妙高寺 (世田谷区)

妙高寺：歴史と文化が息づく世田谷の寺院

東京都世田谷区北烏山に位置する妙高寺は、日蓮宗に属する由緒ある寺院です。本山は身延山久遠寺、山号は玄立山。浅草橋場を起源とし、関東大震災後の1926年（昭和2年）に現在の地に移転しました。烏山寺町を構成する26寺院の一つとして、静かな住宅街に佇むその姿は、地域の歴史と文化を静かに物語っています。

歴史：幾多の変遷を乗り越えて

妙高寺の創建は1625年（寛永2年）4月。首玄院日立が浅草今戸に開山したと伝えられています。その後、浅草橋場に移転しましたが、度重なる火災や関東大震災による被害で多くの記録が失われ、詳細な歴史は不明な点も多いです。それでも、いくつかの史料から、幾つかの歴史的出来事が明らかになっています。

1771年（明和8年）の火災、1809年（文化6年）の再興、そして幕末期には、老中・水野忠邦とその嫡子・水野忠精の帰依を受け、4000坪もの土地と七堂伽藍を寄進されるなど、幕末期には大きな発展を遂げています。水野家は以降妙高寺を祈願所として崇敬しました。関東大震災後の1927年（昭和2年）には、現在の地に再建され、その後も、庫裏の建設や旧有栖川宮邸書斎の移築など、寺は少しずつ形を変えながら現代に受け継がれています。

境内と文化財：歴史の息吹を伝える建造物と収蔵品

建造物

現存する本堂は1927年（昭和2年）に再建されたもので、東北方向に向いています。本堂、庫裏、書院は渡り廊下で繋がれ、一体感を生み出しています。2010年（平成22年）には耐震改修工事が行われ、ハイブリッドチタン葺きの屋根が施されました。

特に注目すべきは、旧有栖川宮邸の書斎を移築した書院です。桁行72尺、梁行26尺の入母屋造、瓦葺の建物で、10畳ほどの部屋が3室並んでいます。書院の建築年代は不明ですが、昭和以前のものであると推測されています。

墓地

妙高寺の墓地には、水野忠精とその子・水野忠弘など水野家一族の墓が並んでおり、水野家との深い繋がりを示しています。また、江戸時代中期の尊王論者である藤井右門や、日本画家である速水御舟、今村紫紅、小村雪岱、漆工家・蒔絵師の川之邊一朝なども眠っています。

彫刻と書画

妙高寺には、江戸時代の釈迦如来坐像、多宝如来坐像など貴重な彫刻が数多く残されています。これらの彫刻は、多くの檀家からの寄進によって造られたと考えられています。また、書画においては、1943年（昭和18年）に執り行われた藤井右門の墓前祭で、当時の住職・吉橋海要が揮毫した「草書『藤井右門辞世和歌』」は、貴重な文化財です。他にも、佐藤一斎、佐久間象山、山縣有朋などの書や扁額も所蔵されています。

交通アクセス

妙高寺へのアクセスは、京王線千歳烏山駅からバスまたは徒歩で行くことができます。バスの場合は、「寺院通1番」バス停で下車。徒歩の場合は、約13分ほどです。

まとめ

妙高寺は、歴史的建造物や貴重な文化財を数多く有する、世田谷区を代表する寺院の一つです。その歴史は、幾多の困難を乗り越えて現代に伝えられてきました。静寂な境内には、歴史の重みと、未来への希望が感じられます。訪れる際には、その歴史と文化に思いを馳せてみてください。

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