史格

史格（し かく）

史格（生没年不詳）は、モンゴル帝国に仕えた漢人軍閥の一人であり、字は晋明。析津府永清県の出身です。

概要

史格は、モンゴル帝国に仕えた有力な漢人世侯である史天沢の長男として知られています。

モンゴル国アルハンガイ県イフタミル郡で発見された漢文の墨書には「丁酉歳秋八月□　到此　真定史格」と記されており、この「丁酉歳」は1237年に当たると考えられています。このことから、史格が10代の頃にモンゴル高原を訪れていたことがわかります。同時期の漢人世侯である董文炳は、領主ソルコクタニ・ベキが優秀な子弟を仕えさせるよう要求したため、弟の董文用をカラコルムに派遣したという記録があります。史格も同様の理由で、質子（トルカク）としてモンゴル高原に派遣されたと考えられます。ソルコクタニ（トルイ家）の本拠地はハンガイ山脈地方にあったと推定されており、史格の墨書がアルハンガイ県で発見されたことは、この推測を裏付けるものです。

1252年（壬子）、モンケ・カアンが史天沢に衛城を賜った際、史格は節度使の地位を授けられており、この頃にはモンゴル高原から漢地に戻っていたと考えられます。モンケ・カアンの死後、クビライとアリクブケの間で帝位継承戦争が勃発すると、史天沢はクビライを支持しましたが、史格はアリクブケと行動を共にし、ケムケムジュート（謙謙州）に逃れました。内戦から5年後の1264年、アリクブケが投降すると、史格も父の下に戻り、許されて鄧州の旧軍万戸を率いるよう命じられました。史格がアリクブケと行動を共にしたのは、長年トルイ家のオルドに仕え、アリクブケと友好関係を築いていたためではないかと考えられています。

クビライに帰参した後、史格は史天沢と共に南宋侵攻に携わりました。襄陽・樊城の戦いを経て南宋領への侵攻が始まると、司令官の一人であるアジュは25万の軍勢を5万ごとに分け、史格はそのうちの一つの軍団を指揮する将に抜擢されました。史格が先鋒として長江を渡る際、南宋の将・程鵬飛がこれを阻もうとし、史格自身も3箇所の傷を負い、200の兵を失う激戦となりましたが、最終的には程鵬飛を敗走させることに成功しました。しかし、枢密院は史格が軽率に進軍したことで損害を出したことを問題視し、処罰しようとしましたが、クビライは史格の功績を考慮して罪を軽くしました。その後、平章のエリク・カヤに従って潭州陥落に貢献しました。

首都臨安の陥落により南宋は事実上滅亡しましたが、陳宜中・張世傑らは益王趙昰（後の端宗）・広王趙昺（後の祥興帝）を擁して福州に逃れ、南宋の復興を目指しました。史格はこれを追って広東・広西方面に侵攻し、蘇仲の討伐などで功績を挙げました。

南宋朝廷の残党は、端宗の死後、祥興帝を立てて広州に近い崖山を拠点としました。張世傑らは雷州半島を支配するため雷州城を包囲しましたが、史格が欽州・廉州・高州・化州から雷州へ糧食を輸送したため、包囲を解いて撤退しました。この功績により、史格は雷州に駐屯するよう命じられましたが、崖山の戦いによって南宋残党が壊滅すると、史格は鄧州の旧軍に帰還しました。その後、参知政事・行広南西道宣慰使、資徳大夫・湖広行中書省右丞、江西右丞、湖広右丞、平章政事を歴任した後、58歳で亡くなりました。

息子には福建行省平章政事となった史燿と、鄧州旧軍万戸となった史栄がいます。

真定史氏

脚注

参考文献

松田孝一「モンゴル国発見の史格の墨書について」『13、14世紀東アジア史料通信』第21号、2013年
『元史』巻147列伝34史天倪伝
『新元史』巻138列伝35史枢伝
『蒙兀児史記』巻54列伝36史枢伝

もう一度検索