京都市交通局10系電車

京都市交通局10系電車は、京都市営地下鉄烏丸線向けに開発された通勤形車両です。1981年5月29日の烏丸線北大路駅-京都駅間開業時に4両編成9本が投入され、烏丸線の歴史と共に歩み始めました。その後、路線の延伸や近畿日本鉄道（近鉄）京都線との相互直通運転開始に伴い、車両数が増やされ、全編成が6両化されました。1997年6月の国際会館駅延伸時までに、合計で6両編成20本（120両）の体制が確立されました。

車両の構造

車体は軽量なアルミニウム製で、1両あたり20m級の長さです。片側には幅1,300mmの両開き扉が4箇所に設けられています。前面は傾斜したデザインが特徴で、向かって左側には上下に分割して開く非常脱出用の貫通扉が設置されています。正面中央上部には行先表示器、その両脇に前照灯、そして窓下部には標識灯と尾灯が配置されています。車体外観はアルミのヘアライン仕上げに化粧皮膜が施され、京都市営バスと同じ緑色の帯が前面貫通扉部と側面上部に入れられており、京都らしさを演出しています。連結部分の妻面には、汚れを防ぐためにステンレス板が貼られています。

車内は全てロングシートで、緑色のシート、花柄のベージュの壁、白い天井といった配色です。つり革は三角形のものが採用されています。側窓は当初、騒音低減と保守の容易さを考慮して固定窓でしたが、後期の車両や改造により開閉可能な構造に変更されました。非常時の換気のため、妻面の窓の上半分が下方向に開くようになっています。各車両には3台の換気扇が設置され、車内灯の取り付け部分の隙間などを通じて空気を吸い出す換気システムが採用されています。各扉には、ドアの開閉を乗客に知らせるためのブザーが備えられています。南側から2両目の1200形車両には、運転台から見て北寄りに車椅子スペースが設けられています（後期の車両では全車に設置）。

運転室は全室構造で、大きな正面窓により広い視界が確保されています。デスクタイプの運転台には、力行（加速）と制動（ブレーキ）を個別のハンドルで前後に操作する2ハンドル方式の運転装置が採用されています。

主要機器と性能

当初の主要機器として、主制御器には三菱電機製のフロン沸騰冷却式サイリスタチョッパ制御装置が搭載され、1台で2両分8個の主電動機を制御し、回生ブレーキも備えていました。主電動機は東芝製の直流直巻式SE-632（1時間定格出力130kW）が用いられていました。補助電源装置は、初期車では両先頭車に東洋電機製造製のブラシレス電動発電機（BL-MG、出力75kVA）が、後期車や増結付随車では付随車に大容量のBL-MG（出力150kVA）が搭載されていました。駆動装置には住友金属製のWN平行カルダンが採用されています。空気圧縮機は2段圧縮式のC-2000M形が両先頭車に搭載されていました。集電装置であるパンタグラフ（東洋電機製造製の下枠交差形）は、中間電動車に2基ずつ装備されています。

台車は、住友金属工業製のS形ミンデン式が採用されており、電動車にはFS505系、付随車にはFS005が使用されています。ブレーキシステムには三菱電機製の電気指令式ブレーキ（MBS-R）が導入され、常用、非常、予備の3系統があり、ATCブレーキが運転士の手動操作より優先される設計です。冷房装置は、全車両の屋根上に1両あたり4基（集約分散式、能力12.2kW）が搭載されています。

形態分類と主な改造

10系は製造時期によって仕様が異なります。1981年開業時の1・2次車は前面角に縁取りがあり、側窓が固定式でした。1988年の3次車からは、車体構造がアルミ大型押出材工法に変更され、前面デザインも傾斜角が変更され縁取りがなくなり、貫通扉に窓が設置されました。側窓も開閉式に変更されています。また、冷房効果を高めるためのラインフローファン追加や暖房装置の変更も行われています。増結用付随車は、外観は1・2次車に合わせつつ窓は開閉式です。1990年の4次車以降は、主制御器のフロンレス化や車両全体のノンアスベスト化が実施されました。1997年登場の6次車では、車内案内表示器が1両あたり4箇所に設置され、車椅子スペースが全車両に設けられるなど、バリアフリー対応が進みました。これは、日本国内向け車両としては電機子チョッパ制御装置を採用した最後の例の一つです。

導入後、様々な改造が行われています。2000年から2005年にかけて、全編成に車両間の転落防止装置が取り付けられました。2012年からは、初期車の補助電源装置がBL-MGから静止形インバータ（SIV、出力150kVA）へ順次交換されました。2014年度から2020年度にかけては、主要機器の製造終了に伴い、制御装置をサイリスタチョッパからVVVFインバータ制御（SiC採用）へ換装する大規模な更新工事が実施されました。これにより主電動機も誘導電動機（140kW）へ変更され、回生ブレーキ性能の向上や遅れ込め制御が導入されています。空気圧縮機も低騒音型に交換されました。また、制御伝送システムやGPSも搭載され、自動運転にも対応可能な設計となっています。改造された車両は形式番号末尾にAが付けられています。2017年度から2020年度にかけては、一部編成の車外行先表示器がカラーLED化され、車内案内表示器（4か国語対応）が設置され、旅客案内機能が強化されました。2017年から2018年にかけては、全編成の優先座席エリアがリニューアルされ、視認性や使いやすさが向上しています。

運用と今後の動向

10系は、1981年の開業以来、京都市営地下鉄烏丸線を中心に運用されています。1988年からは近鉄京都線との相互直通運転を開始し、現在は新田辺駅まで乗り入れています。烏丸線内では最高速度75km/h、近鉄線内では最高速度105km/hで走行します。近鉄線内では急行列車としても運用されることがあります。また、京都サンガF.C.の応援ステッカーや「京まふ号」といったラッピング車両としても運行され、市民に親しまれています。

しかし、1981年に製造された初期の編成から順次、後継の20系による置き換えが進められています。2021年度以降、廃車が開始されており、今後も徐々にその姿を減らしていく予定です。

京都市交通局10系は、烏丸線の開業から延伸、近鉄線との直通運転に至るまで、長年にわたり京都の地下鉄を支えてきた車両であり、その技術的な変遷や市民生活への貢献は特筆されます。

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