四駿四狗

四駿四狗：チンギス・カンの8人の英雄

「四駿四狗（ししゅんしく）」とは、モンゴル帝国の創始者チンギス・カンに仕え、その治世を支えた8人の最も信頼できる側近たちのことです。『元朝秘史』において、彼らは「4頭の駿馬・4匹の狗」（dörben külü'üd, dörben noγas）と讃えられました。彼らは、チンギス・カンのモンゴル帝国建設において、軍事、政治、外交など多岐にわたる分野で重要な役割を果たしました。

4頭の駿馬

ムカリ
ジャライル部出身。チンギス・カンの統一事業に貢献し、左翼万人隊長に任命されました。金朝遠征後、中国攻略を任され、後の大元ウルスにおける有力貴族の祖となりました。

ボオルチュ
アルラト部出身。チンギス・カンの最初の側近の一人であり、右翼万人隊長として中央アジア方面を担当。金やホラズム遠征にも従軍しました。

チラウン
スルドス部出身。父ソルカン・シラと共にチンギス・カンに仕え、数々の戦役で功績を挙げましたが、早くに亡くなりました。

ボロクル
フーシン部出身。幼少期からチンギス・カンの母に育てられ、若くして戦功を重ねましたが、トマト部討伐で戦死しました。

4匹の狗

ジェベ
ベスト部出身。元は敵対勢力に属していましたが、チンギス・カンに投降後、その才能を発揮。先鋒として多くの戦いで勝利し、西遼のクチュルク討伐やホラズム・シャー追撃など、広範囲にわたる遠征で活躍しました。

ジェルメ
ウリャンカイ部出身。チンギス・カンの側近として早くから仕え、献身的な態度で信頼を得ました。

スブタイ
ウリャンカイ部出身。ジェルメの弟であり、兄に続いてチンギス・カンに仕え、数々の戦功を挙げました。ホラズム遠征やバトゥのヨーロッパ遠征にも参加し、その名を Europa に轟かせました。

クビライ
バルラス部出身。モンゴル統一に貢献し、カルルク討伐やオアシス諸国の帰順に尽力しました。大元ウルスの創始者クビライ・カアンとは同名異人です。

四駿四狗の家系

四駿四狗の家系はモンゴル帝国の拡大とともに繁栄し、その子孫たちは帝国の要職を歴任しました。

ジャライル部国王ムカリ家
アルラト部広平王ボオルチュ家
スルドス部ソルカン・シラ家
フーシン部ボロクル家
ベスト部ジェベ一族
ウリヤンカン部ジェルメ/スブタイ家

彼らの家系は、モンゴル帝国の政治、軍事、文化に大きな影響を与え、その遺産は今日にも受け継がれています。

まとめ

四駿四狗は、チンギス・カンの下でモンゴル帝国の建設と拡大に大きく貢献した8人の英雄です。彼らの忠誠心、勇気、そして卓越した能力は、モンゴル帝国の成功に不可欠であり、その名は歴史に刻まれています。

参考文献

志茂碩敏『モンゴル帝国史研究 正篇』東京大学出版会、2013年
村上正二訳注『モンゴル秘史 1巻』平凡社、1970年
村上正二訳注『モンゴル秘史 2巻』平凡社、1972年
村上正二訳注『モンゴル秘史 3巻』平凡社、1976年

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