孔萇

孔萇（こう ちょう）

孔萇（生没年不詳）は、五胡十六国時代の後趙に仕えた武将です。石勒に重用され、数々の武功を挙げました。石勒十八騎の一人である孔豚と同一人物か、あるいは親族ではないかと考えられています。

経歴

孔萇の若い頃の事績は不明な点が多いですが、石勒に仕え、309年には爪牙に任じられています。

311年4月、石勒軍は苦県で晋軍20万余りを破り、晋の王侯貴族を多数捕らえました。大臣たちが命乞いをする中、司馬範だけは泰然自若としていました。石勒は孔萇に「これほど立派な人物を見たことがない。生かしておけないか」と尋ねましたが、孔萇は「彼は晋の王公であり、我々の役には立たないでしょう」と答えました。石勒は司馬範を殺害するよう指示しましたが、刃を使わず、夜に垣を倒して圧死させました。

312年2月、石勒は建業への進攻を計画しましたが、飢餓と疫病で兵の多くを失いました。晋軍が接近すると、石勒は対応策を検討するため軍議を開きました。孔萇は支雄ら30人余りの将と共に、「敵軍はまだ集結していません。それぞれに300の歩兵を与え、船で分散して夜襲を仕掛け、敵将の首を挙げましょう。城を得れば兵糧も手に入り、年内に丹楊を攻略し江南を平定、司馬一族を捕らえることができるでしょう」と進言しました。石勒はこれを勇将の計略と称賛し、鎧馬を下賜しました。

7月、石勒が北へ渡河しようとした際、向冰が枋頭で阻みました。孔萇は支雄と共に文石津から筏で慎重に渡河し、向冰の砦門に到達して船を奪い、全兵を渡河させました。そして、主簿の鮮于豊に向冰を挑発させ、伏兵を配置して待ち受けました。向冰が挑発に乗って攻撃してくると、伏兵が一斉に現れ、挟撃により向冰軍は潰滅しました。

12月、幽州刺史の王浚は、鮮卑段部の段疾陸眷らに5万余りの兵を与え、石勒の本拠地である襄国を攻撃させました。段疾陸眷軍が渚陽まで進出すると、石勒は諸将を繰り出しましたが、全て打ち破られました。石勒が軍議を開き、野戦での決戦を提案しましたが、諸将は籠城を主張しました。石勒は孔萇と張賓に意見を求めました。彼らは、「段疾陸眷らは来月上旬にも決死行を仕掛けてくると思われます。連日の戦闘で我々の弱さを知り、野戦の気概がないと油断しているでしょう。今、鮮卑で最も勢いのある段部の中でも、段末波が最も精強です。北壁に穴を開けて突門を造り、敵が油断している隙に急襲を仕掛け、段末波の陣営を攻撃すれば、敵は混乱し計略を立てる暇もないでしょう。段末波軍が敗れれば、他は瓦解します。彼を生け捕れば、王浚など容易に打ち破れるでしょう」と答えました。石勒は彼らの意見を採り入れ、作戦を決行しました。

石勒は孔萇を攻戦都督に任じ、北城に突門を造らせました。段疾陸眷は北壁の近くに布陣を開始しましたが、布陣が完了しておらず、将兵が眠り込んでいるのを確認した石勒は、太鼓を鳴らして合図を送り、孔萇が突門から伏兵を出撃させました。孔萇自身も敵陣に急襲をかけ、散々に打ち破りましたが、段末波の兵は精鋭であったため、城門へ誘い込みました。段末波が追撃して城門に侵入すると、伏兵が現れ、段末波は生け捕られました。段疾陸眷らは段末波の敗北を知ると逃走しました。孔萇は追撃をかけ、敵兵は多数の死者を出し、鎧馬を鹵獲する大戦果を挙げました。

313年5月、孔萇は定陵を攻め落とし、王浚が任じた兗州刺史の田徽を斬り殺しました。これを知った乞活の薄盛は、劉既を捕らえ、5千戸を率いて帰順しました。

11月、石勒が韓拠が守る坫城を攻めると、劉琨は箕澹に兵を与えて救援に向かわせました。石勒は敵軍を迎え撃ち、孔萇は前鋒都督となり、箕澹を伏兵で挟撃しました。箕澹は逃走しましたが、孔萇は桑乾まで追撃し、代郡まで攻め込んで箕澹の首を討ち取りました。

316年12月、孔萇は馬厳・馮䐗を攻撃しましたが、長期間対峙しました。石勒は李回を派遣して流民を慰撫し、帰順を促したため、孔萇は帰還しました。

319年、孔萇は幽州に進軍して諸郡を平定しました。薊城を守っていた段匹磾の兵は四散し、段匹磾は上谷へ逃走しました。

320年1月、孔萇は邵続を攻撃し、全ての陣営を陥落させました。

6月、孔萇は段文鴦の陣営を陥落させましたが、守備を怠ったため、段文鴦の夜襲を受け、退却を余儀なくされました。

321年3月、石虎は厭次に進軍して段匹磾と戦い、孔萇は領内の諸城を陥落させました。この戦いで段文鴦、段匹磾を捕らえました。

これ以降、孔萇の名前は史書に現れていません。

参考文献

『晋書』巻104、105「石勒載記上下」
『資治通鑑』「晋紀」巻87 - 91

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