太魯閣号

太魯閣号（タロコごう）とは

太魯閣号は、台湾鉄路管理局（台鉄）が運行する特急「自強号」の愛称で、正式名称は「太魯閣自強号列車」です。公式には台湾鉄路管理局TEMU1000型電車を指します。台湾初の振り子式車両として導入され、その高速性と快適性から高い人気を誇っています。

運行の概要

運行当初は、振り子式車両特有の揺れに対する懸念がありましたが、運行開始後は快適性と速達性で利用者を魅了しています。台湾の鉄道網をより便利にする「台鉄捷運化」の推進に伴い、将来的には西部幹線への運用拡大も期待されています。

使用車両:

TEMU1000型振り子式電車が使用されています。この車両はJR九州の885系電車をベースにしており、日立製作所によって開発・製造されました。

運行区間:

彰化 - 台北 - 台東・知本間を結んでいます。

運賃:

自強号の運賃が適用されます。

座席:

全車指定席で、当日販売分を除き立席乗車はできません。ICカードや定期券での乗車も不可です。指定券なしで乗車した場合は、正規運賃に加え50%の追徴金が課せられます。2019年5月2日からは、1列車あたり120枚限定で当日販売の立席券が発売されるようになりました。

運行の歴史

- 2007年2月: 春節輸送時に、振り子装置をオフにした状態で台北 - 花蓮間で臨時列車として運行を開始。
- 2007年 5月8日: 正式に営業運転を開始（平日3往復、土休日4往復）。
- 2008年2月25日: 花蓮 - 台北 - 彰化間を4時間で結ぶ東西直通列車が増発。
- 2008年3月11日: 彰化駅発着列車が員林まで延長運転を開始。週42本体制に。その後、員林高架化工事の影響で田中駅まで暫定延長。
- 2008年 5月15日: 彰化 - 基隆間が新設され、花蓮直通系統も1日最大16本（週81本）に増発。
- 2014年: 雲林縣の要望を受け、斗六駅や寿豊駅まで運転区間が拡大。
- 現在はTEMU1000型電車の整備やTEMU2000型電車の導入により、普悠瑪号に置き換わる形で減便され、毎日4往復の体制となっています。
- 2015年 10月15日: 西部幹線から撤退し、東部幹線のみでの運用となる（普悠瑪号に置き換え）。
- 2016年 4月21日: ダイヤ改正により、3次車が定期列車に投入され、西部幹線彰化までの乗り入れが復活。
- 2016年 10月20日: ダイヤ改正により、台中線高架区間への乗り入れを中止し、西部幹線直通は海岸線経由となる。普悠瑪号と運用が入れ替わる。
- 2017年 4月27日: ダイヤ改正により、南港駅に停車する列車が増発。一部は普悠瑪自強号と運用が入れ替わり。

名称の由来

列車名称は、従来の自強、莒光、復興といった政治的な名称ではなく、一般公募によって選定されました。候補には「曙光/AURORA」、「飛魚/FLYING FISH EXPRESS」などがありましたが、2006年 1月17日に元培科技大学の学生が命名した「タロコ/TAROKO」が選ばれました。これは沿線の太魯閣国家公園にちなみ、中国語、台湾語、客家語だけでなく、英語や日本語でも発音しやすい点が評価されました。

しかし、台鉄は太魯閣号を独立した車両名称として認めず、「自強号太魯閣列車」として公表しました。時刻表には「自強号」と表記され、太魯閣号のマークのみが付きます。乗車券には「太魯閣 Taroko Exp」と記載されるものの、駅によっては「自強号」としか表示されない場合があります。日本製の車両ということもあり、日本人観光客にも知られていますが、有名な観光地である九份の最寄り駅である瑞芳駅を通過する列車が多いため、誤乗するケースが見られ、駅では日本語アナウンスが行われています。

JR九州885系電車との関連性

太魯閣号で使用されるTEMU1000型は、JR九州の885系「白いかもめ・ソニック」を基本としており、両車両とも日立製作所によって開発・製造されました。太魯閣号は、導入区間である台北 - 花蓮間の所要時間を約3割短縮しました。

北廻線太魯閣号脱線事故

2021年4月2日、樹林駅から台東駅に向かう列車が、和仁駅と崇徳駅間の清水トンネル付近で脱線事故を起こし、54人が死亡、146人が重軽傷を負いました。この事故は「過去50年で最悪の事故」と報じられました。