周防国分寺

周防国分寺

周防国分寺は、山口県防府市にある高野山真言宗の寺院で、山号を浄瑠璃山と称します。奈良時代に聖武天皇の詔によって全国に建立された国分寺の一つであり、周防国の国分僧寺として重要な役割を果たしました。旧境内は国の史跡に指定されており、古代寺院の姿を今に伝える貴重な場所です。

概要

周防国分寺は、防府平野東部の多々良山南麓に位置し、古代の寺域をほぼそのまま残しています。西大寺との関係が深く、大内氏や毛利氏といった有力な守護大名からの手厚い保護を受けてきました。そのため、創建当初から現在に至るまで、寺域の規模が変わらず維持されている点が大きな特徴です。特に、創建期の金堂を踏襲して建てられた大規模な金堂は、全国の国分寺の中でも特筆すべき存在です。また、寺の門前には近世山陽道が通り、周辺には周防国衙跡があることから、古くから政治的、文化的な中心地であったことがわかります。

寺の旧境内は、昭和28年から30年にかけて発掘調査が行われ、その後、国の史跡に指定されました。発掘調査により、寺域の大枠は明らかになったものの、主要伽藍についてはまだ解明されていない部分も多く残されています。寺には、阿弥陀如来坐像、日光月光菩薩立像、四天王立像、薬師如来坐像、紺紙金泥般若心経など、数多くの重要文化財が伝えられています。

歴史

古代

創建時期は正確には不明ですが、天平13年（741年）の国分寺建立の詔の後に創建されたと考えられています。『防州国分寺記録』によると、天平19年（747年）に伽藍や僧房が完成したとされていますが、その根拠は明確ではありません。天平勝宝8歳（756年）には、周防国を含む26ヶ国の国分寺に灌頂幡などが下賜されており、この頃までには寺院が完成していたと推測されています。

中世

鎌倉時代初頭には、周防国は造東大寺料国となり、重源が周防国に下向して松崎天満宮（防府天満宮）や玉祖神社の造替を行っています。このことから、周防国分寺も重源の庇護を受けたと見られています。鎌倉時代後期には、長門国分寺と同様に西大寺に寄進され、その末寺となりました。正中2年（1325年）には、周防国目代の覚恵によって周防国分二寺が復興されています。

南北朝時代には、後醍醐天皇の建武の新政において、諸国一宮、二宮、国分寺の興行が企てられ、周防国分寺は恒良親王の立太子式の費用の一部を献上したことで、諸国国分寺の首座に置かれたと伝えられています。

室町時代には、東大寺の支配下にあった国衙、本寺である西大寺、そして守護大名の大内氏から庇護を受けました。応永24年（1417年）には伽藍が全焼しましたが、4年後の応永28年（1421年）には大内盛見によって再建されています。この頃に、現在の本尊である薬師如来坐像が制作されたと推測されています。大内氏の庇護の下、周防国分寺は寺領として756石余を与えられ、大内氏に代わって周防国の領主となった毛利氏からも庇護を受けました。

近世

江戸時代後期には、長州藩主の毛利重就によって仁王門が改修され（実際には再建である可能性が高い）、現在の金堂も再建されました。近世には安楽寺（宝寿院）、禅光院、地蔵院、宝幢院、禅悦院、蔵之坊などの塔頭がありましたが、現在はすべて廃寺となっています。

近代以降

昭和28年から30年にかけて発掘調査が行われ、古代の主要伽藍が確認されました。昭和32年には旧境内が国の史跡に指定されています。その後も発掘調査や金堂の保存修理が行われ、その歴史がより詳細に解明されています。

境内

現在の主要伽藍には、金堂、持仏堂（客殿）、聖天堂、仁王門などがあります。特に金堂は、創建当初の金堂跡に再建されたもので、寺地のほぼ中央に南面して建っています。金堂は、毛利重就によって安永4年（1775年）に着工され、安永8年（1779年）または安永9年（1780年）に上棟、天明8年（1788年）頃に完成しました。

金堂は、桁行七間、梁間四間の二重入母屋造で、屋根は本瓦葺です。内部は、中央の内陣に本尊の薬師如来坐像、日光月光菩薩像、四天王立像などが安置されています。金堂は創建期の基壇上に礎石を再利用して再建されており、その古式の様式が評価され、国の重要文化財に指定されています。

仁王門は、寺地の南正面に位置し、金堂と共に伽藍の中軸線上にあります。応永24年（1417年）の焼失後、文禄5年（1596年）に毛利輝元が再建し、明和4年（1767年）に毛利重就が大改修したと伝えられています。三間一戸の重層入母屋造で、屋根は本瓦葺です。下層の左右には仁王像が安置されており、その威容から山口県指定有形文化財に指定されています。

旧境内

古代の旧境内の寺域は、南北約2町、東西約1町10間とされ、創建当初から現在までほぼ同じ規模を維持しています。発掘調査により、金堂、塔、回廊、中門、南門、裏門の遺構が検出・推定されましたが、伽藍の中枢についてはまだ不明な点が多いです。特に、中門や回廊の存在については疑問視する見解もあります。

金堂

現在の金堂と重複する位置にあり、基壇上建物は桁行24.9メートル、梁間13.2メートルを測ります。創建期の礎石は再利用されています。中世期の金堂は、古代のものより一回り小さい規模でした。

塔

経典を納めた塔で、貞治2年（1363年）の仏舎利寄進状には五重塔が存在したことが記されています。発掘調査により、基壇上建物は一辺7.88メートルの五重塔と推定されています。

また、金堂の西側からは掘立柱建物が発見されており、食堂や僧房、工房であった可能性が指摘されています。

1966年（昭和41年）には石田茂作によって、寺域が2町四方の正方形から長方形に縮小され、伽藍も東に移されたという説が唱えられましたが、その後の発掘調査で否定されています。

寺域からは多量の瓦が出土しており、創建期のセットも抽出されていますが、未だ平安、中世、近世を通した寺の全貌解明には至っていません。

周防国分尼寺跡

尼寺跡の正確な所在地は不明ですが、国分寺の西隣の地域とする説が有力です。尼寺は僧寺と同様に正中2年（1325年）に再興されましたが、元禄年間（1688-1704年）以降に廃絶しています。

明治16年（1883年）には、国分寺の北にある塔頭の地蔵院の地に再興され、現在は高野山真言宗の浄戒山法花寺となっています。

文化財

周防国分寺には、多くの文化財が伝わっています。

重要文化財（国指定）

国分寺金堂（附 旧風鐸1個、旧獅子口1個）：江戸時代後期に建てられた建造物。
木造阿弥陀如来坐像：平安時代後期の作。
木造日光菩薩立像・木造月光菩薩立像：平安時代後期の作。
木造四天王立像：平安時代後期の作。
木造薬師如来坐像（附 木造仏手1箇）：室町時代の作。本尊。附指定の仏手は平安時代の作。
紺紙金泥般若心経 後奈良院宸翰（附 光豊寄進状1通）：室町時代の作。

国の史跡

周防国分寺旧境内：昭和32年7月10日指定。

山口県指定文化財

周防国分寺楼門：昭和41年6月10日指定。
絹本着色熊野本地仏曼荼羅図（附 納箱）：2003年12月19日指定。
絹本着色仏涅槃図：2018年3月2日指定。
木造阿弥陀如来立像：昭和41年6月10日指定。
金銅毘盧舎那仏坐像（寺伝大日如来像）：山口県立美術館寄託。
金銅誕生釈迦仏立像：1989年3月28日指定。
周防国分寺文書：昭和53年3月31日指定、1990年3月30日追加指定。

防府市指定文化財

麻布着色地蔵十王図：1999年8月6日指定。
木造不動明王立像：1968年3月28日指定。
木造毘沙門天立像：1971年3月27日指定。

現地情報

所在地

山口県防府市国分寺町2-67

交通アクセス

JR山陽本線防府駅から防長バス（阿弥陀寺行）で「国分寺」下車、徒歩約2分。

周辺

周防国衙跡（国の史跡）
防府天満宮
佐波神社（周防国総社）
毛利邸（毛利氏庭園：国の名勝）、毛利博物館

脚注

周防国分寺パンフレット
境内説明板
地方自治体発行の資料
事典類
その他参考文献

外部リンク

周防国分寺 - 公式サイト
周防国分寺 - 防府市ホームページ

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