北畠守親

北畠守親：南北朝時代の謎多き武将

北畠守親（きたばたけ もりちか）は、南北朝時代に南朝方として活躍した公卿であり武将です。右大臣北畠顕信の次男として生まれ、父の後を継いで陸奥国司に任じられましたが、その生涯には不明な点が多く、謎に包まれた人物として知られています。

奥州国司としての活動

守親が奥州国司に任じられた時期については、史料によって見解が分かれています。『桜雲記』や『七巻冊子』には正平10年/文和4年（1355年）とありますが、『相馬文書』などの検討から、実際には正平6年/観応2年（1351年）に父・顕信から国司の地位を引き継いだと考えられています。正平7年/観応3年（1352年）には宇津峰城にいたとされ、新田軍を支援するために奥州勢を率いて白河関まで南下しましたが、足利尊氏の命を受けた結城朝常に撃退され、南下作戦は失敗に終わりました。その後、父・顕信と共に宇津峰に帰還したとされています。

正平8年/文和2年（1353年）には、吉良貞家の攻撃により宇津峰城が陥落し、守親は宇津峰宮を奉じて顕信と共に、出羽地方へ逃れたと伝えられています。その後の守親の戦歴については、史料が乏しく不明な点が多いのが現状です。

その後の足跡

近世の俗書によれば、守親は正平13年/延文3年（1358年）または正平16年/延文6年（1361年）に敗北し、海路で南朝に帰参した後、大和宇陀郡に住み着いたとされています。官位は近衛中将や権中納言を経て、天授2年/永和2年（1376年）には大納言に任じられました。しかし、天授6年/康暦2年（1380年）に父・顕信の喪に服するため辞職したと伝えられています。

元中9年/明徳3年（1392年）の南北朝合一の際、後亀山天皇に供奉して入洛した南朝の廷臣の中に「土御門前大納言」という人物がいますが、『南山御出次第』によれば、この人物が守親である可能性も指摘されています。また、応永18年（1411年）の宇太水分神社の梵鐘銘には、寄進者の中に「源守親」の名が見られることから、当時守親が宇陀に存命していたという説もありますが、村田正志はこれを否定しています。

現在、守親に関する確実な史料は、『新葉和歌集』に収録された3首の和歌のみとなっています。

浪岡北畠氏との関わり

守親の子とされる親能（または弟の親統）は、戦禍を逃れて陸奥浪岡（現在の青森県青森市浪岡）に入部し、その子孫は川原御所に居住したと伝えられています。しかし、歴代城主が不明なこともあり、宗家である浪岡御所の系譜と混同され、識別が困難な状況です。近世には、長慶天皇の潜幸伝説と結び付けた解釈も生まれ、南部藩泉山家の記録によると、守親自身が建徳年間に浪岡に拠り、文中2年（1373年）には長慶上皇を浪岡城に迎え入れたとされています。

現在、川原御所跡の南東にある「さぎ森」には、守親の墓と伝えられる五輪塔が残っており、青森市の指定文化財となっています。

まとめ

北畠守親は、その生涯に多くの謎を残した人物です。南朝の武将として活躍しましたが、史料が少なく、その具体的な事績は不明な点が多いのが現状です。しかし、浪岡北畠氏の祖として、また歌人としてもその名を残しており、後世に様々な伝説を生み出しました。今後の研究により、守親の人物像がより鮮明になることが期待されます。

参考文献

大西源一『北畠氏の研究』鹿東文庫、1960年、NCID BA38692068
『須賀川市史 第2巻』須賀川市教育委員会、1973年、NCID BN02690594
久保田収『北畠父子と足利兄弟』皇學館大学出版部、1977年、NCID BN04866771
大友幸男『史料解読 奥羽南北朝史』三一書房、1996年、ISBN 9784380962745
浪岡町史編集委員会『浪岡町史 第2巻』浪岡町、2004年、NCID BA46143815

関連項目

宇津峰宮
霊山神社
北畠顕成

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