偽れる盛装

『偽れる盛装』は、1951年1月13日に公開された大映製作の日本映画です。監督は吉村公三郎、脚本は新藤兼人が担当し、主演は京マチ子が務めました。モノクロ、スタンダードサイズで、上映時間は102分です。

この作品は、吉村公三郎と新藤兼人が松竹を退社後、設立した近代映画協会の作品として制作されました。新藤が師と仰ぐ溝口健二監督の『祇園の姉妹』に影響を受け、そのオマージュとして脚本が執筆されています。映画は、第25回キネマ旬報ベスト・テンで第3位に選ばれるなど、高い評価を受けました。また、1964年には『肉体の盛装』というタイトルでリメイクされています。

製作の背景

この映画の企画は、元々『肉体の盛装』というタイトルで、吉村と新藤が松竹在籍時に進められていました。二人は綿密なリサーチを重ね、1948年11月にはシナリオを完成させましたが、松竹での製作は実現しませんでした。松竹を退社後、近代映画協会を設立した二人は、この企画を大映に持ち込みました。しかし、当初は「時代遅れ」として断られてしまいます。

その後、東宝との提携で撮影を開始するも、ストライキにより中断。東横映画にも企画を持ち込みますが、受け入れられませんでした。そんな中、大映では黒澤明監督の『羅生門』の撮影が遅れており、その穴埋めとして、近代映画協会に作品の製作依頼が舞い込みました。吉村と新藤は、この機会に『肉体の盛装』の映画化と、新藤の監督デビュー作として熱望していた『愛妻物語』の企画を実現することを条件に、大映の依頼を承諾します。こうして、松竹時代から温めていた『肉体の盛装』は、『偽れる盛装』と改題され、主演も京マチ子に変更されて、ようやく陽の目を見ることになりました。

ストーリー

物語は、花街を舞台に、芸者たちの愛憎劇を描いています。京マチ子演じる主人公の君蝶は、華やかな世界に生きながらも、複雑な過去を抱えています。彼女を取り巻く人々との関係を通して、人間の欲望や嫉妬、そして愛が交錯する様が描かれます。

キャストとスタッフ

監督: 吉村公三郎
製作: 亀田耕司
脚本: 新藤兼人
撮影: 中井朝一
音楽: 伊福部昭
美術: 水谷浩
振付: 楳茂都陸平
主題歌:
「祇園ブギ」（吉村公三郎作詞、原六朗作曲、池真理子歌）
「加茂川夜曲」（吉村公三郎作詞、原六朗作曲、久保幸江歌）

出演者:
君蝶: 京マチ子
妙子: 藤田泰子
千代: 村田知英子
きく: 滝花久子
福彌: 柳恵美子
友香: 橘公子
孝次: 小林桂樹
渡邊: 河津清三郎
山下: 菅井一郎
伊勢浜: 進藤英太郎
笠間: 殿山泰司
藤尾: 三好栄子
せつ: 藤代鮎子
とんぼ: 牧千草
おとき: 常盤操子
北川博士: 南部章三
あんま: 石原須磨男

受賞歴

第5回毎日映画コンクール：監督賞、脚本賞、美術賞、女優演技賞（京マチ子）
第1回ブルーリボン賞：撮影賞
第4回日本映画技術賞（水谷浩）
第25回キネマ旬報ベスト・テン：第3位

リメイク

1964年には、村山新治監督、佐久間良子主演で『肉体の盛装』としてリメイクされました。

スタッフ
監督：村山新治
原作・脚本：新藤兼人
企画：吉野誠一、矢部恒
撮影：坪井誠
音楽：池野成
美術：進藤誠吾

出演者
君蝶：佐久間良子
孝次：江原真二郎
妙子：藤純子
きく：丹阿弥谷津子
福弥：岩本多代
とんぼ：新井茂子
千代：楠田薫
伊勢浜：山茶花究
おとき：赤木春恵
友香：岩崎加根子
渡辺秀雄：新井和夫
藤尾：村瀬幸子
山下：西村晃
* 笠間：南都雄二

テレビドラマ化

1962年には、フジテレビの『シャープ火曜劇場』でテレビドラマ化もされています。朝丘雪路が君蝶役を演じました。

この映画は、花街を舞台にした人間ドラマとして、公開から70年以上経った現在でも、多くの映画ファンに愛され続けています。

もう一度検索