小野東人

小野 東人（おの の あずまひと）

小野東人は、奈良時代に活動していた貴族で、その系譜は未詳ながら、さまざまな歴史的事件に関与した人物として知られています。彼は官位として従五位上及び備前守を持ち、波乱に満ちた人生を送りました。

経歴の概略

天平9年（737年）には外従五位下に叙せられ、その後、天平10年（738年）には左兵衛率に任命されます。しかし、彼の政治キャリアは平穏無事なものではなく、天平12年（740年）の藤原広嗣の乱に連座し、天平13年（741年）には平城京内の獄舎に捕らえられました。この乱は当時の政権に大きな影響を及ぼすものであり、東人もその巻き添えとなったのです。

捕らえられた後、彼は平城京の市場で厳しい拷問を受けた後、伊豆国三島に流罪となりました。その後、赦免された東人は天平18年（746年）に内位の従五位下に叙せられ、次いで治部少輔に任ぜられるなど、次第に官職を回復していきます。

再度の波乱

孝謙朝に移行した後、天平勝宝6年（754年）には備前守に任命され、地方官としての役割を担うようになりました。しかし、彼の人生は再び波乱に包まれます。天平勝宝9年（757年）には、藤原仲麻呂が紫微内相に就任すると同時に、東人も従五位上に昇進しますが、同年に発生した事件は彼の運命を大きく揺るがすものでした。

この年、東人は皇太子・大炊王および藤原仲麻呂を暗殺する計画に加担します。彼は中衛舎人・上道斐太都に同調を訴えましたが、この計画は上道から仲麻呂に密告されてしまいます。結果、東人は仲麻呂の命を受けた高倉福信の手によって捕獲され、左衛士府に拘留されることとなります。

拘禁後の7月4日には、中納言・藤原永手からの厳しい尋問を受け、自らの参加した陰謀を白状せざるを得なくなります。その後、耐え難い拷問を受けた結果、東人は獄死してしまいます。この出来事は「橘奈良麻呂の乱」として知られています。

官歴

小野東人の官歴は、彼の多面的な役割を示すものです。

• - 時期不詳：正六位上
• - 天平9年（737年） 9月28日：外従五位下
• - 天平10年（738年） 閏7月21日：左兵衛率
• - 天平13年（741年） 3月9日：流罪（伊豆国三島。藤原広嗣の乱連座）
• - 天平18年（746年） 4月22日：従五位下（内位）
• - 天平19年（747年） 9月23日：治部少輔
• - 天平勝宝6年（754年） 7月13日：備前守
• - 天平勝宝9年（757年） 5月20日：従五位上。
• - 7月4日：卒去（杖下死）

参考文献

1. 宇治谷孟『続日本紀 （上）』講談社〈講談社学術文庫〉、1992年
2. 宇治谷孟『続日本紀 （中）』講談社〈講談社学術文庫〉、1992年
3. 宝賀寿男『古代氏族系譜集成』古代氏族研究会、1986年

小野東人は、奈良時代という激動の時代の中で生き、数々の試練に直面した官僚としての一生を歩みました。彼の物語は、当時の政治的な混乱と個人の運命が交差する点で、歴史の興味深い一端を示しています。

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