吉祥草寺

吉祥草寺:伝統と革新が息づく古刹



奈良県御所市茅原に位置する吉祥草寺は、本山修験宗の寺院であり、茅原山金剛寿院とも称されます。この寺は、修験道の開祖である役行者(役小角)の生誕地と伝えられ、別名「役行者御誕生所」としても知られています。近年では、世界で初めて萌えキャラクターを信仰対象として祀るという画期的な試みが行われ、大きな話題を呼んでいます。

歴史と変遷



吉祥草寺は、役行者によって開基され、舒明天皇により創建されたと伝えられています。平安時代には理源大師によって再建され、東西4キロ、南北5キロに及ぶ広大な境内に49もの寺院を擁し、隆盛を極めました。しかし、南北朝時代の兵火によって伽藍を焼失し、衰退を余儀なくされました。現在の本堂は応永年間(1394年-1428年)頃に再建されたもので、外陣の護摩札には寛文5年(1665年)の墨書が見られることから、この頃に改築されたと考えられています。

役行者の生誕地



役小角は、634年にこの地で生まれ、若くして大和葛城山で修行を重ねました。その後、大峰山で厳しい修行を積み、通力を得て各地の山々を開いたとされます。その功績から、天智天皇より天下泰平の祈願を託され、また悪病や天災が起こると大法要を行い、世の平和を取り戻したことから、「役の行者」として広く人々の信仰を集めました。

伝統行事



吉祥草寺では、毎年1月14日に「左義長(大トンド)法要」が、11月第2日曜日には「御所まち霜月祭」(採燈大護摩供)が盛大に執り行われます。

左義長(大トンド)法要



1200年以上の歴史を持つ左義長は、全国的にも最も荘厳な行事の一つです。境内には、雄と雌の大松明が一日がかりで制作され、本堂の法灯から移された火で点火されます。燃え盛る炎は、五穀豊穣、厄除け、修験道の悪霊払いを祈願するもので、境内一帯を白夜のように明るく照らし、見る者を圧倒します。この行事は、1978年(昭和53年)に国の「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選定されました。

奥田の蓮取り行事



毎年7月7日の七夕には、役行者が産湯を使ったとされる大和高田市奥田の捨篠池で、「奥田の蓮取り行事」が行われます。村人が蓮取り舟に乗り、蓮を切り採り、それを吉野金峯山寺に供える「蓮華会」が執り行われます。この行事には、「一つ目蛙の伝説」に由来する「蛙飛び行事」も含まれます。修験者たちは蓮を捧げ、蔵王堂での「蓮華会」と「蛙飛び行事」に参加した後、大峰山頂上の祠に蓮を供えます。2000年(平成12年)には、奥田はす池公園に民話伝承碑が建立され、現在も蓮花畑が維持されています。

地蔵堂(笠堂)伝説



役行者が葛木山への修行の途中で、農民が雨で困っていたところ、自ら田に入り田植えを手伝ったところ、不思議と風雨が止み、夕方までに田植えが終わったという伝説があります。その徳を慕い、行者が笠を脱いだ場所に地蔵[[菩薩]]を安置する堂宇が建てられ、笠堂と称されるようになりました。また、1590年頃に笠堂を修復した際、明智光秀の娘が供養に訪れたという伝説もあります。現在でも、婚礼の花嫁が笠堂の前を通る際には目隠しをする風習が残っています。二上山雌岳から大阪へ続く岩屋道の途中にある「傘堂」も、笠堂と同形状の堂宇であり、本多正勝の影堂として建立され、奈良県有形民俗文化財に指定されています。

萌えキャラクターの公認と信仰化



吉祥草寺は、2017年1月17日役小角奈と役追儺という2人の萌えキャラクター役小角の子孫として公認しました。本堂には、それぞれの特大アクリルフィギュアや等身大パネル、幟が設置されています。同年10月24日には役小角奈、11月12日には役追儺の特大アクリルフィギュアが入魂の儀を経て仏像となり、本山修験宗総本山の聖護院門跡から山伏を招き、不動[[明王]]のもとで修行する菩薩として祀られることになりました。これにより、本尊の五大尊や役行者と並び、小角奈と追儺の御朱印も授与されています。2018年には、小角奈と追儺の入魂一周年を記念する「小角奈祭」が開催され、同年の御所まち霜月祭では、住職の次女が小角奈に扮し、100人の山伏を率いて練り歩きました。

境内



吉祥草寺の境内には、以下のような見どころがあります。

本堂:本尊は五大尊(不動[[明王]]、降三世明王、軍荼利明王大威徳[[明王]]、金剛夜叉明王)。五大[[明王]]と役行者のご利益は、安堵を得る、希望を得る、勇気を得る、元気を得る、開拓心を得るとされています。薬師如来立像、地蔵[[菩薩]]立像、愛染[[明王]]坐像も安置されています。
開山堂:役行者倚像・前後鬼坐像(木造)、役行者母公坐像(木造)が祀られています。
観音堂千手観音立像、阿弥陀如来像、弘法大師像が安置されています。
行者会館:役行者尊が祀られており、お写経道場としても利用されています。
熊野権現:鎮守社であり、伊弉那美命、速玉男命、大事忍男が祀られています。
産湯の井戸:役行者が生まれた際に香精童子が灌浴させたという井戸。
役行者腰け石:役行者が修行の合間に腰掛けて精修行をしたとされる石。
白龍大のご:家内和合と金運の守護が宿るご木。
福裕弁財天:学芸、美容、財運に霊験があるとされる弁財天
役行者千三百年記念碑:役行者の1300年忌を記念して建てられた碑。
葛城三十八景漢詩碑:葛城の名所を詠んだ漢詩が刻まれた碑。
佐藤又一寿像:薬の発祥の地である佐藤薬品工の創者、佐藤又一の像。

文化財



銅製鰐口応永7年(1400年)の銘がある。
三宝の画軸:室町時代の作品で、役行者が感得したとされる遺品。

歳時記



吉祥草寺では、年間を通して様々な行事が行われています。

1月14日:左義長法要(大トンド)
2月3日:星祭り厄除け法要
5月7日:役行者報恩 大般若祈祷法要
11月第2日曜日:採燈大護摩供(御所まち霜月祭)
奇数月甲子日:三面大黒天法要
毎月7日:堂内護摩法要(役行者護摩供)
毎月28日:堂内護摩法要(不動[[明王]]護摩供・五大[[明王]]護摩供)
毎月第3日曜日:写経の会
7月7日:奥田の蓮取り行事

公認・公式キャラクター



役ちゃん(えんちゃん):役行者のゆるキャラ。
役小角奈(えんのおづな):吉祥草寺公式の63代目役行者。本尊の不動[[明王]]のもとで修行する菩薩として扱われます。
ついなちゃん(役ついな、役追儺役小角の末裔である方相氏。吉祥草寺では不動[[明王]]のもとで修行する菩薩として扱われます。

その他



ボイスドラマ『鬼っ子ハンターついなちゃん』の第27話に吉祥草寺が登場し、ついなちゃんの修行の様子が描かれています。また、吉祥草寺公式キャラクター役小角奈」のPRアニメ『不動[[明王]]小呪』も制作されています。

吉祥草寺は、歴史と伝統を守りながらも、新しい試みに挑戦する寺院として、多くの人々に親しまれています。ぜひ一度、訪れてみてはいかがでしょうか。

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