大蔵省 (律令制)

大蔵省：古代から明治維新まで続いた財政を司る官庁

大蔵省（おおくらしょう）は、奈良時代の大宝律令に規定された八省の一つで、古代から明治維新まで、およそ1300年の長きにわたり存続した官庁です。その役割は、国家財政、特に金銭や物品の出納に関する事務を執り行うことでした。唐名では大府、大府寺、天官、外官と呼ばれ、藤原仲麻呂による官職の唐風改称期間中は節部省と称されました。

大蔵省の起源と歴史

大蔵省の起源は、律令制以前の三蔵（大蔵・内蔵・斎蔵）の一つである大蔵に遡ります。『古語拾遺』によると、雄略天皇の時代に内蔵・斎蔵に加え大蔵が創設され、諸国からの貢物を納め、秦氏に出納、漢氏（東漢氏、西漢氏）に帳簿の記録を命じ、蘇我満智に三蔵を検校させたとされています。なお、皇室の財宝を管理する倉庫であった内蔵は、律令施行後も中務省の一機関である内蔵寮として存続しました。

大蔵省は朝廷の倉庫を管轄し、銭貨・金銀・調・貢物の出納や保管、諸国や民間の度量衡、売買価格の公定などを行いました。ただし、租税は民部省の管轄であり、大蔵省は国有財産の管理や官営工房としての役割が大きかったとされます。官営工房としての役割は、内匠寮の成立に伴い、その職掌を同寮に奪われ大幅な再編を余儀なくされました。

平安[[時代]]には、租税の運用を行う正蔵率分所が設置されました。律令制の大蔵省は明治維新まで存続し、例えば、明治維新後の初代大蔵卿である松平慶永は、1864年に大蔵大輔（大蔵次官）に任官しています。また、田安徳川家の第2代当主である徳川治察が1764年に大蔵卿（大蔵大臣）に任官した例もあります。

大蔵省の職員構成

大蔵省の職員は、以下の四等官を中心に構成されていました。

卿：正四位下相当で、大蔵省の長官。唐名は大府卿、蔵部尚書。
大輔・権大輔：正五位下相当で、次官。唐名は大府少卿。
少輔・権少輔：従五位下相当で、次官を補佐。唐名は大府侍郎。
丞：判官。大丞と少丞があり、それぞれ正六位下相当、従六位上相当。
録：書記官。大録と少録があり、それぞれ正七位上相当、正八位上相当。

その他にも、下級事務職員として、史生、省掌、使部、直丁、駈使丁などがいました。また、倉庫の鍵を管理する主鑰、物品の価格を調査する価長、物品出納を行う蔵部などがいました。

大蔵省の被官の官司

大蔵省の管下には、以下の官司がありました。

織部司
縫部司（後に縫殿寮に併合）
漆部司（後に内匠寮に併合）
掃部司（後に宮内省内掃部司と統合し掃部寮として宮内省管下に置かれる）
典鋳司（後に内匠寮に併合）

大蔵省に関連する事項

八省卿の一覧#大蔵卿の一覧：大蔵省の長官である大蔵卿を務めた人物の一覧。
日本の官制
* 大蔵卿局（淀殿の乳母の通称）


大蔵省は、古代から明治維新まで、日本の財政を支え続けた重要な官庁でした。その歴史は、日本の政治・経済史を語る上で欠かせない要素であり、現代においてもその名残を様々な形でみることができます。

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