室内音楽 (ヒンデミット)

パウル・ヒンデミットの「室内音楽」は、1920年代に作曲された室内管弦楽のための連作です。全7曲から構成され、各曲は独奏楽器をフィーチャーした協奏曲の形式をとっています。

ヒンデミットは、この作品群において、当時の彼が強く抱いていた対位法への興味や、楽曲の堅固な構造を重視する姿勢を明確に打ち出しています。その結果、各楽曲は緻密な構成と、各楽器の有機的な絡み合いによって、独特の音楽世界を構築しています。このような特徴から、「室内音楽」は「20世紀におけるブランデンブルク協奏曲」と評されることもあります。

以下に、各曲の概要を示します。

室内音楽第1番 Op.24-1 (1921)

12の独奏楽器からなる室内管弦楽のための作品。4楽章構成で、演奏時間は約15分。1922年7月にヘルマン・シェルヘンの指揮で初演されました。

編成
木管楽器: フルート（ピッコロ持ち替え）、クラリネット、ファゴット
金管楽器: トランペット
打楽器: シロフォン、スネアドラム、ウッドブロック、サスペンデッドシンバル、タンバリン、トライアングル、砂の入ったブリキ缶、サイレン、グロッケンシュピール
鍵盤楽器: ハーモニウム、ピアノ
弦楽器: ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

楽章構成
1. Sehr schnell und wild
2. Mäßig schnelle Halbe: Sehr streng im Rhythmus
3. Quartett: Sehr langsam und mit Ausdruck
4. Finale: 1921: Lebhaft

室内音楽第2番 Op.36-1 (1924)

オブリガートピアノのための作品。4楽章構成で、演奏時間は約20分。

編成
独奏ピアノ
木管楽器: フルート（ピッコロ持ち替え）、オーボエ、クラリネット、バスクラリネット（任意）、ファゴット
金管楽器: ホルン、トランペット、トロンボーン
弦楽器: ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

楽章構成
1. Sehr lebhafte Achtel
2. Sehr langsame Achtel
3. Kleines Potpourri: Sehr lebhafte Viertel
4. Finale: Schnelle Viertel

室内音楽第3番 Op.36-2 (1925)

オブリガートチェロのための作品。4楽章構成で、演奏時間は約18分。

編成
木管楽器: フルート（ピッコロ持ち替え）、オーボエ、クラリネット、ファゴット
金管楽器: ホルン、トランペット、トロンボーン
独奏チェロ
弦楽器: ヴァイオリン、チェロ、コントラバス

楽章構成
1. Majestätisch und stark. Mäßig schnelle Achtel
2. Lebhaft und lustig
3. Sehr ruhige und gemessen schreitende Viertel
4. Mäßig bewegte Halbe. Munter, aber immer gemächlich

室内音楽第4番 Op.36-3 (1925)

ヴァイオリンのための作品。5楽章構成で、演奏時間は約21分。パガニーニの作品からの引用があります。

編成
木管楽器: ピッコロ2、小クラリネット、クラリネット、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット
金管楽器: コルネット、トロンボーン、バスチューバ
独奏ヴァイオリン
弦楽器: ヴィオラ4、チェロ4、コントラバス4
打楽器: 太鼓4

楽章構成
1. Signal: Breite, majestätische Halbe
2. Sehr lebhaft
3. Nachtstück: Mäßig schnelle Achtel
4. Lebhafte Viertel
5. So Schnell wie möglich

室内音楽第5番 Op.36-4 (1927)

ヴィオラのための作品。4楽章構成で、演奏時間は約17分。ヒンデミット自身の独奏、オットー・クレンペラー指揮により初演されました。

編成
木管楽器: フルート（ピッコロ持ち替え）、オーボエ、小クラリネット、クラリネット、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット
金管楽器: ホルン、トランペット2、トロンボーン2、バスチューバ
独奏ヴィオラ
弦楽器: チェロ4、コントラバス4

楽章構成
1. Schnelle Hallbe
2. Langsam
3. Mäßig Schnell
4. Variante eines Militärmarsches

室内音楽第6番 Op.46-1 (1927, 1929改訂)

ヴィオラ・ダモーレのための作品。4楽章構成で、各楽章は間を置かずに演奏されます。演奏時間は約17分。

編成
木管楽器: フルート、オーボエ、クラリネット、バスクラリネット、ファゴット
金管楽器: ホルン、トランペット、トロンボーン
ヴィオラ・ダモーレ
弦楽器: チェロ3、コントラバス2

楽章構成
1. Mäßig schnell, majestätisch
2. Langsam
3. Variationen. Mäßig schnell beweget
4. Lebhaft, wie früher

室内音楽第7番 Op.46-2 (1928)

オルガンのための作品。3楽章構成で、演奏時間は約17分。

編成
オルガン
木管楽器: ピッコロ、フルート、オーボエ、クラリネット、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット
金管楽器: ホルン、トランペット、トロンボーン
弦楽器: チェロ、コントラバス

楽章構成
1. Nicht zu schnell
2. Sehr langsam und ganz ruhing
3. [Achtel bis 184]

これらの作品群は、ヒンデミットの作曲技法の特徴をよく示しており、20世紀の室内楽における重要なレパートリーとして、今日でも広く演奏されています。

参考文献：最新名曲解説全集補巻1 交響曲・管弦楽曲・協奏曲（久納慶一 執筆、音楽之友社）

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