大雲院 (京都市)

大雲院

大雲院（だいうんいん）は、京都市東山区祇園町にある浄土宗系の単立寺院です。山号は龍池山、本尊は阿弥陀如来で、祇園閣があることで広く知られています。

歴史

大雲院は、天正15年（1587年）に織田信長とその子信忠の菩提を弔うため、正親町天皇の勅命を受けて創建されました。開山は、安土宗論で活躍した浄土宗の僧・貞安です。創建地は信忠が自害した二条新御所の跡地（現在の烏丸御池付近）で、寺号「大雲院」は信忠の戒名に由来します。当初は火除天満宮を鎮守社としていました。

しかし、同年中に豊臣秀吉の命により、京都の改造を理由として四条寺町南（現在の京都市下京区貞安前之町）への移転を指示され、天正18年（1590年）に移転しました。その後、後陽成天皇の勅願所となり、江戸時代には日向国佐土原藩主島津氏が檀越となりました。

天明8年（1788年）の天明の大火、そして元治元年（1864年）の禁門の変後のどんどん焼けで焼失しましたが、明治時代初期に再建されました。ただし、神仏分離令により火除天満宮は当寺から独立しました。また、第1回京都市会は大雲院で行われました。

太平洋戦争後、四条河原町周辺が繁華街として発展し、隣接する髙島屋京都店の増床計画に伴い、1973年（昭和48年）4月に現在地に移転しました。この際、大倉財閥の創設者・大倉喜八郎が建てた別邸「真葛荘」の一部を買収し、本堂は智積院に移されて明王殿（不動堂）となりました。

2014年（平成26年）には、京都市下京区の旧大雲院跡地で発掘調査が行われ、豊臣秀次の供養塔の一部とみられる石材が発見されました。大雲院が秀次の切腹後、三条河原で処刑された秀次の側室らを供養したとする文献の裏付けとなりました。

また、大雲院の存在は、ねねの道が折れ曲がっている原因の一つとなっています。

妙心寺大雲院（非現存）

同じく織田信忠の慰霊のため、妙心寺にも同名の大雲院が建立されていました。この大雲院は、妙心寺56世の九天宗瑞と、宗瑞の妹で信忠の乳母かつ信長の側室であった慈徳院らが尽力して創建しました。二人は信長の重臣であった滝川一益の子と伝えられています。この妙心寺大雲院には、二条新御所で九死に一生を得た織田長益の子、長孝が葬られた記録があります。

一方、妙心寺内には、天正9年（1581年）に滝川一益と同じく九天宗瑞が開いた「暘谷庵」がありました。この庵は、一益の娘婿であった津田秀政が慶長11年（1606年）に再興し、「暘谷院」と名付けて津田氏の菩提寺としました。慶長17年（1612年）に宗瑞、寛永12年（1635年）に秀政が死去すると、暘谷院は秀政の法号にちなんで「長興院」と改名されました。そして元禄5年（1692年）に、この長興院が隣接する大雲院を合併したため、妙心寺大雲院は現在は存在しません。

境内

現在の大雲院の境内には、以下の施設や史跡があります。

本堂：1978年（昭和53年）に再建された鉄筋コンクリート造の建物です。かつての境内地にあった本堂は、智積院に移築されて明王殿（不動堂）となっています。
庫裏：寺の台所や事務を行う建物です。
書院（国登録有形文化財）：元々この地にあった大倉喜八郎の京都別邸「真葛荘」の建物で、1928年（昭和3年）に建てられました。1973年（昭和48年）の大雲院移転に伴い、伽藍の一部となりました。
織田信長・信忠の墓：一つの墓石に、右が信長、左が信忠の墓として並んでいます。
石川五右衛門の墓：処刑前に市中を引き回された五右衛門が大雲院門前に至った際、貞安が引導を渡した縁から墓が設けられました。
島津以久の墓：佐土原藩初代藩主で、伏見で亡くなったためにこの寺に葬られました。
南門：文化4年（1807年）に再建されたもので、四条寺町の旧境内地にあった山門です。1973年（昭和48年）に移築されました。
鐘楼：元々北野天満宮にあったもので、慶長12年（1607年）に豊臣秀頼が片桐且元を奉行として再建しました。明治時代の神仏分離で北野天満宮から除かれることになったため、1872年（明治5年）に大雲院に移されました。梵鐘は、祇園感神院（現・八坂神社）にあったもので、延徳2年（1490年）に造られたものです。こちらも神仏分離で除かれることとなり、1870年（明治3年）に佐土原藩主島津忠寛により当院に寄進されました。双方とも1973年（昭和48年）に現在地に移築されています。
大雲院龍池会館
総門（東門）：大倉喜八郎が建てた京都別邸・真葛荘は、その後ホテルニューオータニの創設者である大谷家に所有が移りました。その際、東京のホテルニューオータニの敷地にあった門が現在地に移設されました。この門はもともと皇族の伏見宮邸跡地にあったものです。
銅閣
祇園閣（国登録有形文化財）：1928年（昭和3年）に建築された3階建ての建物で、これも真葛荘の建物の一つです。設計は伊東忠太で、高さは36メートルあります。祇園祭の鉾を模した造りで、屋根は銅板葺きです。これは大倉喜八郎が金閣、銀閣に次ぐ銅閣として作らせたためです。入口にある額「祇園閣」は西園寺公望の筆によるものです。1988年（昭和63年）には、望楼に至る階段の壁に敦煌・莫高窟壁画模写が中国人画家の手によって描かれました。

文化財

大雲院には以下の文化財があります。

重要文化財
絹本著色前田玄以像
紙本墨書正親町天皇宸翰消息
国登録有形文化財
祇園閣（1997年（平成9年）12月12日登録）
書院（旧大倉家京都別邸）

拝観

通常は非公開ですが、数年おきに期間を限って公開されます。公開の際には、祇園閣に登ることや、石川五右衛門や織田信長らの墓の参拝が可能です。書院の内部は非公開です。

所在地

京都府京都市東山区祇園町南側594 – 1

周辺

周辺には、以下の名所旧跡があります。

祇園女御供養塔
秋葉山東景寺（秋葉三尺坊大権現）
京都市円山音楽堂
霊鷲山（金玉山）法華三昧無量寿院雙林寺（沙羅雙樹林寺）
大谷祖廟（円山町477）
黄台山長楽寺
岡林院、月真院、圓徳院（高台寺塔頭）
圓山公園
八坂神社（感神院祇園社）

関連項目

火除天満宮（京都市下京区にある神社で、元は大雲院の鎮守社でした）
石川五右衛門

脚注

参考文献

槙野修 著、山折哲雄 編『京都の寺社505を歩く: 決定版 上（洛東・洛北（東域）・洛中編）』PHP研究所、2007年。ISBN 9784569692470。
辻ミチ子『「京あまべの歴史」を語る』部落解放同盟京都府連合会東三条支部、2014年。
川上孤山『妙心寺史』京都妙心寺派教務本部、1917年、307-309頁。

外部リンク

* 本山龍池山 大雲院

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