円山 (札幌市)

円山：札幌市民に愛される歴史と自然豊かな山

円山は、北海道札幌市中央区に位置する標高225メートルの山です。札幌市街地の西側に程近く、石狩平野に面した独立峰として、札幌市民の憩いの場として親しまれています。その円やかな山容から名付けられた円山は、豊かな自然と歴史を秘めた魅力的な場所です。

地形と地質：独立峰とその成り立ち

円山は札幌市西部の山地帯の末端に位置しますが、周囲の山々と独立した山塊を形成しています。北、東、西は平地に接し、南側は双子山と呼ばれる低い丘陵地帯につながっています。山頂からは北西と西に尾根が伸びており、これらの尾根沿いに登山道が整備されています。

地質的には、第三紀中新世から漸新世に生成された西野層を基盤とし、第四紀初頭に噴出した安山岩質の溶岩が頂上部を形成しています。円山川が西から北へ、界川（暗渠化された部分が多い）が東側の山麓を流れています。

歴史：アイヌ文化と都市開発、そして自然保護

古くからアイヌの人々は円山を「モイワ」（小さな山を意味する）と呼んでいました。明治時代になり、札幌中心部から見た円やかな山容から「円山」と命名されました。この「モイワ」という名称は、後に誤解から藻岩山に転用されることとなります。

札幌の都市計画において、円山は重要な役割を果たしました。開拓判官である島義勇は、円山に登り都市計画を構想し、宗教的な守護として円山に神社を建立し、その東側に市街地を形成することを決定しました。1871年（明治4年）、円山の北麓に札幌神社（後の北海道神宮）が創建されました。

開拓使以降の行政機関は、円山の山林の保護を重視しました。石材の採取は一時的に許可されたものの、すぐに禁止され、周辺での伐採も禁止されました。1880年（明治13年）には円山養樹園という試験林が設置されましたが、1891年（明治24年）に移転・廃止されています。

円山の豊かな植物相は、科学者たちの注目を集めました。札幌農学校（後の北海道大学）教授の植物学者、宮部金吾は円山を研究フィールドとし、1893年（明治26年）にはハーバード大学のサージェント博士を案内し、円山の植物相を世界に紹介しました。1913年（大正2年）には原生天然保存林に指定され、1921年（大正10年）には国の天然記念物「円山原始林」に指定されました。ただし、市街地に近い東側の斜面は天然記念物の指定から外れています。宮部金吾やその弟子である舘脇操らは、円山の植物調査や保護に貢献しました。

1903年（明治36年）からは、養樹園跡地に円山公園の整備が進められ、1932年（昭和7年）から1934年（昭和9年）にかけて運動場が作られました。1951年（昭和26年）には札幌市円山動物園が開園しました。

1914年（大正3年）には、四国八十八箇所に倣って88体の石仏が設置され、登山が盛んになりました。北西麓には大師堂が建立され、多くの石仏が登山道の脇に並んでいます。20世紀に入ると山麓に住宅が増え始め、1960年代には周辺は完全に市街地化しました。現在では山の中腹まで住宅が迫り、円山は住宅地に囲まれた存在となっています。

登山：自然歩道と円山八十八ヶ所

円山の登山道は、1914年（大正3年）に上田万平・善七兄弟によって開かれました。彼らは四国からの移住者らに協力を得て、四国八十八箇所に因んだ88体の観音像を登山道に沿って建立し、「円山八十八ヶ所」と名付けました。現在では200体以上の観音像が登山道に並んでいます。

円山には、八十八ヶ所入口から山頂、山頂から円山西町入口、そして円山西町入口から八十八ヶ所入口に戻る周回コースの自然歩道が整備されています。八十八ヶ所入口から山頂までのルートは「八十八ヶ所ルート」、円山西町入口から山頂までのルートは「動物園ルート」と呼ばれています。毎年5月が山開き、10月が山納めです。

円山は、大都市近郊とは思えない豊かな自然を保全しており、多くの市民がハイキングや動植物観察などを目的に訪れています。山頂からは、天候が良ければ札幌市街を一望できます。

周辺：豊かな自然と都市生活の共存

円山の周辺には、円山公園（円山動物園、円山球場、円山競技場を含む）、旭山記念公園、宮の森ジャンプ競技場、札幌市営地下鉄東西線円山公園駅などがあります。手稲山や藻岩山も比較的近い距離に位置しています。

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