休松の戦い

休松の戦い

休松の戦い（やすみまつのたたかい）は、戦国時代の九州、筑前国で大友氏と秋月氏の間で繰り広げられた合戦です。この戦いは、秋月氏の勢力回復と大友氏の支配拡大が激しく衝突した結果、勃発しました。

背景

1559年（永禄2年）、秋月氏の当主である秋月種実は、毛利氏の支援を得て、かつての領地であった筑前国秋月古処山城に帰還を果たしました。秋月氏は元々、大蔵氏を本姓とし、中国の漢王室の末裔を自称する名門でした。鎌倉時代から筑前国夜須郡秋月を拠点とし、近隣の原田氏や高橋氏と共にその血筋を誇っていました。秋月種実の父・秋月文種は、勢力を拡大する大友氏に抵抗し、大友軍に攻められ古処山で無念の自害を遂げていました。

合戦の経緯

古処山に戻った秋月種実は、勢力を拡大し、大友氏に対抗する姿勢を鮮明にしていました。大友氏は、種実の復帰を快く思わず、高橋鑑種と結託した種実が、鑑種の謀反に同調して反乱を起こします。永禄10年8月14日、大友氏は戸次鑑連、吉弘鑑理、臼杵鑑速といった歴戦の将に20,000の兵を与え、秋月領へ侵攻を開始しました。秋月に迫った大友軍は、まず8月14日に甘水・長谷山の戦い（瓜生野の戦いとも呼ばれる）で秋月勢と交戦し、15日には支城である邑城を攻略しました。その後、大友軍はさらに進軍し、休松城の攻略を開始しました。休松城を守っていた坂田諸正は、大友軍の猛攻の前に落城し、自害しました。休松城周辺に陣を敷いた戸次鑑連は、古処山城の攻略を計画しましたが、古処山の守りは固く、攻略は難航しました。戦線が膠着状態に陥る中、中国地方の毛利氏が九州に進出する動きを見せたため、大友氏傘下の豊前・筑前・筑後の国人衆は動揺し、次々と自領に引き上げてしまいました。この状況を憂慮した大友宗麟の指示を受け、大友軍は一旦撤退を開始しました。

9月3日午前、大友軍は休松の陣を引き払い撤退を開始しました。復讐に燃える種実は、この情報を知るや否や、全兵力12,000を四手に分け、問註所鑑景、内田善兵衛実久が率いる3,000余騎と、綾部駿河守が率いる5,000余騎で大友軍へ攻撃を開始しました。鑑連は、種実の奇襲を事前に察知し、3,000の兵を吉光の地に伏せ、反撃を開始しました。配下の小野鎮幸、由布惟信ら500騎、一族の戸次鎮連ら600騎と共に猛攻を加えました。秋月勢の問註所鑑景は2,000の兵を率いて、一度は鑑連の本陣に攻め込み、銃撃で猛将・十時惟忠を討ち取りましたが、後陣の内田鎮家、堀安芸守ら600兵が、援軍が到着したかのように装った鑑連の策に動揺し、多くの死傷者を出し撤退しました。

4日夜半、風雨が強まる中、種実は夜襲を決行します。2,000の兵を率いて、臼杵鑑速、吉弘鑑理の陣に突撃しました。予期せぬ秋月勢の夜襲によって、大友軍は大混乱に陥り、同士討ちを始める始末でした。夜襲によって大友軍は多くの部将が討ち死にし、全体で400名以上の死者を出すこととなりました。鑑連の奮戦によって、休松の陣からの撤退には成功したものの、その後も秋月勢は筑後山隈城まで追撃を続け、大友軍は更なる犠牲を強いられました。

主要参戦武将

大友軍

主力部隊（兵：20,000）
戸次鑑連
戸次鑑方（鑑連の異母弟、討死）
戸次鑑比（親俊の子、鑑連の従兄弟、討死）
戸次親繁（藤北戸次氏、親家の従兄弟、鑑連の従叔父、討死）
戸次親宗（親繁の弟、鑑連の従叔父、邑城攻略で討死）
戸次親久（片賀瀬戸次氏第2代当主、親家の弟、鑑連の叔父、討死）
十時惟忠（9月3日第一次の奇襲で流弾を受けて戦死）
小野鑑幸（小野鎮幸の父、邑城攻略で討死）
由布惟清（討死）
綿貫吉廉（討死）
吉弘鑑理
吉弘帯刀（討死）
利光鎮明（兵庫助。山隈城へ撤退の際、甘木・上高場で追撃を受けて討死）
橋本玄蕃允（山隈城へ撤退の際、甘木・上高場で追撃を受けて討死）
臼杵鑑速
朽網鑑康
清田紹喜
一萬田鑑実
溝口鎮生（討死）
三池親高（三池鑑速）（討死）
三池親政（討死）
三池親邦（討死）
三池鎮実（親高の嫡男）
田尻鑑種
田尻鑑永（鑑種の叔父。長者一族六人鎮広・鎮光・鎮忠・鎮純・鎮賢・鑑永討死）
問注所鎮連
内野五郎兵衛（討死）
蒲池近江（討死）
蒲池九郎兵衛（討死）

秋月軍

主力部隊（兵：12,000）
秋月種実
秋月治部少輔（問註所鑑景、問註所鎮連の叔父。親秋月の立場で大友方の鎮連・統景父子と一族対抗。）
内田実久
内田彦五郎
綾部駿河守
桑野実勝（新右衛門、兵部大輔）
休松城籠城隊（兵：数百）
坂田諸正（自害）

参考文献

『九州諸将軍記』
『筑前国続風土記』
『戸次軍談』

関連項目

大内輝弘の乱
筑紫惟門

もう一度検索