斎藤利治

斎藤利治：美濃斎藤氏の血を引く武将の生涯

斎藤利治（さいとう としはる）は、戦国時代の武将で、斎藤道三の末子と伝えられています。幼名は新五郎、新五。諱は長龍、長竜、利興ともされますが、史料に基づくと利治が正しいとされています。

生涯

斎藤家から織田家へ

天文10年（1541年）頃、美濃国の戦国大名・斎藤道三の末子として生まれたとされています。長良川の戦い後、織田信長は道三の近親である新五郎を保護し、道三を討った斎藤義龍に代わって斎藤家の跡を継がせようとしました。新五郎は元服後、斎藤利治と名乗り、信長の側近として武功を重ねました。

中濃攻略戦と美濃斎藤家正統後継者

永禄8年（1565年）、佐藤忠能らと共に堂洞城、関城を攻略し（堂洞合戦、関・加治田合戦）、中濃地域を平定しました。堂洞城攻めでは佐藤忠能の子が戦死したため、利治は忠能の養子となり、永禄10年（1567年）には加治田城主となりました。

信長からは武儀郡から加茂郡にかけての13箇所、計2,184貫文の地を与えられています。また、兄の斎藤利堯を加治田城の留守居としました。

上洛戦から信長包囲網

永禄11年（1568年）の観音寺城の戦い、永禄12年（1569年）の大河内城の戦いなど、織田軍の主要な戦いに参戦しました。元亀元年（1570年）には姉川の戦いにも従軍し、石山合戦では砦を守り抜きました。元亀3年（1572年）には三好・松永氏との戦い、元亀4年（1573年）には槇島城の戦いにも参加し、足利義昭を攻めました。

朝倉討伐、小谷城攻めにも従軍し、斎藤義龍の息子である斎藤龍興を討ち取るという功績を挙げました。天正2年（1574年）の伊勢長島一向一揆攻め、武田勝頼の東美濃侵攻阻止にも参戦しました。

天正4年（1576年）には織田信忠の側近となり、天正5年（1577年）の柴田勝家の北国攻めにも従軍しました。

越中進攻

天正6年（1578年）、神保長住への援軍として越中国へ派遣され、月岡野の戦いで上杉軍を破り、富山城を奪還しました。しかし、摂津での夜襲事件を受け、信長の命令により越中国から撤退しました。この戦いは、上杉家を中心とした信長包囲網を崩壊させるきっかけとなりました。

中国進攻と療養

天正7年（1579年）、有岡城の戦いでは勇戦しました。その後しばらくは記録が途絶えますが、加治田城にて信長・信忠から休養を命じられました。

本能寺の変と最期

天正10年（1582年）6月1日、利治は信忠と共に京都の二条新御所に宿泊しました。6月2日、本能寺の変が起こると、信忠は二条新御所に移動し、明智軍と交戦しますが、最終的には自刃しました。利治は、斎藤利三によって討ち取られました。

人物・逸話

信長は道三の婿にあたるため、道三の近親である利治を重用したという考察があります。また、利治の名前から、道三に追われた斎藤新五郎の子孫であるという説もあります。
平井信正を保護し、加治田に住まわせました。信正の孫は利治の「治」の字を賜ったとされています。
関・加治田合戦では、湯浅讃岐の活躍を賞し、自分の「新」の字を与えました。
龍福寺の位牌には、利治が二条城で討ち死にしたと記されています。
太田本郷城跡には利治の菩提寺があり、近くには利治の娘の皮膚病を治したとされる「的場の清水」があります。
利治は、本能寺の変で信忠に逃亡を勧めたとされています。
『南北山城軍記』には、家族を心配させまいと深夜に加治田城を出発し、信忠の二条城に到着する様子が書かれています。
利治は生涯側室を迎えませんでした。
加治田衆は利治によく従い、貢献しました。
斎藤道三から織田信長への「美濃国譲り状」は、利治が信長に渡した可能性が高いとされています。
京都建勲神社には、斎藤新五（利治）の額が飾られています。
利治は、軍記物では忠義を尽くした武将として評価されています。
父である斎藤道三の夜話をまとめた書物の編者となっています。
濃姫の弟であり、織田家一門衆としての立場でした。
美濃国の要地である加治田城の大名であり、領地替えは一度もありませんでした。
飛騨国司大名の姉小路頼綱とは同年齢で親族関係にありました。
月岡野の戦いでは、飛騨街道を通って越中国へ入りました。戦後、信長は利治に帰陣を命じました。
味方した越中国人衆からの贈り物は、利治が全て取り次ぎました。
本能寺の変で利治と利三が戦ったことは、斎藤一族の悲劇ともいえます。
二条城での防戦の様子は、討ち死にした武将六十一名の中に利治の名が記されています。
月岡野の戦いは、織田家合戦の中でも比類なきものとされています。
加治田城の改築を行い、虎口石垣の改修をしました。
佐藤忠能の養子となり、美濃佐藤氏の親族衆となりました。佐藤一族は利治を支えました。
本能寺の変で討ち死にした利治の遺骸は、義兄の斎藤利三によって丁重に扱われました。
甲州征伐には参加せず、美濃斎藤氏の留守居を務めました。

領土（統治）

加治田城主として、美濃国を中心に広大な領地を統治しました。

主な家臣・与力

加治田衆
美濃衆
尾張衆
飛騨衆
越中衆

参考文献

谷口克広、岡田正人『織田信長軍団100人の武将』新人物往来社、2009年。
谷口克広「特別論考 信長ストーリー三 織田軍に組み込まれた美濃衆の働き」『改定版 岐阜信長歴史読本』〈別冊歴史読本 10号〉2017年。
和田裕弘『織田信忠 天下人の嫡男』中央公論新社、2019年。
[太田牛一]] 著、榊山潤 訳『現代語訳 [[信長公記]』〈ちくま学芸文庫〉2017年。
富加町史編集委員会 著、富加町史編集委員会 編『富加町史』 上巻 史料編、富加町、1975年。
『富加町史 下巻 (通史編)』
堂洞軍記
永禄美濃軍記
南北山城軍記
信長公記

関連書籍

諸田玲子 『帰蝶（きちょう）』 PHP研究所、 2015年 ISBN 978-4569826622
織田信長の東美濃攻略歴史PRマンガ『夕雲の城』 作画：渡辺浩行

関連項目

美濃斎藤氏
斎藤道三
濃姫
斎藤利三
加治田衆

外部リンク

斉藤新五
斎藤氏系図 系図集 美濃国の戦国大名
史跡 太田本郷城跡・国重要文化財 浮田家住宅
的場の清水 - 富山市ウオーキング協会
織田信長公三十六功臣 斎藤新五
安藤武彦, 「斎藤徳元の家系と前半生」『連歌俳諧研究』
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信長公記巻十一 12、越中陣　越中御陣の事
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