史敬思

史敬思（し けいし）は、唐末の動乱期に活躍した武将です。生没年は不明ですが、884年に戦死したことが記録されています。代州雁門県（現在の山西省）出身で、その武勇は当時から広く知られていました。民間伝承や小説『残唐五代史演義』では、李克用の義子となり、配下の精鋭部隊「十三太保」の一人として描かれています。

生涯

史敬思は、当初唐軍に仕え、牙校（軍の役職）を務めていました。その勇猛さは諸軍の中でも際立っており、武人としての才能を早くから発揮していました。李克用が雁門節度使に任じられると、史敬思は李克用に付き従い、九府都督という要職に就きました。李克用と共に都（長安）を平定する戦いで頭角を現し、その武名はさらに高まりました。

中和4年（884年）、黄巣の乱が激化する中、史敬思は李克用の先鋒として、陳州（現在の河南省淮陽県）・許州（現在の河南省許昌市）の救援に派遣されました。黄巣軍との激戦を制し、汴州（現在の河南省開封市）で黄巣軍を打ち破り、さらに徐州（現在の江蘇省徐州市）・兗州（現在の山東省済寧市）まで追撃しました。この一連の戦いでの活躍は、史敬思の武将としての卓越した能力を示すものでした。

同年6月、史敬思は李克用に従って汴州に入りました。そこで、節度使である朱全忠が主催する盛大な宴会に招待されました。しかし、その夜、朱全忠は自軍の兵を率いて李克用を奇襲しました。この時、史敬思はすぐに事態を察知し、弓を手に取ると、ただちに応戦しました。彼は、優れた弓術で数百人の敵兵を射殺し、李克用を護衛しつつ包囲網を突破しました。

激しい雷雨の中、李克用とともに汴橋（汴州にかかる橋）に向かい、李克用はなんとか逃走に成功しました。しかし、史敬思は奮戦むなしく、この戦いで戦死しました。李克用は、この報を聞くと、深い悲しみに暮れ、涙を流し続けたと伝えられています。この事件をきっかけに、李克用と朱全忠は不倶戴天の仇敵同士となり、後の五代の歴史における重要な対立軸となっていきます。

史敬思の息子である史建瑭（し けんとう）は、後唐の名将としてその名を歴史に刻みました。父の遺志を継ぎ、数々の戦で活躍し、後唐の建国に大きく貢献しました。

伝記資料

史敬思に関する記録は、主に以下の史書に見られます。

『新五代史』
『旧五代史』
『資治通鑑』

これらの史書は、史敬思の武勇と李克用との関係、そして彼の壮絶な最期を詳細に伝えています。

登場作品

史敬思は、その人気から、様々な創作作品にも登場しています。代表的なものとしては、以下の映画作品があります。

英雄十三傑（1970年、演：ティ・ロン）

この映画では、史敬思は義兄弟である李克用を支える武将として描かれ、彼の勇猛さと忠義心が際立っています。

史敬思は、唐末の混乱期を駆け抜けた勇将であり、その武勇と忠義心は、後世に語り継がれるべき人物です。彼の生涯は、戦乱の時代を生き抜く武将の姿を鮮明に描き出し、私たちに多くの教訓を与えてくれます。

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