品川氏

品川氏：多様な系統を持つ一族の歴史

品川氏（しながわし、しながわうじ）は、日本各地に様々な系統が存在する氏族です。それぞれの系統が独自の歴史を刻み、異なる立場で活躍しました。ここでは、主な品川氏の系統について解説します。

紀氏品川氏

紀氏長谷雄流の品川氏は、鎌倉時代から室町時代にかけて武蔵国荏原郡品川郷を中心に活動した武家です。品河氏とも表記されます。祖は紀実直の子である品川清実です。

発祥

平安時代末期、紀実直が国衙の関係者として武蔵国に土着し、荏原郡大井郷から大井氏を称しました。大井氏は次男の大井実春が継ぎ、一族は周辺地域に所領を広げました。実直の子から分かれた一族には、品川氏のほかに春日部氏、堤氏、潮田氏があります。

1184年（元暦元年）8月、実直の三男・清実は源頼朝から品川郷の雑公事を免除されています。この文書が「品川」の地名が登場する現存最古の史料です。1185年（文治元年）2月、清実は源範頼の下で豊後上陸に関わる水軍の「先登」に選ばれました。その後も品川氏は、大井氏と共に頼朝の「随兵」に選ばれるなど厚遇されました。

品川氏の重要な役割として、武蔵国の国府津である品川湊の管理が挙げられます。紀氏は伊勢国との関係が深く、品川氏の所領は伊勢国員弁郡曾原御厨にもありました。1242年（仁治3年）頃には伊豆国の田代氏と婚姻関係があったことが記録されており、品川氏は伊勢から品川までの太平洋航路にも関わっていたと考えられます。

品川氏の館の所在地については、貴船神社（品川区西品川3丁目）周辺の台地上が有力とされています。ほかに現在の戸越公園（品川区豊町2丁目）とする説もあります。

拡散と衰退

品川氏は陸奥国長世保弘長郷、和泉国草部郷にも所領を持っていました。1221年（承久3年）の承久の乱における「宇治川の合戦」での戦功により、近江国三宅郷が与えられました。その後、紀伊国粉河寺領丹生屋村も所領となりました。丹生屋村は、高野山領名手荘との相論が有名で、品川氏も一方の当事者として争いに巻き込まれました。中国地方では出雲国に大原郡広田庄の地頭職として赴任して行き、戦国時代の品川大膳に繋がるとの説があります。また安芸国にも所領があったという説があります。これらは戦乱や相続によって逸散したようですが、一族は西遷して行ったようでもあります。

1424年（応永31年）、鎌倉公方足利持氏によって品川氏はわずかに館とその周辺のみを残し、品川郷を没収されました。これには、品川氏が上杉禅秀の乱に関与したためという説があります。以後史料において品川氏の宗家の姿は見られず、没落したものと思われます。

安芸品川氏

安芸国の守護大名である安芸武田氏に仕えた一族です。鎌倉時代、武田氏の庶流である品川信民が安芸国可部荘（広島県安佐南区）の地頭職として赴任したのが始まりとされます。品河氏ともいう。『応仁武鑑』によれば伴氏と共に安芸武田氏の城代家老を務め、代々品川左京亮を名乗り重臣として活動しました。

安芸武田氏滅亡後は毛利氏に仕え、その後は長州藩士として続きました。萩藩閥閲録によれば長州藩の典医であり、こちらも当主は代々品川左京亮を名乗りました。

品川弥二郎の家系は分家して阿武郡萩の松本村へ移住した家系です。また、安芸品川氏として第二次月山富田城の戦いに山中幸盛との一騎討ちをした品川将員がいます。

旗本品川家

旗本の品川家は、江戸幕府の高家を務めた家系のひとつです。駿河の戦国大名であった今川氏から分かれた家であり、今川氏真の次男・品川高久を家祖とします。

初代の高久は慶長3年（1598年）に徳川秀忠に御目見し、慶長6年（1601年）に1000石を給されました。「今川の名字は嫡流のみ」という由緒を重んじた秀忠から名字を改めることを命じられ、高久は屋敷のある品川の地名を名字としました。以後、品川家は今川宗家とともに江戸幕府の下で高家旗本として続き、2代高如・3代伊氏・11代氏繁が高家職に就きました。

加賀藩士品川家

加賀藩士の品川家は、花山源氏の白川伯王家第21代当主・白川雅陳王の三男である品川雅直を始祖とします。雅直は加賀藩3代藩主・前田利常に仕えて重用され、利常が没すると殉死を遂げました。その子孫は代々加賀藩に仕え、人持組（重臣）のひとつとして3000石を給されました。

このように、品川氏は様々な系統が存在し、それぞれの歴史と役割を果たしてきました。

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