奥平信光

奥平信光（おくらいだ のぶみつ）

奥平信光は、戦国時代に三河国設楽郡名倉（現在の愛知県設楽町）を拠点とした武将です。名倉奥平氏の当主であり、戸田加賀守とも称しました。後に尾張藩士となります。

生涯

奥平信光は、作手地方を領した奥平氏の庶流である名倉奥平氏の出身です。名倉奥平氏は、奥平貞久の六男である貞次が三河国名倉を拠点としたことに始まります。信光を含む名倉奥平氏は、奥平宗家と共に駿河今川氏に従属していました。

1558年、三河に侵入した美濃の岩村遠山氏の軍勢と、宗家の奥平定勝と共に名倉船戸橋で戦い、その功績により今川義元から感状を授けられました。これが史料における信光の初見です。

1561年以降、松平元康（後の徳川家康）が三河で独立すると、信光は松平氏に従属し、1569年の徳川氏による遠江侵攻では掛川城攻めに参加しました。この頃、信光は徳川氏の重臣である石川数正から指導を受けています。

1570年、武田氏の武将である秋山虎繁が東美濃の岩村遠山氏の領地を通過して奥三河へ侵攻しようとした際、上村合戦に出陣しましたが、遠山氏が敗北したため、戦わずして名倉城に退却しました。

1572年、武田信玄による三河・遠江侵攻（西上作戦）が始まると、奥平宗家と共に武田氏に従属し、三河先方衆となりました。しかし、翌年には奥平定能・信昌父子が徳川氏に帰参したため、信光も徳川氏に帰参したと考えられています。1575年には武田勝頼による三河侵攻の際、武田方に属していた津具郷の土豪・後藤九左衛門らを討ち取り、徳川氏から賞されています。

1581年、織田信長の重臣である滝川一益から、武田攻めの準備として信濃侵攻の拠点を築くよう相談を受け、その後武節城に入城したとされています。翌年の信長の武田征伐により武田氏が滅亡した後、信長没後の天正壬午の乱で旧武田領国が混乱する中、信光は本多信俊と共に甲斐の河尻秀隆のもとへ派遣されました。

1590年、徳川氏が関東に移封されると、信光は家康の四男である松平忠吉の重臣となり、1600年の関ヶ原の戦いでは忠吉に従って戦いました。戦後、忠吉が尾張に移封された際もこれに従いました。

1607年、忠吉が死去すると、後を継いだ徳川義直に仕えますが、義直の後見役である平岩親吉や小笠原吉次ら旧忠吉家臣団との対立により、1609年に追放されました。その後、帰参を許され、大坂の陣にも参戦しています。

1630年に死去し、子孫は尾張藩士として続きました。

信光は、激動の戦国時代を生き抜いた武将であり、今川氏、武田氏、徳川氏と主君を替えながらも、それぞれの立場で活躍しました。特に、徳川氏に仕えてからは、数々の戦で功績を挙げ、その武勇は高く評価されています。

脚注

参考文献

柴辻俊六; 平山優; 黒田基樹 ほか 編『武田氏家臣団人名辞典』東京堂出版、2015年。ISBN 978-4-490-10860-6。
平山優『天正壬午の乱　増補改訂版』戎光祥出版、2015年。ISBN 978-4-86403-170-7。
* 平山優『武田氏滅亡』KADOKAWA、2017年。ISBN 978-4-04-703588-1。

もう一度検索