堀立直正

堀立直正：武将と商人の二つの顔を持つ男

堀立直正は、戦国時代から安土桃山時代にかけての人物で、武将でありながらも、経済の中心地であった安芸国堀立を拠点に、商人としても活躍しました。彼は、自力で米や銭、物資を調達できるほどの経済力を持ち、武士のような性格を併せ持つ、異色の存在だったと言えるでしょう。

毛利氏への仕官と初期の活躍

生年は不明ですが、堀立氏は厳島神社領の荘園である志道原荘の倉敷地、現在の太田川河口近くに位置する堀立を本拠としていました。天文10年（1541年）頃、毛利元就による安芸武田氏の滅亡を機に、毛利氏の支配下に入ります。

天文23年（1554年）、毛利元就が大内氏と断交した「防芸引分」の際、直正は佐東銀山城の開城工作に携わりました。彼は、児玉就方の指揮下で、大内方の栗田肥後入道や麻生鎮里に対する交渉を行い、城の開城に貢献。さらに、己斐城の攻略戦では、敵兵2人を討ち取る武功を挙げました。廿日市と厳島の制圧では、その交渉力を活かし、町衆の動揺を鎮め、無傷で毛利氏の支配下に収めることに成功しています。

これらの功績により、同年6月には毛利元就・隆元父子から連署の感状を授与されました。

赤間関代官としての活躍

弘治2年（1556年）には、赤間関の鍋城攻略で大きな功績を挙げ、その城番に任じられました。直正は、鍋城の普請を重ね、装備を充実させ、関門海峡の支配を強化しました。また、対岸の門司城の城番を務める仁保隆慰と連携し、両城一体となった軍事体制を構築。関門海峡の安全を確保しました。

永禄4年（1561年）には、赤間関の代官に任命され、町帳を入手して毛利元就に送達。公事銭や地料銭の徴収に貢献しました。代官として、北九州各地への舟送、船や水夫の徴発、国人領主の動向調査など、多岐にわたる活動を行いました。麻生鎮里に対する工作では、その娘を人質として預かっています。

永禄5年（1562年）には、代官職を改めて補任され、これまでの費用立て替えの功績から、知行地の段銭を免除されました。

晩年とその後

天正6年（1578年）には、約20年務めた赤間関の代官職を辞任。その後も、毛利輝元への音信の際に米を送り、関係を維持しました。没年は不明ですが、高齢に達していたと考えられています。

直正の死後、その家督は嫡男の九郎左衛門が継ぎ、長門国と出雲国で210石余を与えられました。また、清蔵には備後国で33石余、杜屋神社の大宮司を務める藤右衛門尉には長門国で13石余が与えられました。

堀立直正は、戦国時代の激動期において、武将としての能力だけでなく、商人としての才覚も発揮し、毛利氏の勢力拡大に大きく貢献した人物と言えるでしょう。彼の存在は、当時の社会における武士と商人の境界線が曖昧であったことを示唆しており、興味深い研究テーマとなっています。

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