小石博孝

小石 博孝

1987年4月13日、大分県速見郡日出町に生まれた小石博孝は、小学校1年生で野球を始め、4年生からは投手を兼任しました。地元の日出町立大神中学校を経て大分県立鶴崎工業高等学校に進学しましたが、在学中に甲子園の土を踏む機会はありませんでした。

高校卒業後は立正大学へ進学。4年時の2009年秋には、チームが東都大学野球リーグで初の栄冠を勝ち取ります。続く第40回明治神宮野球大会では、東北福祉大学戦と決勝の上武大学戦で先発登板し、チームの神宮大会初優勝に大きく貢献しました。この大会では、2試合で計14回を投げ、自責点0、被安打5、奪三振19という抜群の成績を残しています。東都大学リーグ通算では23試合に登板し、85回1/3を投げて3勝5敗、防御率1.58を記録。特に4年秋に挙げた3勝は、その集大成と言えるものでした。大学には、1学年後輩に後にプロ入りする南昌輝投手がいました。

大学を卒業すると、NTT東日本に入社。社会人野球に進み、1年目の2010年には、救援投手として第81回都市対抗野球大会に3試合登板。6回1/3を投げ、失点・被安打ゼロで奪三振8という好投を見せました。さらに、第37回社会人野球日本選手権大会でも4試合に登板し、うち2試合で先発を務め、大会優秀選手に選出されるなど、社会人野球界でも注目を集める存在となります。

その活躍が認められ、2011年のNPBドラフト会議で、埼玉西武ライオンズから2巡目で指名を受け入団。契約金7000万円、年俸1300万円（推定）という条件でした。背番号は29に決まりました。ドラフト直後の2011年11月に開催された第82回都市対抗野球大会では、西武入団が決まった身として先発で3試合に登板。21回2/3を投げ、被安打12、奪三振19、自責点1、防御率0.42という素晴らしい成績を残し、久慈賞（敢闘賞）と大会優秀選手を受賞しました。決勝戦では、同じく西武に1巡目指名されたJR東日本の十亀剣と投げ合いましたが、惜しくも敗れています。

プロ入り後、2012年には4月26日の福岡ソフトバンクホークス戦で一軍初登板・初先発を果たします。5月3日の東北楽天ゴールデンイーグルス戦では先発で7回無失点の好投を見せ、プロ初勝利を挙げました。しかし、シーズン中の8月には交通事故を起こし、球団から厳重注意処分を受け、残りのシーズンは出場を自粛することになりました。シーズン終了後には、中﨑雄太、中田祥多と共にオーストラリアン・ベースボールリーグのメルボルン・エイシズに派遣され、経験を積みました。

2013年からは中継ぎに専念し、一軍で11試合に登板。5月22日の広島東洋カープ戦でプロ初ホールドを記録しました。2014年には二軍（イースタン・リーグ）で圧倒的な成績を残し、リーグ最多の投球イニング（119回）、勝利数（10勝）、奪三振（84）をマークし、最多勝利のタイトルを獲得。サンケイスポーツ選定の優秀投手賞も受賞しましたが、一軍登板は4試合にとどまり、2敗を喫しました。2015年も二軍では5勝2敗、防御率2.64と好成績でしたが、一軍は3試合の登板でした。

2016年にはロングリリーフを中心に起用され、自己最多となる一軍50試合に登板。6月5日の阪神タイガース戦では延長12回に登板し、無失点でプロ初セーブを記録しました。2017年は二軍で4勝1セーブ、防御率2.31と安定した成績でしたが、一軍では10試合登板で勝敗なし、防御率8.74と苦戦しました。2018年はオープン戦での好投が買われ、開幕一軍入り。5月24日のソフトバンク戦では6年ぶりの白星を挙げるなど、22試合に登板して防御率4.10と改善を見せましたが、左腕の野田昇吾の台頭や、同じ変則左腕の小川龍也の移籍もあり、シーズン後半は二軍での調整が多くなりました。2019年は一軍8試合に登板。8月15日のオリックス・バファローズ戦では大量失点するチーム状況の中、救援登板しましたが、満塁本塁打を浴びるなど失点を重ねました。シーズン終了後、10月3日に球団から戦力外通告を受けます。現役続行を希望し、11月12日の12球団合同トライアウトに参加しましたが、他球団からのオファーはなく、現役を引退することを決意しました。12月2日付で自由契約選手として公示されました。

現役引退後、2020年からは読売ジャイアンツで打撃投手に転身。しかし、2022年には再びプロ野球選手としての現役復帰を目指し、2度目の合同トライアウト受験を表明。球団や監督の後押しもあり、11月8日に受験しましたが、再び選手としてのオファーは得られませんでした。

トライアウト後、横浜DeNAベイスターズから球団スタッフのオファーを受け、2023年よりDeNAへ移籍しました。担当はバイオメカニクスアナリスト補佐兼打撃投手となり、選手の技術向上をサポートする立場から野球に携わっています。

選手としては、非常に小さいテイクバックから左腕を遅くまで隠すことで、打者から球の出どころを見えづらくする独特の投球フォームが特徴でした。このフォームは大学2年時に習得したもので、それまで130km/h台後半だったストレートが146km/hまで向上したと言います。プロでは最速こそ社会人時代に130km/h台にとどまった時期もありましたが、スライダー、シュート、カーブ、スクリューなど多彩な変化球を駆使して打者を翻弄しました。

人物としては多才な一面を持ちます。特に俳句が得意で、高校時代に「伊藤園お〜いお茶新俳句大賞」で都道府県賞を受賞した経験があります。プロ入り後、ヒーローインタビューでお立ち台に上がるまで俳句を封印すると公言し、初勝利時に有言実行で披露しました。また、友人のためにレアチーズケーキを焼くなど、お菓子作りも得意です。大学時代の同級生と約6年の交際を経て、プロ2年目の2013年12月12日に結婚。結婚発表時にも自作の俳句を披露しました。

2019年の合同トライアウトでは、「『僕』という人を見て欲しい」というメッセージを込めて、登板前後に大声で自己紹介を行い、対戦した3打者をわずか4球で仕留める圧倒的なパフォーマンスで注目を集めました。引退後も自己研鑽を怠らず、アメリカの理学療法士が設立した団体（NASM）の資格「NASM-PES」を取得。スポーツ医学に基づいた傷害予防やパフォーマンス向上に関する知識を習得し、自身の経験と合わせて指導に活かしているとされています。

主な記録

初登板・初先発：2012年4月26日 対ソフトバンク戦（福岡Yahoo! JAPANドーム）
初奪三振：同上、3回裏に長谷川勇也から
初勝利・初先発勝利：2012年5月3日 対楽天戦（西武ドーム） 7回無失点
初ホールド：2013年5月22日 対広島戦（西武ドーム） 救援登板
初セーブ：2016年6月5日 対阪神戦（阪神甲子園球場） 救援登板

背番号

29 （2012年 - 2019年、西武）
209 （2020年 - 2022年、巨人スタッフ）
123 （2023年 - 、DeNAスタッフ）

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