大滝山 (飛騨山脈)

大滝山（長野県）

大滝山は、飛騨山脈（北アルプス）南部に位置し、長野県松本市と安曇野市にまたがる標高2,616mの山です。山頂は北峰と南峰に分かれており、南峰には三等三角点が設置されています。古くは「大嶽」や「崩岳」、「手水嶽」とも呼ばれていました。

概要

大滝山は、かつて修験道の対象として崇められていました。安曇野から見ると、お椀を伏せたような均整の取れた山容が特徴的で、「大嶽」と呼ばれていました。山名の由来は、梓川の支流である島々谷川の上流部、大滝沢の源頭にあることに由来すると考えられています。常念山脈の稜線を南下すると、常念岳、蝶ヶ岳の南に位置しています。

山体は秩父古生層の黒色粘板岩を主体とし、硬砂岩とチャートを含んでいます。山頂部から北にかけては硬砂岩が多く見られます。山域の西側は中部山岳国立公園の特別保護地区に指定されており、豊かな自然が保護されています。

山頂部は森林限界をわずかに超え、ハイマツに覆われています。二重稜線の地形が見られ、大滝山荘付近ではオオシラビソ、コメツガ、トウヒなどが分布し、林床にはカニコウモリ、イワカガミ、ヒメタケシマランなどが生育しています。稜線上の登山道付近には小さな池塘や高山植物（コバイケイソウ、ミヤマキンポウゲ、ハクサンフウロ、シナノキンバイなど）の群落があり、盛夏にはミヤマモンキチョウ、ベニヒカゲ、コヒオドシなどの高山蝶が観察できます。2015年には、常念岳山脈の燕岳から大滝山にかけての山域で、絶滅危惧種であるライチョウの生息実態調査が行われました。

長野県松本市の大滝山一帯は、日本郵便により交通困難地に指定されており、郵便物の送付が制限されています。

登山

1828年（文政11年）に、播隆が山麓の案内人である中田又重郎とともに槍ヶ岳登頂の際に大滝山に登頂したのが、記録に残る初登頂です。山頂からは、蝶ヶ岳の長塀尾根越しに槍ヶ岳と穂高連峰を望むことができます。

登山ルート

主な登山ルートは以下の通りです。

鍋冠山からのルート: 三郷スカイライン展望台 - 冷沢分岐 - 鍋冠山 - 蝶ヶ岳分岐 - 大滝山。かつて飛騨新道として利用されていた古いルートです。
徳本峠からの中村新道: 上高地 - 明神 - 白沢出合 - 徳本峠 - 大滝槍見台 - 大滝山南峰 - 大滝山荘 - 大滝山北峰。大滝山荘を経営していた中村喜代三郎が1942年頃から数年かけて開いたルートです。かつて上高地へのメインルートであった島々からのルートも利用できます。
三股からのルート（蝶ヶ岳新道）: 三股 - 本沢吊橋 - まめうち平 - 蝶ヶ岳分岐 - 大滝山。上高地側からの徳沢と横尾から蝶ヶ岳を経由して登頂することも可能です。三股から蝶ヶ岳へのルートは、長野県山岳総合センターにより技術的難易度が「ランクB」、体力度が「4」と評価されています。

周辺の山小屋

大滝山の北峰直下南には、大滝山荘があります。1925年に地元の三郷村の有志らによって建設され、1931年に中村喜代三郎が経営を引き継ぎました。収容人数30人の小規模な山小屋で、夏期のみ営業しています。

地理

大滝山は、飛騨山脈南東部の常念山脈の主稜線上に位置しています。北峰付近から東へ鍋冠山へと続く尾根が伸びています。北峰と鍋冠山との中間点付近のなだらかな稜線部は「八丁ダルミ」と呼ばれています。

周辺の山と峠

常念乗越：山頂の南西6.7km、横通岳と常念岳との鞍部、標高2,466m
東峠：鍋冠山と角蔵山との鞍部
徳本峠：山頂の南西7.8km、大滝山と霞沢岳との鞍部、標高約2,140m

源流の河川

大滝山は、信濃川水系の支流である大滝沢、小滝沢、徳沢、崩沢の源流となる山です。

交通・アクセス

アルピコ交通上高地線の新島々駅、JR大糸線中萱駅が最寄りの駅です。長野自動車道安曇野インターチェンジからもアクセス可能です。北麓の烏川沿いには烏川林道が通り、登山口の三股には駐車場があります。南側には国道158号、南麓には島々谷林道が通っています。東側の三郷スカイライン展望台には長野県道495号線が通っています。

飛騨新道

1835年（天保6年）には、岩岡村の判次郎と三郷村の中田又重郎が中心となり、信州と飛騨を結ぶ最短ルートとして飛騨新道（小倉街道）が開かれました。しかし、利用者の減少や自然災害により、1861年（文久元年）に廃道となりました。

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