内藤昌月

内藤昌月（ないとう まさあき）

内藤昌月は、戦国時代の武将であり、甲斐武田氏の家臣として知られています。内藤昌豊（ないとう まさとよ、または昌秀）の養子として、その名跡を継ぎました。

生涯

出自

天文19年（1550年）、昌月は信濃国の国衆である保科正俊（ほしな まさとし）の三男として生を受けました。保科氏は信濃の有力な国衆であり、その血筋を受け継いでいます。

養父である内藤昌豊は、武田氏の譜代家老である工藤氏の出身でした。昌豊は武田信玄の側近として重用され、永禄4年（1561年）の西上野侵攻以降は、西上野の国衆との取次役を務めるなど、外交面でも活躍しました。元亀元年（1570年）には、上野箕輪城（みのわじょう）の城代となり、内藤氏の名跡を継承しました。しかし、昌豊は天正3年（1575年）5月の長篠の戦いにおいて戦死。そのため、千次郎（せんじろう、後の昌月）が昌豊の養子となり、内藤氏の家督を継承することになったのです。

武田勝頼の上野侵攻

昌月は、武田勝頼（たけだ かつより）の側近として仕えました。天正6年（1578年）3月、越後国（えちごのくに）で上杉謙信（うえすぎ けんしん）の死後、上杉景虎（うえすぎ かげとら）と景勝（かげかつ）の間で家督を巡る御館の乱（おたてのらん）が発生。勝頼は景虎を支援するために越後へ出兵しました。勝頼は景虎と景勝の和睦を調停しましたが、同年8月に勝頼が撤兵中に乱が再発し、景虎は滅亡してしまいます。これにより、武田氏と後北条氏（ごほうじょうし）の間で甲相同盟（こうそうどうめい）が破綻し、領国が接する西上野（にしかみつけ）は緊張状態に陥りました。

天正7年（1579年）2月、昌月はそれまで不在であった箕輪城代として赴任し、大和守（やまとのかみ）を称しました。同年8月、昌月は北条右衛門尉（ほうじょううえもんのじょう）、宇津木氏久（うつぎうじひさ）と謀り、上杉景虎方であった厩橋城（まやばしじょう）、大胡城（おおごじょう）を領有する北条高広（ほうじょう たかひろ）を武田方に転じさせました。その後、河田重親（かわだしげちか）、長尾憲景（ながおのりかげ）、那波顕宗（なばあきむね）も武田方となっています。

勝頼は後北条氏に対抗する外交的基盤として、常陸国（ひたちのくに）の佐竹氏（さたけし）と甲佐同盟（こうさどうめい）を締結しました。同年9月には勝頼は佐竹義重（さたけよししげ）と共同で東上野に出兵し、由良国繁（ゆらくにしげ）の金山城（かなやまじょう）、長尾顕長（ながおあきなが）の館林城（たてばやしじょう）、富岡秀高（とみおかひでたか）の小泉城（こいずみじょう）の城下を荒らし、河田備前守（かわだびぜんのかみ）の膳城（ぜんじょう）を落城させています。

武田氏と佐竹氏は甲佐同盟により後北条氏に対する攻勢を強め、北条氏政（ほうじょううじまさ）は北条氏邦（ほうじょううじくに）宛ての書状において、「由良氏と長尾氏が佐竹方として出兵した。このままでは上州は勝頼のものとなり、当方終には滅亡となる。」と嘆いています。

武田勝頼の上野支配は、跡部勝資（あとべかつすけ）、内藤昌月、土屋昌恒（つちやまさつね）が奉行となって進められ、上毛（じょうもう、上野国）については真田昌幸（さなだまさゆき）が担当しました。

上野の争乱（武田氏滅亡後）

天正10年（1582年）3月、織田信長・徳川家康連合軍の武田領侵攻（甲州征伐）により、武田氏は滅亡しました。昌月は信濃を追われた父・正俊と、兄・保科正直（ほしなまさなお）を箕輪城に迎え入れました。そして上野一国を拝領した織田家臣・滝川一益（たきがわかずます）が入国すると、他の上野国衆と同様に一益に降り、箕輪城を明け渡しました（この時、北条高広は厩橋城を、真田昌幸も沼田城をそれぞれ明け渡しています）。

同年6月、本能寺の変によって信長が死去すると、甲斐・信濃の武田遺領を巡る天正壬午の乱（てんしょうじんごのらん）が発生します。6月16日には武蔵国児玉郡上里町（むさしのくにこだまぐんかみさとまち）において滝川一益と後北条氏の間で神流川の戦い（かんながわのたたかい）が起こり、昌月は滝川勢として戦いましたが敗北し北条氏直（ほうじょううじなお）に降りました。一方、保科正俊・正直親子は北条方として信濃に攻め入り、高遠城（たかとおじょう）を奪還しました。この時、昌月も高遠城に遠征しており、同年8月には北条氏を支援するために甲斐に向かっています。

保科正直は暫く北条方に留まっていましたが、甲斐において徳川家康が優勢に立つと、依田信蕃（よだのぶしげ）、真田昌幸、木曾義昌（きそよしまさ）らが家康方に転じ、正直ら信濃国衆も徳川方に転じました。この時、高遠城に残されていた内藤家臣・十郎左衛門の兵5百は、城の外に追い出されたと「赤羽記」に記されています。その後、真田昌幸と北条高広が上杉氏に転じ、保科正直は徳川勢として、天正13年（1585年）の真田昌幸の上田城攻めに従軍しています。

天正11年（1583年）には、北条氏邦が箕輪城主となります。氏邦は箕輪を拠点として、厩橋城の北条高広、沼田城の真田昌幸を攻めており、昌月もこれに従軍しました。なお、『上毛伝説雑記拾遺』『箕輪軍記』によれば、昌月は保渡田城（ほどたじょう、群馬県高崎市）に入城したとする伝承があります。

天正16年5月25日（1588年6月18日）に死去しました。没年月を同年1月とする説もあります。享年39。『保科御事歴』によれば、法名は「陽光院南華宗英（ようこういんなんがそうえい）」。『井伊家家士由緒書』によれば、跡を子の直矩（なおのり）が継いだとのことです。

子孫

天正18年（1590年）後北条氏が滅亡すると、内藤氏も所領を失いました。直矩の子・内藤直卓（ないとうなおたか）は、昌月の生家に当たる会津藩（保科氏）に仕え、子孫は家老となりました。直矩の弟の内藤信矩（ないとうのぶのり）は、箕輪城に入った井伊直政（いいなおまさ）に仕え、その子孫は彦根藩士になったと伝えられています。

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