8700形: 新宿寄り制御車
クハ8750形: 京王八王子寄り制御車

新製時のバリエーション

10両編成

最初に製造されたグループで、優等列車に運用される想定で10両編成となりました。新宿寄りから4両＋6両に分割できる編成構成です。1992年3月から営業運転を開始しました。

8両編成

1995年以降は、8両編成での製造に移行しました。分割併合は考慮されず、新形式のサハ8500形・サハ8550形を含む8両貫通編成となりました。

事故廃車に伴う代替新造

2008年8月に発生した土砂崩れにより、8728編成のクハ8728が廃車となりました。その後、サハ8564を新製し、クハ8814と入れ替えて8728編成に組み込みました。

車体ラッピング

8713編成には、高尾山の自然をイメージしたラッピングが施され、2015年9月30日から運行されています。

改造工事

パンタグラフ換装: 菱形パンタグラフからシングルアーム式パンタグラフに換装
旅客案内装置設置: 客室ドア上部にLED式の旅客案内装置を設置
編成順位変更: 10両編成の編成順位を4両＋6両から6両＋4両に変更
表示装置LED化: 行先表示装置をフルカラーLED化
ATC設置工事: ATC車上装置の設置
中間先頭車の付随車化: 中間に組み込まれていた先頭車を付随車に形式変更
LED照明化: 車内照明をLED照明に交換
自動放送装置取付: 自動放送装置の取付
制御装置更新: 制御装置の更新
車体修理工事: 大規模な改造工事
* 車内防犯カメラ設置: 車内防犯カメラの設置

運用

10両編成は、特急運用を中心に運用され、休日の分割特急にも使用されました。8両編成は、当初相模原線特急などに運用されましたが、現在は各駅停車中心に運用されています。

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