台湾鉄路管理局EMU700型電車

EMU700型電車について

EMU700型電車は、台湾鉄路管理局（台鉄）が運用する交流電車です。この車両は、台鉄が掲げる「RAMS」（信頼性、利便性、整備性、システム安全）に基づき、環境保護を考慮した初めての鉄道車両として導入されました。主に区間車と一部の区間快車に充当されています。

概要

EMU700型は、台湾高速鉄道700T型やTEMU1000型「太魯閣号」に続き、日本の技術を導入して製造された電車です。台湾の鉄道輸送量増加に対応するため、台鉄捷運化プロジェクトの一環として導入されました。最初の3編成は日本車輌製造で製造されましたが、4編成目からは技術移転を受け、台湾車輌で内製されました。

EMU700型は、台湾で初めて電装品を含めた完全内製化を達成した電車です。先頭車両のデザインは、従来の正面貫通型三枚窓から非貫通型一枚窓に変更され、運転室からの視界が向上しました。運転台にはTCMS（列車制御および監視システム）とATP用の2つの液晶画面が搭載されており、デジタル化されたシステムにより列車の状態を容易に把握できます。8両固定編成で運用されるため、正面非貫通型となっています。

初期の3編成の塗装は、正面が青と黒のツートンカラー、側面が銀色地に青と白の帯でしたが、台湾製の4編成目以降はオレンジ色が追加され、正面窓周りが銀色に変更されました。初期編成も順次この新塗装に変更されています。車内は、台北捷運と同様のセミクロスシートが採用され、モケットの材質も改善されました。側窓にはロールカーテンが設置され、客用ドア上部には車内案内表示器があります。

新竹機務段と嘉義機務段に配属され、性能試験を経て、東西幹線を跨ぐ区間快車として運行を開始しました。将来は、台湾全土の電化区間での運用が予定されています。

特色

EMU700型電車には、以下のような特徴があります。

LED式行先表示器・車内案内表示器: 台北捷運と同様のLED表示器が車両の正面、側面、車内の客用ドア上に設置されています。車内から操作できるため、従来の行先標のように終着駅で交換する必要がありません。

車内表示: 上段に中国語、下段に英語で3つの駅名が表示され、進行方向は矢印で示されます。次の停車駅は赤、その他は緑で表示され、駅に近づくと点滅します。到着すると「本站：○○（駅名）」と表示され、扉が開くと表示が移動します。また、30分ごとに現在時刻が表示されます。
車両正面・側面: 種別、路線、行先、行先の英語表記、列車番号が赤または緑で表示されます。
到着駅案内: 北京語、台湾語、客家語、英語の順で停車駅名を自動放送し、乗客に注意を促します。初期にはJR東日本の発車メロディーが車内チャイムとして使用されていましたが、後にオリジナルメロディーに変更されました。
ドアチャイム: ドアの開閉前に中国語と英語でアナウンスが流れ、チャイムが鳴ります。これにより、乗客が不意に開閉する扉に挟まれるのを防ぎます。
安全装置付きドア: 圧搾空気式のドアは素早く開閉でき、安全装置により挟み込み事故を防ぎます。
防音車体: 電装品と車体の防音処理により、走行中の騒音が低減されています。
車内照明: 車体両側近くに独立した灯具が設置され、台北捷運に似た配置となっています。空調吹出し口は照明の上方にあります。
緊急通話装置: 緊急時に運転室の乗務員と直接連絡できる装置が設置されており、迅速な対応が可能です。

ノンステップ改造

台鉄のノンステップ化事業により、2016年までに全編成の段差解消工事が完了しました。

運用

EMU700型は、新竹と嘉義の両機務段に配備され、160両（8両編成20本）が投入されました。これにより、台鉄の車両不足を解消し、通勤電車のサービス向上を図りました。また、東部幹線にも投入され、宜蘭地区の乗客回復を目指しました。

2010年12月のダイヤ改正により、基隆～苗栗間などで区間車が増発され、EMU700型の運用にも変更が生じました。以前は3xxx番台の列車番号の区間快車や区間車に充当されていましたが、現在は2xxx番台の区間車にも多く充当されています。ただし、縦貫線南段などでは例外的にEMU500型が使用されることもあります。

ダイヤ改正により、嘉義機務段の全車両が新竹機務段に転属し、運用体系が変更されました。現在は、西部幹線の基隆～屏東間と東部幹線の電化区間の区間車に充当されています。北廻線の蘇澳新～花蓮間での運用は、春節などの臨時ダイヤを除いて原則としてなくなりました。

編成

凡例:
VVVF: 主制御器（VVVFインバータ装置）
Rc: コンバータ装置
Mtr: 主変圧器
VCB: 真空遮断器
SIV: 静止形インバータ
CP: 電動空気圧縮機
備考:
8両固定編成ですが、Mc-T-T-Mの4両編成1ユニットが背中合わせに連結されています。

その他

先頭車両の連結器カバーの形状が、漫画「ドラえもん」の登場人物である骨川スネ夫の口に似ていることから、「スネ夫号」と呼ばれています。
台北捷運の車両に似ていることから、「台鉄の捷運」とも呼ばれています。
2007年12月に販売された駅弁の包装紙にこの車両の画像が使われたため、「スネ夫弁当」と呼ばれるようになりました。
樹林駅にはEMU700型をモデルにした駅弁販売店があります。
* 2016年には、京急電車仕様のラッピングが施された編成が登場しました。

脚注

台鉄ニュース（中国語）
知世的火車音樂盒 (知世の列車オルゴール)（中国語）
日車製品紹介

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