新五代史

新五代史

『新五代史』は、北宋の文人であり政治家でもあった欧陽脩によって編纂された歴史書です。当初は『五代史記』という名で、1053年に完成しました。この書は、五代十国時代の歴史を扱っており、その範囲は後梁の開平元年（907年）から後周の顕徳7年（960年）までです。

書の成立と特徴

『新五代史』は、欧陽脩が私的に編纂したものであり、完成後には朝廷に献上されました。その後、清の乾隆帝の時代に、薛居正が編纂した『旧五代史』とともに正史に列せられ、その際に『新五代史』と改名されました。

構成は、本紀12巻、列伝45巻、考3巻、世家及年譜11巻、四夷附録3巻の合計74巻からなります。この構成からもわかるように、単なる王朝の興亡史だけでなく、周辺の異民族の動向や制度についても詳細な記述が含まれています。

記述内容

本紀

本紀は、各王朝の皇帝の事績を中心に記述されています。

梁本紀（太祖、末帝）
唐本紀（荘宗、明宗、閔帝、廃帝）
晋本紀（高祖、出帝）
漢本紀（高祖、隠帝）
周本紀（太祖、世宗、恭帝）

列伝

列伝は、各王朝の功臣や重要人物、また特殊な人物の伝記を収録しています。

梁、唐、晋、漢、周の皇族の伝記
各王朝の功臣の伝記
節義を貫いた人物の伝記
一行伝（特定の分野で才能を発揮した人物の伝記）
宦官、伶官の伝記
地方勢力や異民族の伝記

考

考は、天文学、地理、官制に関する記述です。

司天考（天文）
職方考（地理）

世家

世家は、五代十国時代の各国の歴史を扱っています。

呉、南唐、前蜀、後蜀、南漢、楚、呉越、閩、南平（荊南）、北漢

附録

附録は、周辺の異民族についての記述です。

契丹
奚、吐渾、達靼、党項、突厥、吐蕃、回鶻、于闐、高麗、渤海、新羅、黒水靺鞨、南詔蛮、牂牁蛮、昆明、占城

歴史的評価

歴史学的な評価として、杉山正明氏の研究によれば、『新五代史』には事実誤認が多く、欧陽脩の主観的な解釈が強く反映されていると指摘されています。司馬光の『資治通鑑』のような明らかな嘘はないものの、創作的な記述も含まれているため、『旧五代史』に比べて良質な史料とは言えないという見解もあります。また、山崎覚士氏からは、本来五代王朝の節度使に過ぎない荊南節度使を、あたかも別の国家であるかのように「十国」に含めたのは、欧陽脩個人の史観に過ぎないとする指摘があります。

このように、『新五代史』は、五代十国時代の歴史を研究する上で重要な史料ではありますが、その記述内容を鵜呑みにせず、他の史料と照らし合わせながら慎重に検証する必要があります。現代の歴史研究では、複数の史料を総合的に分析することで、より正確な歴史像の解明を目指しています。

関連資料

十国春秋
九国志

外部リンク

* 《新五代史》全文: （外部サイトへのリンク）

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