宋秉畯

宋秉畯（ソン・ビョンジュン、日本名：野田秉畯、野田平次郎）は、1857年10月7日に生まれ、1925年2月1日に没した、李氏朝鮮末期から大韓帝国にかけて活動した政治家です。現在の韓国においては、丁未七賊や代表的な親日派の一人と位置づけられています。

彼は咸鏡道長津郡で、父と妓生の間に生まれた庶子であったため、家門を継ぐことは叶いませんでした。その後、漢城（現在のソウル）に移り住み、時の権力者であった閔台鎬の知遇を得て、その妾宅で使用人として仕えるようになりました。1871年に武科試験に合格し、1873年からは司憲府（監察機関）の監察などの官職を歴任しました。

1884年の甲申政変発生後、密命を受け改革派の中心人物である金玉均を暗殺するため日本へ渡航しましたが、逆に金玉均の思想に共鳴し、その同志となりました。帰国後、金玉均側についた嫌疑により投獄されましたが、閔台鎬の子である閔泳煥の尽力によって釈放されました。釈放後は興海郡守などを務めたものの、やがて逮捕状が出されたため、再び日本へ亡命せざるを得なくなりました。

1904年に日露戦争が勃発すると、日本軍の通訳として朝鮮に戻りました。これを機に親日派へと明確に立場を変え、同年、日本との協調を掲げる政治団体である一進会を結成しました。1907年のハーグ密使事件に際しては、当時の皇帝であった高宗の退位を求める運動を主導し、結果的に高宗を帝位から追いやる一因を作ったとされます。同年、親日派の李完用を首班とする内閣が発足すると、農商工部大臣や内相といった要職に就きました。同時に、一進会の会員らと共に、朝鮮と日本との合邦を求める声明書を、当時の純宗皇帝、曾禰荒助韓国統監、そして李完用首相の三者に提出するなど、合邦推進の中心人物として活動しました。

1910年の日韓併合後は、日本政府によって朝鮮貴族として子爵の位を授けられました。その後、朝鮮総督府の中枢院顧問を務め、やがて伯爵へと陞爵（昇格）しました。死去に際して、日本から正三位、勲一等の栄典が追贈されました。1915年には大礼記念章、死去直前の1925年1月31日付で旭日桐花大綬章も授与されています。

宋秉畯は、現代韓国における評価としては、2002年に公表された親日派708人名簿、および2005年に民族問題研究所がまとめた親日人名辞書収録予定者名簿（第1次）において、長男の宋鍾憲（日本名：野田鍾憲）と共に氏名が挙げられています。長男の宋鍾憲は父の伯爵位を継ぎ、後に日本の貴族院において朝鮮の勅選議員に任命されています。また、2007年に親日反民族行為真相究明委員会が発表した「親日反民族行為195人名簿」にもその名が記されています。2007年5月には、親日反民族行為者財産調査委員会により、宋秉畯とその子孫が保有する財産を国家に帰属させることが決定されました。同年11月には、第三次財産還収対象者の選定に際し、「親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法」の施行後に第三者へ譲渡された氏の財産についても、遡って国家への帰属対象とすることが決定されています。

姻戚には、初代韓国銀行総裁を務めた具鎔書が孫の夫として名を連ねています。

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