佐藤忠能

佐藤忠能（さとう ただよし）

佐藤忠能は、生年不詳ながら、天正6年（1578年）に没した戦国時代から安土桃山時代にかけての武将です。三省、紀伊守と称し、加治田城主を務めました。出自は美濃国の国人とされ、藤原秀郷の流れを汲む家系と伝えられています。父は佐藤清房、母は徳林妙福大姉、兄弟に佐藤秀清がいます。子には忠康（信氏）、佐藤昌信、斎藤利治室、佐藤継成室、仁甫竜義大姉、岸信周養女（八重緑）がおり、養子に斎藤利治がいます。初めは桑原右近衛門尉と名乗っていた時期もありましたが、永禄8年（1565年）頃までに佐藤姓に改めたとする説が有力です。

生涯

美濃斎藤氏に仕えた忠能は、斎藤道三方として土岐頼芸の追放に加わりました。しかし、弘治2年（1556年）の長良川の戦いでは、道三の子・斎藤義龍側に付き従軍しています。この戦での功績により、感状と西田原（400貫）、神野（300貫）に加え、加茂郡・武儀郡で4,389貫という広大な所領を与えられました。

斎藤龍興の時代になると、尾張の織田信長の侵攻に備え、関城主・長井道利、堂洞城主・岸信周との間で盟約を結びました。しかし、忠能父子は密かに家臣の梅村良澤を介して信長に内通。信長からは武儀郡、加茂郡、郡上郡の反銭を抑え、その土地を領有することを認められました。

西美濃三人衆が信長に寝返ったという噂が立つと、岸信周らに疑念を抱かれないように、娘（八重緑と伝わる）を信周の子・信友に嫁がせました。しかし、永禄8年（1565年）8月に信長が美濃に侵攻すると、密約通り織田方に寝返ったため、信友に嫁がせた娘は磔にされ、加治田城に面した長尾丸山に晒されるという悲劇に見舞われました。娘の遺骸は、家臣の西村治郎兵衛によって夜間に密かに回収され、龍福寺に埋葬されたと伝えられています。

長井道利は肥田忠政と共に、織田方に寝返った加治田城を奪還しようと、加治田から25町離れた堂洞城の岸信周と共に出陣しました。忠能は織田軍側につき、堂洞城攻撃に加わり、6時間の激戦の末、堂洞城を陥落させました（堂洞合戦）。この際、信長は忠能の子・忠康の館に宿泊し、忠能親子は感涙にむせんだとされています。

堂洞城落城後、長井道利が東から、肥田忠政が西から、東西より加治田城へ攻め寄せました（関・加治田合戦）。加治田絹丸捨堀での激戦の末、斎藤利治の援軍も得て、加治田勢は長井勢を撃退しました。また、佐藤忠能自身も川浦川を天然の堀として肥田忠政と激戦を繰り広げ、自ら5度にわたる合戦で忠政を打ち破りました。なお、この戦いで子の忠康が討ち死にしたという説もあります。

永禄10年（1567年）、忠能は信長の命により、斎藤利治を養子として加治田城を譲り、自らは隣村の伊深村に隠居しました。その後、加治田に菩提寺である龍福寺を建立。同寺には忠能の花押署名が記された文書が6点残されています。

ただし、『三十一祖御修行記』によれば、永禄8年（1565年）から同10年（1567年）の間に、忠康と弟の昌信の間で家督争いが発生。昌信が忠康を殺害して加治田城を奪ったものの、稲葉山城攻撃直前であったため、信長の怒りを買い、忠能は引退、昌信は武儀八幡に移封されたという説もあります。この不名誉な出来事を隠蔽するため、忠康は戦死したことにされたとされています。

永禄12年（1569年）7月、山科言継が岐阜に滞在した際、忠能は彼と交流を持ちました。その際、信長が義龍の持っていた壺を差し出すよう命じ、紛失したとなれば忠能を含む国衆17人が切腹しなければならなかったものの、無事に解決したという逸話が残っています（『言継卿記』）。

忠能は、天正6年（1578年）3月29日に病没し、龍福寺に埋葬されました。戒名は真珠院殿慶岩竜雲居士。

主要家臣団

長沼三徳
西村治郎兵衛
湯浅新六
佐藤堅忠
井戸宇右衛門
梅村左平治 - 後に森氏に仕える
白江権左衛門
横井兵助 - 森氏に仕え、長久手に出陣
清水九郎兵衛
吉田弥三
田中七郎右衛門
小森半平
他

参考文献

『富加町史 下巻 (通史編)』　第四章　中世　第六節　加治田城主佐藤紀伊守忠能　p207～p226　富加町史編集委員会　1980年
堂洞軍記
永禄美濃軍記
信長公記

関連項目

加治田衆
佐藤氏

脚注

外部リンク

姓氏と家紋＿佐藤氏
富加町 龍福寺の過去帳
武家家伝＿美濃佐藤氏

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