南九州国人一揆

南九州国人一揆とは

南九州国人一揆（みなみきゅうしゅうこくじんいっき）は、南北朝時代の1377年（天授3年/永和3年）に、九州探題の今川了俊と島津氏久の対立をきっかけに、薩摩、大隅、日向、肥後の4ヶ国の国人衆が結成した連合体です。この一揆は、当時の南九州における複雑な勢力争いを象徴する出来事として知られています。

一揆成立の背景

1371年、室町幕府は九州における南朝勢力を駆逐するため、今川了俊を九州探題として派遣しました。了俊は、中国地方の国人衆を率いて九州に上陸し、順調に南朝勢力を圧倒していきました。しかし、1375年に事態は急変します。了俊は肥後水島に陣を構え、筑前の少弐冬資、豊後の大友親世、大隅の島津氏久に参陣を呼びかけましたが、少弐冬資が来なかったため、島津氏久に促して冬資を水島に呼び寄せ、その場で暗殺しました（水島の変）。

この事件によって、島津氏久は南朝に寝返り、大友親世は中立の立場を取り、少弐冬資の弟である少弐頼澄も離反しました。征西府の菊池武朝らの反撃も重なり、了俊は水島からの撤退を余儀なくされました。その後、大内義弘の援軍を得て盛り返し、1377年1月に征西府軍を破り、菊池武朝を肥後に封じ込めましたが、島津氏久とその甥である島津伊久は依然として反抗を続けていました。

国人一揆の結成

このような状況下で、了俊は末子の今川満範を南九州に派遣し、国人衆の島津氏久からの離反を画策しました。1377年5月、了俊は伊集院氏や渋谷氏らに満範の下向を伝え、協力を要請しました。6月に満範は肥後の相良前頼を頼って人吉に入り、球磨郡の平定にあたり、8月には日向庄内を制圧し、相良前頼とともに禰寝氏や肝付氏などの国人衆に参陣を呼びかけました。そして、室町幕府から氏久と伊久の守護職解任と、了俊への守護職任命が伝えられると、9月には小山城を落とし、都之城を包囲しました。

ところが、9月になって氏久と伊久が了俊に降伏します。了俊は彼らに所領を安堵することを約束しましたが、了俊・満範父子に従った国人衆は、この問題に対応するため、10月28日に薩摩、大隅、日向、肥後の4ヶ国61人の国人たちが一揆契状に署名しました。この契状では、島津氏に対する防戦、一揆内部の所領争いの調停、本領や新領地での訴訟の際の一揆全体の訴えなどが定められました。特に、島津氏との和解に不満を持つ国人衆は、自分たちで防戦にあたることを決定しました。しかし、了俊は幕府への忠誠を強調し、所領問題で氏久に有利な裁定を下したため、国人衆の信頼を失い、島津氏久も一揆方の国人への調略を始め、両者の関係は緊張しました。

一揆の崩壊

1378年3月、了俊は氏久の不参陣を理由に決別し、大隅の国人に満範への参陣を促しました。満範は国人一揆と合流して都之城を再包囲しましたが、氏久も志布志城から出陣し、都之城の後詰に向かいました。1379年3月に行われた蓑原の合戦で、氏久と北郷義久らが勝利し、満範は大敗して都之城から撤退しました。満範はその後も一揆勢を率いて、1380年、1381年に南九州の掃討や都之城の包囲を試みましたが、いずれも失敗に終わりました。

1381年10月に氏久が再び了俊に帰順すると、一揆勢は危機感を募らせました。氏久は一揆勢の所領を侵略し始め、了俊は一揆勢の都合を無視して氏久との休戦や肥後八代への参戦を呼びかけたため、1385年には相良前頼が離反し、他の国人衆も離反して、国人一揆は事実上崩壊しました。

一揆のその後

1387年に島津氏久が亡くなり、後を継いだ島津元久も、了俊への帰順と離反を繰り返しながら幕府と直接交渉して日向守護職に任じられ、1394年の相良前頼の戦死、1395年の了俊の九州探題解任を経て、守護領国制を確立していきました。

南九州国人一揆は、南九州の国人衆が一時的に団結して戦ったものの、最終的には大名間の勢力争いに翻弄され、崩壊しました。しかし、この一揆は、当時の南九州における複雑な勢力関係を理解する上で重要な出来事であり、その後の歴史展開にも大きな影響を与えました。

もう一度検索