国場幸太郎

国場 幸太郎（こくば こうたろう、1900年12月19日 - 1988年8月2日）は、沖縄県出身の著名な実業家です。昭和時代に沖縄経済の発展に大きく貢献し、建設会社である國場組を設立しました。彼は、具志堅宗精、宮城仁四郎、大城鎌吉とともに「沖縄財界四天王」と呼ばれ、そのリーダーシップと事業手腕は高く評価されています。

なお、沖縄人民党に所属し、伊佐浜土地闘争などで活動した同姓同名の国場幸太郎氏（1927年-2008年）とは、血縁関係のない別人です。

生い立ちとキャリアの出発

国場幸太郎は、沖縄県国頭郡国頭村に国場幸直・ツル夫妻の長男として誕生しました。高等小学校を卒業後、わずか12歳で大工見習いとして働き始め、17歳という若さで既に棟梁としての腕を認められました。20歳を迎える頃、彼は宮古島に渡り、城辺村（現在の宮古島市）にある福嶺小学校の校舎再建工事を請け負いました。これが、彼にとって最初の請負事業となりました。

その後、兵役で2年間を熊本工兵隊で過ごし、1923年に除隊。同年、未曽有の復興需要に沸いていた東京へと上京しました。彼は安藤組、鹿島組、大林組といった大手建設会社で働き、建設技術と事業運営に関する貴重な経験を積みました。

國場組の創立と拡大

1931年7月2日、国場幸太郎は弟の国場幸吉、幸裕とともに、郷里である沖縄県で國場組を創立しました。当初は、旧日本軍が沖縄に建設する基地関連工事を主として受注しました。特に、小禄飛行場（現在の那覇空港）や読谷飛行場の建設を手がけたことは、その後の事業拡大の大きな足がかりとなりました。この成功を基盤に、嘉手納飛行場、伊江島飛行場、西原飛行場、城間飛行場など、沖縄における主要な飛行場建設工事の大部分に関与し、その地位を確固たるものにしました。

戦後復興と事業の多角化

1945年の沖縄戦では、最後の連絡機に乗って本土へと疎開し、熊本で終戦を迎えました。一方、沖縄に残った親族や社員は国頭地方の山中に避難しており、幸いにも戦闘の直接的な被害を免れました。

終戦後、米軍占領下にあった沖縄へ、国場は1946年8月に密航という形で帰郷を果たしました。同年9月には石川市（現在のうるま市の一部）で事業を再開します。同年12月、米軍から那覇港の港湾作業員の総支配人（那覇港湾作業隊総支配人）に任命され、米軍の港湾施設利用の便宜を図るため、沖縄民政府が設置した特殊行政区「みなと村」の村長も兼務しました。1950年8月1日、港湾作業が請負制へ移行したことに伴い、みなと村はその役割を終え、國場組内に港湾作業部が設置されました。

1950年代以降、彼は建設業を本格的に再開し、米軍基地関連工事に加え、民間や官庁の大型建設プロジェクトを数多く手がけました。さらに、事業領域を建設業にとどめず、映画、観光、海運といった分野にも進出し、事業の多角化を積極的に推し進めました。1968年には國場組を株式会社に組織変更し、自身は代表取締役社長に就任しました。また、国場一族が経営する17社からなる企業集団「国和会」の総帥として、グループ全体の指揮を執りました。

財界での影響力と親族

国場幸太郎は、沖縄財界の重鎮として、戦後沖縄の経済復興と発展に不可欠な役割を果たしました。その事業手腕と影響力から「沖縄財界四天王」の一人に数えられ、沖縄県商工会議所連合会の会長なども歴任しました。

彼の親族には、弟で元衆議院議員の国場幸昌、孫で現衆議院議員の国場幸之助、甥で元國場組会長を務めた国場幸一郎などがおり、國場家は政財界にわたる影響力を持つ一族として知られています。彼の築いた事業基盤は、後の世代にも引き継がれ、沖縄経済に根ざした企業グループへと発展しました。

国場幸太郎は、大工から身を起こし、激動の時代を乗り越え、沖縄経済の基盤構築に尽力した不屈の実業家として、その名を歴史に刻んでいます。

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