太櫓郡

太櫓郡：北海道後志国の歴史を刻んだ郡

太櫓郡は、北海道後志国檜山支庁に存在した郡です。現在のせたな町の一部に相当する地域で、その歴史は江戸時代まで遡ります。本稿では、太櫓郡の成立から消滅までの経緯、地理的な位置付け、そして周辺地域との関係性について詳細に解説します。

江戸時代の太櫓郡

江戸時代、太櫓郡域は和人地として知られ、松前藩によって「フトロ場所」が開設されました。この地は、渡島国から天塩国増毛郡へと至る陸上交通路上に位置していましたが、南側の久遠郡へは太田山という険しい山々が連なり、陸路による移動は困難を極めていました。

この交通の不便さを解消するため、安政年間には江差の商人鈴鹿甚右衛門と津軽の商人松前屋庄兵衛らが私財を投じて、セキナイから太田山を越えラルイシに至る全長約47.1kmの道路、太田山道を開削しました。この道路の開通により、太櫓郡域と周辺地域との間の通年の陸上交通が確保され、経済や文化交流が盛んになりました。太田山道は、現在の国道229号の前身にあたると考えられています。

太櫓郡域は、文化4年には天領となり、その後文政4年には再び松前藩の支配下に戻りましたが、安政2年には再び天領となり、津軽藩が警備にあたりました。このような領地の変遷は、当時の複雑な政治情勢を反映しています。また、郡内には文政10年以前から存在すると言代主神社など、歴史的な建造物も存在しました。

戊辰戦争（箱館戦争）終結後の1869年、大宝律令の国郡里制を踏襲し、太櫓郡が正式に設置されました。

明治時代以降の太櫓郡

明治2年（1869年）、北海道で国郡里制が施行され、後志国と太櫓郡が設置されました。当初は開拓使、その後兵部省、斗南藩と管轄が変遷したのち、廃藩置県により再び開拓使の管轄となりました。明治5年には戸長・副戸長が設置され、大区小区制が導入されました。その後、区画整理が行われ、明治9年には全道30の大区、166の小区へと再編されました。

明治12年（1879年）、郡区町村編制法の北海道施行により、行政区画としての太櫓郡が発足しました。その後、久遠郡外三郡役所、檜山郡外五郡役所の管轄を経て、明治30年（1897年）には郡役所が廃止され、檜山支庁の管轄となりました。

明治39年（1906年）、北海道二級町村制の施行により、太櫓村が成立しました。昭和18年（1943年）には北海道一・二級町村制が廃止され、昭和21年（1946年）には指定町村が廃止、昭和22年（1947年）には地方自治法の施行により北海道檜山支庁の管轄となりました。

太櫓郡の消滅

昭和30年（1955年）4月1日、太櫓村は瀬棚郡東瀬棚町と合併して瀬棚郡北檜山町となり、太櫓郡は消滅しました。太櫓郡の歴史は、北海道の開拓と地方行政の変遷を象徴的に示すものです。

まとめ

太櫓郡は、江戸時代からの歴史を持ち、交通路の開削や領地の変遷、そして行政機構の改革など、様々な歴史的出来事を経験しました。その歴史は、北海道の開発と地方行政制度の変遷を理解する上で重要な要素となっています。太櫓郡の消滅は、近代化に伴う行政区域の再編という時代の流れを示すものでした。この地に残る歴史的建造物や地名などは、太櫓郡の歴史を後世に伝える貴重な遺産と言えるでしょう。 太田山道開通は、この地域の交通発展に大きく貢献し、地域の文化や経済に大きな影響を与えたと言えるでしょう。また、太櫓郡の歴史は、松前藩や箱館奉行所といった周辺勢力との関わりも深く、北海道の歴史を理解する上で重要な要素の一つです。

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